マリオット・インターナショナルは10月14日、アジア太平洋地域における食の嗜好変化を分析した「The Future of Food 2026(食の未来2026)」レポートを発表した。同レポートによれば、従来の格式高い高級料理から「ファイン・カジュアル」と呼ばれる新しいスタイルへの移行が進行中だという。消費者は料理そのものと同様に、物語性やエンターテイメント性、空間デザインを重視した、くつろげるパーソナライズされた食体験を求めている。
「心地よさ」が新たなラグジュアリーの象徴
マリオットの調査では、アジア太平洋地域の59%の施設が「ゲストがフォーマルな食事よりもカジュアルなスタイルを選ぶ傾向が強まっている」と回答。キャビアを添えたフライドチキンなど、親しみやすい料理に上質なエッセンスを加えた「ファイン・カジュアル」が新たなトレンドとなっている。シェフたちはファインダイニングの技術や創造性を活かしながら、日常的な料理を新しい視点で再構築している。
食事が五感を刺激する没入型体験へ
単なる味覚だけでなく、視覚・嗅覚・触覚・聴覚まで満たす体験型の食事スタイルも拡大している。マリオットの飲食部門スタッフの約半数(48%)が、よりインタラクティブなダイニング体験へのニーズ増加を指摘。暗闇でのダイニングや食べられるアートなど、小売、ホスピタリティ、エンターテインメントの境界が曖昧になる中、食は個性や創造性表現の新たな手段となっている。
地元食材と伝統への回帰
調査対象施設の85%が地元食材や地域料理をメニューに積極的に取り入れている実態も明らかになった。シェフたちは地域に根ざした食材を自身の料理のアイデンティティの中核として位置づけ、自生植物や忘れられかけた食材の活用により、より深みのある「食の物語」を紡ごうとしている傾向が強まっている。
AIが変えるダイニング体験
技術革新も食文化の変化を加速させている。調査では76%の施設が予約管理システムを導入し、75%の施設でSNSがレストランやバーの予約判断に影響していると回答した。今後はAIによるメニュー設計や料理の組み合わせ、価格設定の最適化が進み、パーソナライズされたダイニング体験が広がるとみられている。
健康志向と多様性への対応強化
健康意識の高まりを受け、ヴィーガン(63%)、ベジタリアン(64%)、グルテンフリー(54%)のメニューを求めるゲストの増加も顕著だ。同時に、低アルコールやノンアルコールのドリンクメニューも拡充され、バーも従来の枠を超えた体験を提供する動きが広がっている。
マリオット・インターナショナルアジア太平洋地域料飲オペレーション担当ヴァイスプレジデント、ピーター・ラバ氏は「食はもはや単なるエネルギー補給ではなく、物語であり、アイデンティティであり、文化をつなぐ手段」と述べている。
同社による今回のレポートは、30名以上の著名なシェフやバーテンダー、業界関係者、地域のフードメディアの知見と、アジア太平洋20市場・270施設の飲食部門スタッフを対象に実施した調査結果に基づいている。





