JATAツアーグランプリで「国土交通大臣賞」受賞
2026年の干支(えと)は「午(うま)」。午は馬を指し、力強く野を駆け巡る姿から「前進」「飛躍」の象徴とされる。馬にまつわるトピックとして、昨年7月、日本旅行業協会(JATA)主催の「ツアーグランプリ2025」において、風の旅行社(東京都中野区、原優二会長)の「未経験者から上級者までみんなで草原集合!! ほしのいえセレクト乗馬6日間」が最優秀の「国土交通大臣賞」を受賞した。モンゴルの大草原で、自分のレベルに合った乗馬体験を文字通り”セレクト”できる同ツアー。今回、ツアーの企画者で、添乗員としても活躍する同社企画販売部の山田基広さんを訪問し、これまでの工夫や今後の意気込みを伺った。
――改めて、受賞のご感想を。
自身が企画し、毎年添乗員として現地に赴き、ブラッシュアップを続けてきたツアーが評価されたことが、何よりうれしいです。自信を持って応募したので、本当にほっとしています。
モンゴルでの乗馬ツアーは数多くありますが、その中で「風の旅行社だからこそできること」を追求し、小さな努力を積み重ねてきました。その中で私たちのやり方やこだわりが評価されたのだと感じています。
――モンゴルとの出会いは?
乗馬経験はそれまで全くなく、学生時代から自転車で日本一周やマレー半島横断をしたり、ヒマラヤの7500メートル峰に登ったりと、アウトドア活動に明け暮れていました(笑い)。
初めてモンゴルを訪れたのは1998年。アウトドア仲間から「モンゴルで働ける日本人を探している人がいる」と声をかけられ、二つ返事で渡航。そこで待っていたのは「君が日本人に馬の乗り方を教えるんだ」というミッションでした。現地の遊牧民とともに毎日8時間から10時間、馬に乗り続ける生活を10日間ほど送るうちに、自然と乗れるようになっていましたね。
――その後、風の旅行社に入社された。
新婚旅行で、「馬に乗りながらテント泊でモンゴルを巡る」という旅をリクエストしました。それを快く引き受け、実現してくれたのが風の旅行社でした。バックパッカーだった私たちにとって、ガイドが付く旅の楽しさや知識の広がりは衝撃でした。その後当社の採用情報を見つけ、入社を決意しました。
――ツアー誕生の経緯を教えてください。
2011年、これまで実施していた未経験者向けの「ほしのいえ乗馬学校」に加え、リピーター増に対応するため、経験者向けの「ほしのいえ乗馬満喫」を開始。入り口を分けた二つのツアーをスタートしました。
大きな転機となったのは15年。当時現地に駐在しながら、未経験者向け、経験者向け、そして簡単な乗馬体験のみの3コースを同時に運営していました。しかし数日後、お客さまの自己申告の技量と実際のスキルに差があることや、上達のスピードに個人差があることに気づきました。
この経験から生まれたのが、「ほしのいえセレクト乗馬」です。ツアーの入り口をあえて一つに絞り、現地でお客さま一人一人にカウンセリングをしながら、その日のレベルやモチベーションに合ったコースを選んでいただく。これが私たちのスタイルになりました。
――長年のご経験から実現した企画なのですね。
半日伴走すれば、その方の技量はある程度見極められます。体力や恐怖心なども考慮しながら、無理にクラスを引き上げることはせず、逆に上達が早い方には上のクラスへ移っていただくこともあります。安全を確保しつつ、誰もが自分のペースで乗馬を楽しめる環境づくりを心がけています。
日程表には乗馬のことしか掲載していませんが、現地ではゲル作りやモンゴル料理体験、羊の解体見学など、さまざまな文化体験もできます。これらをあえて日程表に記載しないのは、「馬に乗りたい」というお客さまの純粋な気持ちを大切にしたいからです。乗馬以外の体験は、うれしいサプライズとして楽しんでいただければと思っています。
――今後、ツアーをどのように進化させていきたいですか。
お客さまの満足度向上を図り、現地の状況も見ながら2025年からは参加人数を15名程度に制限した出発日も設定しています。また、乗馬レクチャーの「均質化」にも取り組んでいます。どの添乗員でも同じ質のサービスを提供できるよう、指導方法を統一。今は通信環境が整っているので、映像教材の導入なども検討しています。
――日本人のアウトバウンドの現状について、どのように感じていますか。
今の若者が、スマートフォンの画面の中だけで世界とつながり、完結してしまっていることに歯がゆさを感じています。五感で得られる体験は、画面越しの情報とは全く異なります。だからこそ、私たちは若者たちが「行きたい!」と思えるようなモンゴルの魅力を、SNSや動画などでうまい見せ方をしていく必要があると考えています。
毎年、現地ガイドに研修で私が伝えているのは、「日本から来たお客さまにとって、あなたたちが最初に出会うモンゴル人であり、モンゴルの代表なのだ」ということ。日本人一人一人がモンゴルを好きになり、帰国後に魅力を語ってくれることが、両国の関係をより良くしていくと信じています。
――これから海外を目指す日本人にメッセージを。
「本物のカルチャーショックを受けたければ、モンゴルに行け!」。これに尽きます。
モンゴルは北海道の風景と似ているといわれますが、全く違います。北海道の美しい自然は、人の手によって開拓されたものですが、モンゴルの大地は、大昔からほとんど手つかずのまま。その中で人々が自然と共生し、独自の生活様式を守り続けている。この事実に、きっと誰もが圧倒されるはずです。世界でも類を見ない、懐の深い文化と雄大な自然が、皆さんを待っています。ぜひ、その身でモンゴルの大地を体感しに来てください。

風の旅行社・企画販売部の山田基広さん
【聞き手・水田寛人】




