
竹内美樹の口福のおすそわけ
総菜パンの一番人気は、なんたって「カレーパン」。サンドイッチも人気だが、こちらは本来「調理パン」で、「総菜パン」ではないようだ。パンの製造販売における管理の手引「HACCP関連情報データベース」によると、「調理パンと惣菜パンの区分」は次の通り。
1.調理パン
サラダ、ハム、カツ、コロッケ等の副食物をパンにはさみ込みそのまま摂食できるようにしたもの。
2.惣菜パン
惣菜パン=焼き込み調理パンともいい、パン生地にサラダ、ハム、カツ、コロッケ等の副食物を包み、はさみ、載せて焼き上げたものをいう。なお、焼き上げる代わりに、油脂で揚げる、炒める、吹き付ける、塗布する等の処理をしたもので、油脂分を総重量の10%以上含むものは惣菜ドーナツという。
なるほどそういうことか。ちなみに油脂分が気になって調べたところ、平均的なカレーパン約124グラムに対し、揚げ油(サラダ油)は10グラム程度なので、総菜ドーナツではないらしい。いずれにせよ、カレーパンやウインナーロール、コーンマヨパンなどの総菜パンは、日本で生まれ独自に進化を遂げた「和製パン」なのだ。
明治7(1874)年、銀座木村屋總本店の初代木村安兵衛氏が、酒種あんぱんを考案・発売したのが、日本の菓子パンの始まりといわれる。明治33(1900)年にはジャムパンを発売、明治37(1904)年には新宿中村屋がクリームパンを開発・発売し、日本三大菓子パンがそろい踏みすることに。
総菜パンの始まりは、カレーパン。発祥については諸説あるが、今なお「元祖カレーパン」を販売している、江東区森下「カトレア」の前身で、明治10(1877)年創業の「名花堂」2代目、中田豊治(とよじ)氏が生みの親とされる。大正末期から昭和初期にかけて洋食ブームが起き、カレーライス・トンカツ・コロッケが三大洋食と呼ばれていた。そこで同氏が、パン生地にカレーを詰め、トンカツのごとくパン粉の衣をつけ揚げて発売したところ、大ヒット。当時は「洋食パン」という名称で、昭和2(1927)年には実用新案として登録された。
実は、この「カトレア」という店、筆者の車通勤の途中にあるのだ。モチロン、何度も購入させていただいている。カレーパンは2種類あって、「元祖カレーパン」が税込み281円、「辛口カレーパン」は税込み292円。間違えないように、元祖は小判型、辛口は丸型に作られている。元祖の方は、老若男女を問わず幅広く楽しんでもらえるようにと、比較的甘口。具材は開発当時から変わらず、豚ひき肉・玉ねぎ・人参の3種類。
他との違いは、生地が薄くて中身がズッシリ!という点。パン生地40グラムに対して、具が70グラムも入っているとか。コレをサラッとした綿実油で揚げているので、パクパクいけちゃう。
売り切れのことも多いが、揚げ上がり時間の目安は7時・11時・15時の3回なので、そこが狙い目だ。個人的に、筆者は辛口が好み♪ ぜひお試しあれ!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。