ソウルからKTX韓国高速鉄道に乗車して約1時間半、忠清南道(チュウチョンナムド)の公州(コンジュ)を訪ねた。
公州は古代王国・百済の都として栄え、山城の公山城や武寧王陵がユネスコの世界文化遺産に登録された歴史都市である。まるで絹のような光沢で穏やかに流れる錦江が、悠久のときを刻む。大河の脇に広がる歴史公園には、クマの神を祭る熊神壇があった。遷都以前は、この一帯を熊津(ウンジン)と呼び、クマと人とが共生した伝説が今に伝わる。
その公州で開催された公州観光文化財団主催「忠清南道アートツーリズム・韓日文化都市国際交流フォーラム」に去る12月、登壇した。テーマは祭り。忠清南道の芸術・教育関係者、議員など100名ほどが会場に集い、熱心に耳を傾けてくれた。
用意した講演のタイトルは「日本の祭り 地域活性化の事例と観光ビジネス」である。日本固有の祭りと精神性、そして事例を、手持ち画像や自らの取材体験をもとに紹介した。
事例はまず、「東北三大祭り」である。旅行業が主体となって、それぞれの開催時期をずらしたことで、一体型高単価の商品造成に成功した。また、集中で生じる客室数不足を客船クルーズがホッピングと陸上観光で解消させたことや、コロナ禍明けのトキ消費への変化で高額プレミアムVIP席の販売が好調だったことなどに、関心が示された。
もう一例は京都の「祇園祭」である。聴衆にたずねてみると、青森・秋田・宮城へは未訪問者ばかりだったが、さすが京都は数人が行ったことがあると手を挙げた。古都・京都への公州の人たちのシンパシーを感じた。さらに、「祇園祭は神事でありショーではない」との神社宮司の発言で、観光協会が高額設定した有料プレミアム観覧席を翌年、値下げしたとのエピソードを紹介したところ、会場から驚きの声が漏れた。
神道を語らずして日本の祭りは語れない。日本各地で今も若い担い手に承継される伝統的な祭りや文化の根っこには、農山漁村に暮らす民衆の神を崇め奉る切なる思いがあるからだ。
統営に続き今回も同行いただいた嚴相鎔(オム・サンヨン)博士に、歴史認識も含めて事前に確認したところ、「(神事の説明は)大丈夫ですよ」と太鼓判。
そこで岩手の「大槌虎舞」で、衣装に身を包み天照大御神の木札を手にした子どもの舞踊画像を掲げ、神賑行事と神事の違いを説明して、連綿と受け継がれる日本の祭りに理解を求めた。
国際交流に宗教と政治の話題はご法度との常識を覆し、相互理解を促すのがツーリズムの役割でもある。分断された朝鮮半島は一貫した精神性が途絶え、韓国の祭りといえばパレードやイベントが一般的だが、もっと魂の深い部分で訴求できる何かがありそうだ。
渡航前、公州がわかるガイドブックが見当たらないとぼやいたら、ワールド航空サービスの菊間潤吾会長が、「芸術新潮」(06年8月号)の韓国特集が参考になるよと教えてくれた。バックナンバーで取り寄せてみたら秀逸で、わかりやすかった。感謝である。
近ごろ、エアロKが乗り入れる清州(チョンジュ)空港を拠点に、百済文化と美食の旅商品が売られている。ぜひ、お試しあれ。
(淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)




