【地域創生と観光ビジネス89】追悼EGLツアーズ代表「袁さんを偲ぶ会」ノボテル沖縄那覇で 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子


 日本をこよなく愛し、香港からの訪日インバウンドをけん引する「EGLツアーズ」の創業者で代表の袁文英さんが急逝したのは、今年8月31日のこと。その訃報は、悲しみと驚きをもって日本各地を駆け巡った。

 袁さんが誰よりも信頼して心を寄せてきたのが、「EGL OKINAWA」代表の小島博子さんだ。“のれん分け”は2015年のこと。国内唯一の総代理店として、袁さんと共同出資で旅行業登録をした。同年にはチャーター便を飛ばし、以降、沖縄のインバウンドの発展に大きく貢献したのは言うまでもない。

 小島さんの音頭で、去る11月25日、ノボテル沖縄那覇のレストランを会場に「袁さんを偲(しの)ぶ会」が催され、筆者も東京から駆け付けた。会場には100人を超す関係者らが集い、満面の笑みで「イエーイ」と親指を立てる袁さんの遺影に花を手向けた。

 弔辞のトップバッターは、OCVB沖縄観光コンベンションビューローの前々会長・安里繁信氏である。東日本大震災の発生で日本が混乱していたとき、袁さんが多額の寄付とともに、たくさんの想いを届けてくれたことに感謝して、「こちらからも(謝意を示しに)香港へ行こう!」と訪問団を結成してEGL本社を訪問したときのことを回想した。

 そして次に、OCVB前会長の下地芳郎氏がマイクを握った。下地氏は、沖縄県庁在職中の1995年、初代の香港事務所長として当地に赴いて以降、袁さんと交流を重ねてきた。県庁退職後は、琉球大学の教授となり、観光人材の育成と大学運営を担った。その琉大時代に、袁さんを特別講義に招へいしたときのエピソードに触れた。

 学生に配布した資料には、「ピンチをチャンスに」という言葉がつづられていたと語る。袁さんが生前、よく口にしたセリフでもあった。「波がひいているときは、逆に好機である」と、確かに袁さんは私にも語っていた。そうしたビジネス感性が、同社の発展にもつながっていったのだろう。講義終了後、学生たちに囲まれて得意のイエーイのポーズで全体写真に収まったのだそう。そんなエピソードを披露した。

 石垣市の中山義隆市長は、新・石垣空港の開港で初の国際チャーター便が、袁さん手配の香港だったこと、そのかいあって今、香港・石垣がデイリーでつながっていることを感慨深げに口にされた。

 そして鎮魂歌。楽曲「ダイナミック琉球」の歌唱で知られる歌手の成底ゆう子さんが、まずは袁さんが好きだった名曲「昴(すばる)」を涙ながらに熱唱した。

 成底さんは、EGL専属と言われるほどに袁さんからの信望が厚く、香港での周年記念行事でも歌声を披露しているから、ご存じのかたも多いだろう。司会台に立つ小島さんはじめ、会場からもすすり泣く声が聞こえた。袁さんが、いかに沖縄のひとたちの心の支えであったかがうかがえた。

 袁さんは、「沖縄は日本の宝です」とかねがね語り、沖縄愛にあふれるひとだった。好きが高じて、那覇にホテルも建てた。「沖縄逸(ひ)の彩(で)ホテル」である。アルコール類を無料の飲み放題にして宿泊リピーターを増やした。

 献杯「イエーイ」でお別れした。ご冥福をお祈りします。

 (淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)

 
 
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