【ちょっとよろしいですか 166】人手不足の対処法 山崎まゆみ 


 先日、山形県旅館ホテル生活衛生同業組合からお招きいただきまして、「自社にあわせたアクセシブルツーリズム」セミナーに参加してきました。これは超高齢化社会の到来、インバウンド客の増加、そして多様なお客を迎える中で、誰もが旅をしやすい環境づくりを目指して、今年から取り組んでいます。

 セミナーのタイトル通り、ターゲットは車いすユーザー、あるいは目や耳がご不自由な方と宿によって選択し、それぞれの宿が無理なく取り組める方法を選んでほしいというのが、事務局の狙いです。

 キックオフセミナーは2本立て。最初に私が「はじめて取り組む宿のユニバーサルデザイン化」として、基礎的な取り組みと他の地域の地域で一体となった好事例を1時間話しました。次に宿の実践として、島根県松江しんじ湖温泉「なにわ一水」の勝谷有史社長が1時間語られました。

 勝谷社長は近年、力を入れている嚥下(えんげ)食の提供ノウハウを伝えられ、参加者は熱心にメモを取っていました。

 セミナー後、宿としての課題解決の議論の場が設けられました。やはり山形でも話題になったのは、人手不足を補うための人材確保です。

 人材確保には、私も思うことがありますので列記します。

 以前、九州運輸局が学生に向けて宿泊産業セミナーを2回実施しました。私はどちらもファシリテーターとして参加しています。1回目のセミナーは、女子大学生・専門学校生を対象に、旅館やホテルなど宿泊業界で活躍する女性が、出産・子育ても控えた女性特有のライフスタイルを踏まえ、職場のリアルを話しました。宿泊業はサービス業のイメージが強いが、実は人事や経理などの総務的な役割も大きいこと。施設管理や掃除といった裏方の仕事も必要。昨今、重要視されているPR業務。このように多岐にわたる仕事があり、どんな人も活躍の場があると伝えました。

 2回目のセミナーは九州の大学のキャンパスで文化祭中に開催されました。宿泊産業はただの宿にはとどまらず、地域の拠点として重要な役割を果たしている。そのことを柱とし、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の井上善博会長、日本旅館協会の桑野和泉会長らが地域との連携について具体的に話をされました。

 かくいう私も跡見学園女子大学で教えて丸9年になります。授業で温泉付きの宿の役割などをしっかり伝えると、就職先を都心型のホテルから温泉付きの宿泊施設に変更する学生もいます。

 要は、誤解なきように、業務内容を知らしめることが重要だと思います。

 人材確保という点で、山形で面白い話を聞きました。

 庄内地方の鶴岡市に湧く湯野浜温泉「亀や」の阿部公和社長が「労働のシェア」に取り組んでいるというのです。

 湯野浜温泉では、2024年から地域の課題解決のために「湯野浜100年大学」というプラットフォームを作りました。そこで、宿の経営を学ぶ際に「今後の宿泊業において、労働はシェアする概念が必要。多様な働き方を考えよう」と思ったそうです。

 現在、「亀や」では春の大型連休や夏休み、年末年始といった繁忙期には、首都圏在住者が夕方4時間のみ働き、他の時間は自分の趣味や学生ならば論文執筆にあてられるといった、極めてフレキシブルな体制で労働力を確保しています。

 「まだまだニッチなマーケットですが、可能性は感じます」と阿部社長は語っていました。

 「労働のシェア」は興味深いアイディアだと思い、読者の皆さんにお伝えしました。

   (温泉エッセイスト)

 
 
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