免税制度廃止は歳入にマイナス影響 ショッピングツーリズム推進に不可欠と17団体が共同提言


 一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会は2日、消費税免税制度廃止が訪日観光に与える影響に関する調査結果と、免税制度の維持を求める共同提言を発表した。免税制度廃止により訪日外客数および消費額が減少し、政府歳入に年間約1,003億円のマイナス影響をもたらすとの試算を明らかにした。

17団体が制度維持の共同提言

 小売業、観光業、旅行業、宿泊業、飲食業、労働組合など業界17団体は連名で、外国人旅行者向け消費税免税制度に関する共同提言書をとりまとめ、加藤勝信財務大臣、中野洋昌国土交通大臣をはじめとする政府および各党の国会議員に提出した。

 提言では「観光立国戦略は日本経済の成長および国際競争力の向上に不可欠」とし、「外国人旅行者数・消費額いずれの視点からも『ショッピングツーリズム』の推進が重要」と訴えている。現行の消費税免税制度について「堅持すべき」と明確に主張した。

 共同提言に参加したのは、日本百貨店協会、日本小売業協会、全国スーパーマーケット協会、日本チェーンドラッグストア協会など小売業関連8団体、日本観光振興協会、日本旅行業協会、日本ホテル協会など観光関連7団体、日本飲食団体連合会、UAゼンセン流通部門、ジャパンショッピングツーリズム協会の計17団体。業界横断的な連携による提言となった。

免税制度廃止で訪日客数514万人減少

 ジャパンショッピングツーリズム協会など小売業関連7団体は、免税制度の廃止が訪日観光に与える影響を検証するアンケート調査を今年7月に実施。訪日意欲の高い海外在住の外国人3,258人から回答を得た。

 調査は韓国、台湾、中国、香港、米国の5カ国・地域を対象とした。この5地域からの訪日客は全体の73.9%、旅行消費額の65.6%を占める。

 調査結果によると、免税制度廃止により、訪日外国人数は上位5地域で514万人減少。一人当たりの買物代は4,937円から3万2,847円減少すると見込まれる。

 国・地域別の影響では、中国からの訪日客数が170万人減少し、一人当たりの買物代も最大で3万2,847円減少するという試算が示された。韓国からは132万人、台湾からは138万人の訪日客減少が予測されている。

免税制度廃止でGDPと税収に悪影響

 調査を踏まえた試算では、免税制度廃止により訪日外国人客による消費総額が1兆4,304億円減少すると算出された。世界全体への影響に拡大すると、年間訪日客数695万人の減少、訪日消費額2兆1,804億円の減少につながるという。

 これに伴う税収の減少額は3,003億円と導出されており、「仮に制度廃止によって2,000億円の消費税収増があったとしても、歳入全体では1,003億円の減少となる」と試算している。

 調査結果は「免税制度廃止はGDPの減少および税収減につながる」と結論づけている。生産誘発額の約4.51兆円減少、雇用誘発数の約37万人減少、税収誘発額の約4,578億円減少など、経済全体への悪影響も指摘された。

「ショッピングは訪日目的の第2位」

 共同提言書では「外国人旅行者にとってショッピングは訪日目的の第2位」「インバウンド消費の約3割はショッピング消費額が占めている」と指摘。消費税免税による売上は約2.0兆円と試算され、インバウンド消費全体の約25%、ショッピング消費の8割を占めていると強調している。

 また「免税店の4割は地方に所在」しており、「インバウンド消費による地域経済活性化を目指す商店街、商工会議所、事業者が、消費税免税制度を活用した外国人旅行客の地方誘致・獲得に取り組んでいる」と地方経済への寄与を訴えた。

 免税制度が無くとも買い物は減らないとの意見に対しては「外国人旅行者の購入価格への関心の高さと、小売業の努力による国際競争力獲得を見落としたもの」と反論。「免税制度廃止による購入価格の上昇は消費額の減少に直結すると予想される」と懸念を示した。

 当協会は「免税制度を維持しショッピングツーリズムを振興することが、異文化理解や国際交流の促進、日本全体の活力向上、GDPの増加につながり、また、観光立国政策における課題の解決にも寄与する」との見解を示している。今後も「免税制度のありかたは、短絡的な判断ではなく多角的な視点から議論を重ねることが必要」として、「免税制度の検討に資するファクトデータの提供を行ってまいります」と表明した。

 10月中旬には、グローバルなマクロデータに基づく外部専門機関による経済波及効果分析結果を公開する予定だという。

 
 
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