SPACIA X NIKKO CRUISER
上質な「移動」が旅の大きな魅力に
東武鉄道と東武トップツアーズ、日光交通の東武グループ3社は10月から、栃木県日光エリアを巡るハイグレード貸し切りバス「SPACIA X NIKKO CRUISER」(以下、NIKKO CRUISER)の運行を開始した。都内と日光を結ぶ新型特急「SPACIA X」に加え、日光エリアでの2次交通の充実を図り、快適性と非日常を兼ね備えた日光周遊を実現する。

SPACIA X NIKKO CRUISER

SPACIA X NIKKO CRUISERのロゴ
NIKKO CRUISERは、浅草―日光・鬼怒川方面を結ぶ「スペーシアX」のデザインコンセプトや世界観を継承した特別仕様のハイグレード貸し切りバス(中型)。外装には、スペーシア Xと同じ竹網細工モチーフの文様をあしらい、上品かつ洗練された印象に。日光の歴史的景観や宿泊施設にも自然に調和する。

日光の景観やホテルに溶け込む洗練された外装
内装は、「四十八茶百鼠(ねずみ)」と呼ばれるグレーを基調とした江戸の伝統色に、日光金谷ホテルのノスタルジックな趣と、粋な江戸文化の意匠を融合させたきらびやかな空間に仕上げた。
窓柱に設置したLED間接照明には、日光東照宮・陽明門に施された渦巻き模様の「グリ紋」をあしらい、逆さ柱にならって1カ所のみ逆模様を施すことで、日本の木造建築における「未完成の美」を再現している。

「グリ紋」の間接照明
座席は、国内線ファーストクラスや北陸新幹線「グランクラス」に相当する、ゆったりとした18席(3×6列独立シート)。通常、中型バスは28席前後だが、あえて座席数を減らすことで、圧倒的な快適性を実現した。重厚で安定感ある乗り心地で、長時間の移動でも疲れにくく、快適な移動を提供する。

国内線ファーストクラス仕様の広々とした座席
また、大型バスと同じ広さのトランクルームを備えるとともに、各座席には、AC100VコンセントやUSBポート、フットレスト、ドリンクホルダー、格納式大型テーブル、収納ポケットなどを完備し、スペーシア Xオリジナルボトルのミネラルウォーター付き。要望に応じて、スペーシア Xの車内カフェ「GOEN CAFE」で提供しているドリンクなどを事前に注文、車内でゆっくり楽しむこともでき、ハードとソフトの両面から上質な移動時間をかなえる。

事前に注文したスペーシア Xのカフェドリンクを楽しむことも
運行エリアは、目的地または出発地が日光市内であることが条件で、日光エリア内の周遊のほか、羽田・成田空港や都内ホテル・観光施設発着利用にも対応する。
料金は、通常の貸し切りバス同様、距離や時間、時期により変動するが、例えば東武日光駅から日光東照宮の観光を挟み、ザ・リッツ・カールトン日光へは12万円から(いずれも概算。バスガイドは別途手配が必要)。
東武グループはこれまでにザ・リッツ・カールトン日光の開業(20年)やスペーシア Xの導入(23年)、グランピング施設「グランフォレスタヴィラ日光―Private Dog Resorts―」の開業(25年)など、国際エコリゾート地としての日光エリアの価値最大化を目指し、観光の高付加価値化を推進してきた。個人旅行者向けの商品整備は着実に進む一方、団体・グループ旅行者を対象とした2次交通の弱さや、グループ一体での営業ツールの不足といった課題が挙がっていたという。
「NIKKO CRUISERは、これらの課題を補完し、国内外の団体・グループ旅行者に向けた高付加価値商品の造成を促進するために導入した」と東武鉄道 鉄道事業本部営業統括部日光・鬼怒川エリア営業推進部の石島和幸氏。富裕層など新たな利用層の取り込みを目指し、特急列車との連携による利用拡大、そしてエリア全体の収益力向上へとつなげていく構えだ。
今後は、NIKKO CRUISERの上質な2次交通を基盤に、スペーシア Xを含む特急列車、観光施設や体験コンテンツ、ラグジュアリーホテルなどをシームレスにつなぐ高付加価値旅行商品の造成が可能に。日光エリアの主要観光施設と連携し、輪王寺「大護摩堂」での護摩祈祷、同「大猷院」での釈迦三尊像参拝、二荒山神社での神楽鑑賞や、一般では立ち入ることのできない「掖門(わきもん)」を通り、御垣内での本殿拝観など、現地着地型の特別プランを開発。日光金谷ホテルや中禅寺金谷ホテル、ザ・リッツ・カールトン日光といった東武グループが所有するホテルのスイートルームや特別室も組み合わせることで、都内から東武日光駅、各観光施設、ホテルまでをシームレスにつなぐ、上質な日光旅が実現する。
【試乗体験レポート】 NIKKO CRUISER特別プラン 護摩祈祷で”非日常”を
東武鉄道は10月14、15日の2日間、旅行会社、メディア向けにNIKKO CRUISERの試乗体験ツアーを催行した。スペーシア Xから同バスに乗り継ぎ、日光の観光施設での特別プラン体験やホテルなどを巡った。
14日は、東武浅草駅を早朝に出発し、スペーシア Xの「コックピットラウンジ」(1号車)に乗車。次々と移り変わる車窓やカフェでの限定ドリンク、車掌との記念撮影などを楽しんだ。
東武日光駅到着後は、NIKKO CRUISERに乗り換え、市内の観光施設を巡った。まず、世界遺産「日光の社寺」の一つ、輪王寺大護摩堂での護摩祈願を体験。通常は導師の背後にある参拝者席を、同バスの特別プランとして導師の左右に設け、目の前で導師が護摩木をたく臨場感あふれる音や動作を間近で感じた。その後、一人一人名前が読み上げられ、護摩札を授与、導師からの法話(特別プラン限定)を受けた。

臨場感あふれる「護摩祈祷」
現存する日本最古のクラシックホテル「日光金谷ホテル」での館内ツアーと昼食後、スペーシア Xデザインがラッピングされた明智平ロープウエイ(定員16人、片道約3分)に乗車し、展望台まで向かった。華厳ノ滝や中禅寺湖、男体山などを望む雄大なパノラマを堪能した。

スペーシア Xデザインのゴンドラ(明智平ロープウエイ)
最後は県立日光自然博物館を訪れ、奥日光の自然や観光資源について学習。同館の青木考純業務部長は「ナイトサファリや狩猟体験が国内外問わず観光客に人気。時間をかけてじっくり日光の自然に触れたい人に来てほしい」と、ツアーの充実ぶりをアピールした。
終了後、参加者からの感想として「座席が適度に硬く、半日乗車しても体が疲れにくかった」「中型バスでわずか18席というのは大きな魅力」などの声が挙がった。サービス面では「おしぼりやブランケットの提供など、おもてなしの充実も期待したい」、特別プランについては「富裕層客は旅に“非日常感”を求める。護摩祈祷はまさにそれをかなえるコンテンツ」と高く評価する声もあった。

NIKKO CRUISERの乗り心地を体験
同バスの運行を担当する日光交通の福田秀二管理部次長兼明智平ロープウエイ索道長は、「今後はサービスの充実と従業員教育にいっそう注力し、スペーシア Xに劣らない上質な体験価値を提供していく。当社は日本バス協会が認定する『貸切バス事業者安全性評価認定制度』で3つ星を取得済みで、安全性にも自信がある」と意気込みを語った。
スペーシア Xで都心から快適に移動
都心から日光エリアまでの上質な移動を実現するのが、東武鉄道の新型特急「SPACIA X」=写真=だ。東武浅草駅―東武日光駅間を2時間弱で走行。「伝統と革新の融合」を目指し、江戸文化や日光の要素を随所に取り入れたデザインが旅の高揚感をかき立てる。

スペーシア X
座席は全6種類の多彩なタイプを用意し、旅のスタイルに応じて柔軟に選んでもらう。NIKKO CRUISERの定員をまかなう(1号車、20席)は、日光金谷ホテルや大使館別荘をモチーフとした気品高く落ち着きある空間。浅草発時は先頭車両となり、大きな窓から男体山や杉並木、稲作地帯、川沿いの景色など、日光らしい自然の風景を楽しめる。

コックピットラウンジ
“走るスイートルーム”をコンセプトにした「コックピットスイート」(6号車、定員7人)は、11平方メートルと私鉄特急最大級の広さを誇り、ゆったりとした空間で過ごす時間はまた格別。電動リクライニングやネックサポート付き可動式枕を備えた「プレミアムシート」(35席)も人気だ。

コックピットスイート
1、6号車の利用者はコックピットラウンジに併設されたカフェ「GOEN CAFE」を整理券なしで利用でき、看板商品の「日光ラガー」等、東武沿線の素材を生かしたドリンクや軽食が楽しめる。支払いは、クレジットカード、交通系IC、QRコード決済に対応している。
日光方面は毎日4往復運行で、英語対応スタッフも在籍。料金は「運賃」と各座席の「特急料金」が必要で、コックピットラウンジは1人掛けソファー利用で500円、同スイートは1万8千円(定員7人)の特別座席料金が発生する。




