【逆境をチャンスに―旅館の再生プラン 783】官民連携で拓く旅館・ホテルの未来(6) 青木康弘


 前回までのコラムでは、公募までの流れを整理した。今回コラムでは、採択後に皆さまが現場で何を詰めるべきかを、実務の目線で確認しておきたい。

 採択されると「ひと山越えた」という空気になり気が緩みやすい。しかし官民連携は、ここからが本番である。提案書で描いた理想像は、契約と運用に落とし込んではじめて現実になる。基本協定書は当事者間の基本ルールを固める文書であり、実施協定書は設計・建設・運営の役割分担と手順を具体化する文書である。事業契約書は対価、期間、解除などを定める最終契約となる。これらが日々の運用手順とかみ合っていなければ、開業後に認識のずれが生まれ、トラブルに発展しやすい。

 そういった事態を避けるために、募集要項と要求水準書を読み直し、契約で決めるべきことを条文単位で洗い出しておきたい。論点は四つである。第一に収支計画の前提で、稼働率・客室単価、人件費・光熱費・修繕費など、土台となる想定と根拠をそろえる。第二に成果を測る指標(KPI)である。稼働率や単価だけでなく、顧客満足、地域連携、雇用、景観維持など、事業目的に照らして守るべき事項を盛り込みたい。第三に想定外が起きたときのリスク分担である。追加費用や損失を誰が負担するのかを明確にする。第四に更新・改修、言い換えれば再投資のルールである。設備更新や大規模修繕に相当する投資を、いつ、誰が、どの基準で決めるのかを決めておく。

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