竹内氏
イタリア・リグーリア州。かつて地中海クルーズの途中、同州に位置するイタリア最大の港湾都市ジェノバを寄港地として訪れたことがあるが、今回は東京で同州の食を味わった。
イタリアを旅した気分にさせてくれるのは、その名も「旅するイタリア食堂 Viaggio di Sapori(ヴィアッジョ・ディ・サポーリ)」、港区芝にある。テーブル4名カウンター4名、計8席の小さな同店、なかなか予約が取れないので、ホントはヒミツにしておきたい。
イタリアは、元々小さな国の集合体ゆえ、個性豊かな郷土料理がある。同店では約2カ月ごとに、イタリア全20州から一つの州をクローズアップし、「旅する特集メニュー」としてその郷土料理を紹介している。先般訪れた折が、リグーリア州特集だったのだ。
テーブルに着きメニューを眺めていると、「そろそろご説明しますか?」と、シェフから声が掛かる。コレが、同店の特筆すべき特徴の一つ。シェフ自らタブレットを手に、画像を見せながら、旅する特集メニューとその州について、丁寧に説明してくださるのだ。
まずはリグーリア州について。ティレニア海に面して弓形に細長い州で、西はフランスと国境を接しており、南フランスのコート・ダジュールから続く世界的観光・保養地リヴィエラの一部。長靴の付け根の左側と言えば分かりやすいだろう。断崖絶壁に色とりどりの建物が貼り付いたように並ぶ世界遺産「チンクエ・テッレ」からも想像がつくが、海と山に挟まれ、山岳・丘陵地帯ばかりで平地が少なく、わずかな耕作地を利用した段々畑でブドウやオリーブが栽培され、名産品となっている。
われわれは迷わず特集メニューをオーダー。前菜は3種盛り合わせで、パスタが2種とメインが1種。お料理は全てアラカルトだが、自分で組み合わせればコース仕立てにもなる。また、特集メニュー以外にも通常メニューがあり、そちらから選択することも可能。
前菜が運ばれてきた。3種のうち2種の冷たい前菜が盛り合わせてある。一つは、ホタテのタプナードソース。オリーブとケッパー、アンチョビなどで作る、南仏発祥のソースだ。オリーブはモチロン、リグーリア原産の「タジャスカオリーブ」。黒い宝石とも呼ばれ、塩漬けもオイルもリグーリア料理には欠かせない。チコリの上に、ホタテのマリネとタプナードソースを載せた一品。言うまでもなく、ソースが絶品♪
もう一つは、バジル・レモン・オリーブオイルでマリネしたシラスを、トーストした薄切りのバゲットに載せた、シラスのクロスティーニ。文句なしにベリウマ! ちなみに、クロスティーニとよく似たブルスケッタとの違いだが、「小さなトースト」を意味する前者が小さく薄めなのに対し、後者は厚切りでニンニクを擦り付けて風味づけするのが特徴なのだとか。
温かい前菜は、リグーリアのソウルフード「ファリナータ」。それって何?
続きは次号をお楽しみに♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




