【体験型観光が日本を変える423】紅葉前線追いかけ「湖南三山」へ 藤澤安良


 晩秋の紅葉を堪能するために、11月末の平日に紅葉前線を追いかけて滋賀県に行った。全国各地の紅葉の名所に行っているが、とりわけ、京都の嵐山、嵯峨野、高尾、大原、東山などの紅葉の素晴らしさは言わずもがなである。

 隣の滋賀の紅葉では知る人ぞ知る「湖東三山」と「永源寺」があるが、近年、脚光を浴びつつあるのが「湖南三山」で、そこを訪ねた。

 旅行会社主催の関東からの貸し切りバスツアー客も多数訪れている。しかし、道路は渋滞せず、駐車場も空いていて、拝観券売り場に行列はなく、とてもスムーズに紅葉の鑑賞ができた。

 京都の社寺に勝るとも劣らない紅葉木の本数や規模であり、来場者の感嘆の声があらゆるところで聞こえてくる。私にとっては、湖東三山の案内ガイド研修を実施した場所なのでよく承知しており、穴場とは言えないぐらい著名であると認識している。

 世界一の人気の京都と比べるまでもないが、紅葉においては京都よりずっといいという人も少なくない。それらの人々の顧客満足度は高く、穴場と言えよう。路線バスの本数が極めて少なく、訪ねにくい場所にあることからもインバウンド客の比率が圧倒的に低い。

 このことからも、オーバーツーリズムの集中分散と地方の観光振興は、効果的な情報発信と2次交通の整備がポイントとなる。

 今年、インバウンドは昨年を大幅に上回り、4千万人が見込まれるが、まだまだ都市型観光に集中しており、都市部での宿泊料金の高騰が、日本人の金銭感覚や出張の旅費規定に合わない状況になっている。インバウンドも全てが富裕層でもないことからも、リーズナブルな宿泊施設を求めている客層も少なくない。

 そんな中、都内の新法の民泊(空き部屋貸し)で住宅街のアパートやマンションがその対象になっているが、近隣住民への影響を考慮した土、日、休日の宿泊を禁じている条例に違反し、平日も宿泊を受け入れているとして、警察の手入れを受けた。

 法制定以来、取り締まる要員やチェック態勢が整っていない。深夜までの大声、空き缶や吸い殻の投棄、所定日以外のゴミ放置など、近隣生活者への迷惑行為が社会問題となっていた。善意やモラルに頼らない詳細で厳正な法整備が必要になる。

 インバウンド客の動向から、それらの民泊の持ち主への代金の流れも、取り扱い旅行会社も添乗員も白タクも、外国に還流されている可能性があり、経済効果の総額のみならず、内容の検証が行われなければインバウンドの増加を手離しで喜んでばかりいられない。インバウンドの利用が多い新法民泊の社会課題を精査する時期に来ている。

 一方で、学校教育現場ではいじめや不登校が史上最高最悪になる中、人間関係構築能力向上を図る、コミュニケーション機会が多い田舎での自然体験機会の確保、共同調理による食育教育など、教育効果が極めて高い教育民泊のニーズは高い。

 何かと問題が多い民泊新法によるものと対極にある仕組みであり、学校教育と地域振興にも貢献している。

 
 
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