福島市内の三温泉地(高湯温泉、土湯温泉、飯坂温泉)の女将会は2025年11月25日、「ふくしまDC本番に向けたキックオフミーティング」を土湯温泉 水織音の宿 山水荘で開いた。女将、JR東、福島県、福島市の幹部ら20人以上が出席し、2026年4月1日から6月30日の期間に実施される「ふくしまデスティネーションキャンペーン」に向けてのさらなる情報共有と機運醸成を図った。
JR東日本福島統括センター所長・福島駅長の静徹也氏が「三温泉に期待すること」を、福島観光交流局局長の藤城良教氏が「ふくしまDCの全体像と戦略」を、JR東日本東北本部ふくしまDC推進室長の齋愛子氏が「これまでのDCの参考事例」をそれぞれ講演。山水荘社長で福島県旅館ホテル生活衛生同業組合 企画戦略委員会 委員長の渡邉利生氏は、「ふくしま常磐もの全力提供宣言&発酵食品 自社の魅力を高める宿泊商品づくり」を提案した。土湯温泉観光協会、高湯温泉観光協会、飯坂温泉観光協会からは各温泉地の現在の取り組みをそれぞれ報告。山水荘女将の渡邉いづみ氏は、同旅館における発酵食品への取り組みなどを話した。また、福島市観光コンベンション協会副会長の高橋美奈子氏が「DCにおける福島市の役割と目標」を、福島市観光物産交流協会理事長の守岡文浩氏が「地域全体で取り組むべき情報発信」について話した。

あいさつする「いいざか乙和会」の畠ひで子会長(吉川屋)

ポイントは「女性」「若者」「連携」 福島DC本番へ準備加速
福島DCは県政150年、東日本大震災と原発事故から15年の節目となる2026年に開催される。観光客入込数は回復傾向にあるものの、宿泊者数の回復は鈍いとの現状認識が示された。
藤城局長は「来年はコロナ前の水準をクリアするために、100万人ずつ観光客を増やすことを提案したい」と述べた上で、「女性と若者との連携を重視し、地域の魅力を引き出すことが重要だ」と強調。「女性」「若者」「連携」の3つをキーワードに地域の特色を生かした観光振興を進めていく方針を示した。

藤城氏
静駅長は「DCはJRだけでなく県とJRが一緒になってやっているもの。JRの6社(JR東日本、北海道、東海、西日本、四国、九州)が一体となってこのDC期間中の福島県を盛り上げる取り組みをしている」と説明。「みなさんの知恵、アイデアを出して、オリジナリティを出せばいい。普段やってることをさらに磨くだけでグラッとくる。それをぜひともやっていただければ」と温泉地関係者に呼びかけた。

静氏
齋推進室長は「福島DCは地域のきっかけづくりとしていただきたい。一過性で終わるのではなく、この後もお客様に福島を選んでいただくようなDCにしていく必要がある」と述べ、レガシー(遺産)として定着させることの重要性を訴えた。また、「発酵イコール美容」というテーマでPRしていく意向を示した。

齋氏
三温泉地、「ウェルカムフルーツ甘酒」提供を宣言
ミーティングでは、福島市の三温泉地が連携し、DC期間中に「ウェルカムフルーツ甘酒」を提供することを宣言した。飯坂温泉観光協会の柳沼公貴会長が宣言書を読み上げた。
宣言書では「福島市三温泉地おかみによる福島DC本番に向けた宣言」として「福島市は、豊かな自然と三温泉地が育んできた発酵食文化が息づく町です。味噌や日本酒などの伝統的な発酵食品は昔から人々の暮らしを支えてきました。こうした文化は、時間をかけて丁寧に育てる温かさを大切にする私たちのもてなしの心にもつながっています」と説明。「この思いを形にするため、福島市に訪れる皆様へ、福島の恵みと発酵文化が出会ったウェルカムフルーツ甘酒をご提供いたします」と宣言した。

「浜通りおかえりなさい!ふくしま常磐もの全力提供宣言」
渡邉利生委員長(山水荘社長)は、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の取り組みとして「浜通りおかえりなさい!ふくしま常磐もの全力提供宣言」を提案。「浜通りの復興、これが大きなテーマだ」と強調した。
「前回の2015年DCが一つの大きなきっかけ、起爆剤に我々になったかな、というふうに思いますし、あの時、非常に我々福島県の観光施設がやっぱり震災からの復興を全国にPRしようということで、やっぱり観光施設頑張ったと思うんですね」と述べた。
そのうえで「残念ながら、そのときに浜通りの皆さんはまだ復興半ばでして観光どころではなかったというのが、正直な現状じゃないかな」と指摘。今回のDCでは「浜通りの復興、これをキーワードに全施設、福島県の宿泊施設がその魅力を自分の施設の魅力に変換して、どうお客様に打ち出していくか」という点を強調した。
具体的には、旅館ホテル側を4つのステージに分け、「S:水産物(活魚・鮮魚)を仕入れ、宿泊プランとして販売する」「A:水産物(鮮魚・加工品)を仕入れ、一部メニューに取り入れる」「B:水産加工品を仕入れ、一部メニューに取り入れる」「C:水産加工品を仕入れ、物販コーナーで販売する」という形で常磐もの(浜通りの海産物)の提供を進める計画だ。
渡邉委員長は特に天然トラフグについて「秋田県はハタハタ、新潟県は越後村上の鮭など、どこの地域も海産物でブランド化して売っている。福島も同様に可能だ」と強調し、参加施設を募っていることを説明した。

渡邉氏
三温泉地の取り組み ― 発酵食とアートが鍵に
土湯温泉観光協会副会長の森山雅代氏は、土湯温泉の取り組みとして、福島DCのテーマである「発酵ツーリズム」と「アートツーリズム」の推進を紹介。地元の発酵食を提案するとともに、アートコーディネーターとの連携によって温泉街全体をアート空間として演出する企画を進めていることを説明した。
高湯温泉観光協会会長の遠藤淳一氏は「高湯の良さは温泉と自然。この2点を中心として売るのが一番良い」とした上で「温泉と自然だけでこれから絶対弱い。そこに食というものが必ず求められるので、この食という部分に手探りではあるが力を入れていきたい」と述べた。
飯坂温泉観光協会会長の柳沼公貴氏は「飯坂の特徴は飲食店が多いこと」と指摘。「毎年夏に行われているホロヨイウォークを、DC期間にも行う」ことや「4月の時期に音楽のイベント『音色ウォーク』を開催する予定」であることを紹介した。
また、5月の連休明けには「温泉娘のイベント」として9日にパルセでライブイベント、10日に吉川屋で「温泉娘サミット」を開催する計画も説明。さらに、eスポーツチーム「福島イービス」との連携や、国指定文化財を巡る街歩きツアーなどもDC期間中に強化していく方針を示した。
DCを契機に持続的な観光振興を
福島県観光物産交流協会理事長の守岡文浩氏は「昨年度のウェブ調査で、福島県を観光先として選んだ理由の第1位が『素晴らしい温泉に入った』、第2位が『おいしいものを食べた』、そして第3位が『素晴らしい景観、素晴らしい視線を見た』だった」と述べ、三温泉地がこれらの要素をすべて備えていることを強調した。
さらに「DMOの改正によって戦略を作らなければならない。これは作らなければならないということではなく、積極的に皆さんと協力しながらその戦略を皆様の考えをまとめていく」と説明。この戦略に基づいて予算措置などを行うことで、安定的な観光振興につなげる考えを示した。
福島市観光コンベンション協会副会長の高橋美奈子氏は「目標の中であるならば、DCはきっかけ、そのチャンスを活かしてそのままレガシーを作るのはその地域次第だ」との東北運輸局の言葉を紹介。「あくまでもこれは頂いたチャンスであり、それを活かせるのは我々現場の人間」と述べ、女将たちが中心となって現場での取り組みを強化していくことの重要性を指摘した。
福島市商工観光部観光交流推進室室次長の守山忍氏は閉会の挨拶で「DCを機に、持続的な地域魅力づくりと経済循環の基盤を構築していきたい」と述べた。
本ミーティングは、飯坂温泉の女将会が東京の日本橋でPR活動をする計画が発展し、三温泉地合同の取り組みとして実現したもの。今後も三温泉地の連携を強化するための組織づくりを進める方針だ。

守岡氏
【kankokeizai.com 編集長 江口英一】




