【テツ旅、バス旅 122】平成筑豊鉄道 鎌倉 淳


 平成筑豊鉄道は福岡県の第三セクター鉄道です。旧国鉄特定地方交通線の伊田線、糸田線、田川線の各線を引き継いで、1989年に営業を開始しました。筑豊炭田の貨物輸送で栄えた路線ですが、現在は旅客のみを扱うローカル線になっています。

 先日、福岡に出かけたおりに、伊田線と糸田線に乗ってきました。伊田線は直方―田川伊田駅を結ぶ基幹路線です。途中の金田駅から分岐し、田川後藤寺までを結ぶのが糸田線です。
 始発の直方駅では、JR駅構内の片隅にある細いホームに発着します。平日の午後、単行のディーゼルカーのロングシートに座っていた乗客は数人でした。

 列車は、筑豊の田園地帯をゆっくりと走ります。車窓も速度もローカル線そのものですが、線路は複線でしっかりしています。貨物の大動脈だったころの名残で、線路設備だけみれば幹線かとみまがうほどです。

 30分ほどで金田駅に到着。伊田線と糸田線の分岐駅で、20分ほど停車。構内は広く、往年の栄華をしのばせますが、乗降客はわずかです。

 列車はここから糸田線に入ります。単線で、ローカル線らしくなりました。金田駅から15分ほどで、終点の田川後藤寺駅に到着。ホームには高校生が列をなしていて、折り返し列車はにぎやかそうです。

 ご多分に漏れず、平成筑豊鉄道の利用者の主体は高校生で、人口減少により、近年は利用者減に直面しています。設備の老朽化も進んでいて、このまま路線を維持していく場合、将来的に巨額の赤字が見込まれます。そのため、沿線自治体では協議会を開催して「あり方」を検討し始めました。

 今後30年間の自治体負担額を試算すると、上下分離方式で鉄道を維持した場合は439億円。BRT(バス高速輸送システム)への転換は148億円、路線バスなら110億円だそうです。金額だけみればBRTやバスになりそうですが、運転士の確保は難題です。よほど工夫を凝らさないと、バス転換しても人手不足で維持できないでしょう。鉄道を残すなら、インバウンドの誘客に力を入れたいところです。沿線に有名観光地は少ないですが、のどかな里山や田園風景は「日本らしさ」を感じられる点で魅力です。

 福岡市に近いので、観光客のアクセスも悪くありません。直方市では山陽新幹線の新駅を誘致する動きもあり、実現すれば、さらに訪れやすくなるでしょう。

(旅行総合研究所タビリス代表)

 
 
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