【VOICE】「使うことで守る」 株式会社アポルタ 代表取締役 井川竜太氏


井川氏

諏訪湖という大きな空き家を
再び人の集う場所に

 私たち株式会社アポルタ(本社・長野県諏訪市)は、諏訪湖でカヤックや足こぎボート、レンタサイクルなどの水辺アクティビティ事業を展開しています。諏訪湖で過ごす時間を通じて、自然の魅力や地域の豊かさを体感してもらうことを目的に活動しています。

 私は、諏訪湖を「地域の大きな空き家」のような存在だと感じています。かつて人々が漁や日常を通じて親しみ、生活の中心にあった湖は、時代の変化とともに関わる機会が減少傾向にあります。誰も使わなくなった空き家が少しずつ朽ちていくように、湖もまた、関わりが薄れるほどに人々の記憶から遠ざかってしまいます。だからこそ、観光やアクティビティを通じて「人が集まり、使う」ことが、湖を生かし続ける第一歩だと考えています。

 私たちは、諏訪湖を舞台にしたアクティビティを観光の枠にとどめず、「地域の人が湖と再びつながるきっかけ」にしたいと考えています。その思いから、湖岸の清掃活動や環境啓発を行う「諏訪湖クリーンプロジェクト」を立ち上げました。観光客も地元の方も一緒に湖をきれいにすることで、「遊ぶ」「守る」「誇る」という循環が少しずつ生まれています。

 観光は、単に外から人を呼ぶ活動ではなく、地域が自分たちの価値を再確認する手段でもあります。諏訪湖を訪れた人が「また来たい」と感じることも大切ですが、同じように、地域の人が「やっぱり諏訪湖っていいな」と思えることが何より重要です。観光を通じて、地域が自らの宝を”再発見”する。そんな循環が広がれば、空き家だった湖は再び、息づく”暮らしの場”へと変わっていくはずです。

 これからの観光には、「使うことで守る」という発想が求められていると感じます。湖や山、街並みといった地域資源は、触れ、使い、楽しむことで本来の価値が引き出されます。諏訪湖が再び人の集う場所となり、次の世代が自然と関わることを当たり前に思えるように。私たちは、アクティビティを通じてそのきっかけをつくり続けたいと思います。

 そのためには、日常の延長線上にある”小さな関わり”を増やすことが欠かせません。自転車で湖畔を散策する、家族でボートに乗る、地域行事に参加する――そうした一つ一つの行動が、湖とのつながりを育て、未来へつながっていくと信じています。


井川氏

 
 
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