デルタ航空は、人工知能(AI)と国際航空運送協会(IATA)が推進する新流通規格「NDC(New Distribution Capability)」の導入において、慎重な姿勢を取っている。
今週開催された「Business Travel Show America」で、デルタ航空のグローバル営業・流通担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのSteve Searは、同社がどちらの技術導入にも急いでいない理由を説明した。
「NDCと同様に、AIについても私たちは“旅”のように段階的に進めていくつもりです」とSearは、BTNグループのJen Bankard(コンテンツ・ソリューション&カンファレンス担当シニアディレクター)との対談の中で語った。
Searによると、デルタはNDCの導入にあたって、パートナー企業や顧客と協力しながら時間をかけて統合を進めたい考えだという。
「私たちは押し付けたくないのです。皆さんのほうから“引っ張って”もらいたいのです」と、同氏は会場に集まった法人旅行パートナーや購買担当者、プロバイダー、サプライヤーらに呼びかけた。
デルタのNDC戦略 Delta’s NDC approach
NDCは2015年に正式に導入されたが、業界全体での採用は緩やかだ。それでも一部の航空会社は、Bankardが「より積極的」と表現するアプローチを取ってきた。
たとえばアメリカン航空は2023年にNDC導入を強力に推進したが、後に方針を修正している。ユナイテッド航空やルフトハンザ航空も早い段階で取り組みを開始した。
デルタ航空は、2023年にAccelya社およびGoogleと提携する形で、米国主要3社の中で最後にNDC導入に踏み出した。
同社幹部は以前からNDCに対する姿勢を明確にしており、グローバル営業担当上級副社長のBob Somersは昨年、「早くやることより、正しくやることを優先したい」と語っている。
BankardはSearに対し、業界がNDC導入に苦戦する中、デルタがどのように異なる取り組みをしているのか、特にグローバル流通システム(GDS)とのコンテンツおよびチャネルの均衡を維持しながら協働的なアプローチを取っている理由を尋ねた。
「私が良いと思うのは、一貫したやり方を取っている点です」とSearは答えた。「法人市場は私たちの“屋台骨”です。法人を支えるエコシステムはTMC(出張管理会社)やGDSです。私たちはお客様に素晴らしい体験と価値を提供しなければなりません。だからこそ、私たちのアプローチは理にかなっていると考えています。」
Searはまた、デルタがAccelya社やSabre社などのパートナー企業と協力しながら、意図的に段階的な導入を進めていると述べた。
「価値のあるものにするための反復的プロセスだと考えています」と同氏。
既存の流通標準であるEDIFACTが「終焉期」にある中で、デルタはNDCを「正しい形で」定着させたいと考えているという。Searは、この改善プロセスに数年を要すると見込んでいる。
デルタのAIアプローチ Delta’s AI approach
Searは同イベントで、デルタ航空のAI活用についても語った。
同社は2024年1月にAIアシスタントを導入し、AIによる料金設定にも取り組んでいる。「AIは社員を支える存在です。決して人を置き換えるものではありません。これは私たちにとって非常に重要な考え方です」とSear。
デルタのAIへの取り組み方はNDCと同様で、まだ「非常に初期段階」だとしつつも、技術には大きな価値があると同氏は考えている。
AIにより、デルタのチームは顧客対応をより効果的に行えるようになっているという。たとえばコールセンターでは、AIが日常的な質問に対応することで、従業員はより難しい問題解決に集中できるようになった。
また、スケジュール作成にもAIが役立っており、天候による混乱時などのプレッシャーが大きい状況で特に力を発揮している。
「そうした混乱をよりうまく乗り切れるようになりました」とSearは述べた。
【出典:Phocuswire 翻訳記事提供:業界研究 世界の旅行産業】




