【日本政府観光局インバウンド最新リポート 124】ベトナムからの訪日旅行 インセンティブ市場に注目 JNTOハノイ事務所 松本二実所長


ガス会社のガラディナーの様子

 2024年の訪日ベトナム人数は62万1100人となり、2年連続で過去最高を更新した。2025年も1~7月の累計訪問者数は前年同期比9.6%増と好調で、年間70万人超が期待されている。全体的な訪日市場は個人旅行化が進んでいるものの、ベトナムでは訪日の際に査証取得が必要なため、旅行会社を通じた手配が主流となっている。募集型のパッケージツアーが中心だが、近年は個人の嗜好に合わせたテーラーメード型も増加している。

 特筆すべきはインセンティブ旅行の多さである。ベトナムの社員旅行は、社員はもちろんのこと、その家族や親族の参加費も原則、会社側が負担する場合が多いことが特徴であり、福利厚生としての旅行が企業選びの基準となるほど、社員旅行への関心が高い。行き先としては手軽に行ける国内旅行も多いが、海外旅行では近隣で査証が不要なタイやシンガポールに加え、日本、韓国、中国などが人気となっている。

 2024年も政府機関や民間企業による訪日インセンティブ旅行が活発だった。特にエネルギー関連企業の訪日が目立ち、背景には再生可能エネルギー開発を推進する国家電力計画(PDP8)の影響がある。一方、製造業はGDPの約25%を占める重要な産業であり、コロナ前は訪日インセンティブ団体が多くあったものの、近年の国際情勢や深刻な電力不足等に影響を受け長く低迷しており、訪日インセンティブ旅行の数も回復途上だ。

 旅行時期は一般的な観光と同様、桜の時期が最も多く、次いで紅葉の季節が人気だ。行き先は東京、富士山、京都、大阪を訪問するゴールデンルートが主流で、多くの団体が行程にガラディナーを組み込む。ベトナムではチームビルディングを重視する傾向があるので、ガラディナーを受け入れる会場においては、参加者が一体となって盛り上がれるプログラムや日本らしいパフォーマンスといった特別パッケージの提供や、営業時間延長などの柔軟な対応が誘致の鍵となる。

 グループサイズは20~60名の規模が多く、滞在は4泊5日が主流。旅行費用は1人あたり1500~1999米ドル≒20~28万円と、一般的な旅行商品(5泊6日1人あたり1千~1500米ドル≒13~20万円)より高単価だ。

 また旅行会社側も、大手から中小まで積極的にインセンティブ旅行を扱っており、地場企業との強い関係が市場の特徴でもある。訪日担当者が一般観光とインセンティブを兼任するケースが多いため、日本側の観光関係者がセールスを行う際には、一度の商談で両分野をまとめて説明でき、効率的な営業活動が可能となる。

 2025年は省庁・行政再編の影響もあり、政府系団体のインセンティブ旅行が一時的に減少しているが、来年以降の回復が期待されている。ベトナムの2024年GDP成長率は、前年比7.09%と政府目標を達成し、東南アジアの中でも高い成長率を維持する国の一つといわれている。人口1億人を抱えるベトナムの訪日インセンティブ市場は今後も大きな伸びしろを秘めている。


ガス会社のガラディナーの様子

 
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒