【2025教育旅行レポート】横浜市立岩井原中学校(滋賀・京都・大阪、25年6月2~4日)


泥に足を取られながらも丁寧に田植えを行った

 教育旅行は、楽しい思い出づくりにとどまらず、生徒にとって絶好の成長の機会でもある。自ら計画し、仲間と協力して行動する中で、責任感や判断力が育まれる。自主性をどう引き出すか―。今回は2校の実践事例を紹介する。

田舎で“非日常”な民泊体験
心温まる交流から新たな気付き

 横浜市立岩井原中学校(田副聡校長)は、地域住民とのつながりや生徒の自主性を重んじる教育に力を入れてきた。横浜市保土ケ谷区に位置し、周囲を閑静な住宅街に囲まれている土地柄もあり、生徒たちは積極的に地域の盆踊り大会や子ども食堂など町内開催のイベントにも参加している。

 生徒の自主性を育む同校が修学旅行のメインとして選んだのは滋賀県東近江エリアでの民泊体験。「(1)校外での集団行動や班別の農家体験を通じて、社会性・協調性を身につけるとともに自ら行動できる積極的な姿勢を培う(2)さまざまな体験を通して関西の自然・文化・歴史を学ぶ」ことを修学旅行の目的に設定し、6月2日から4日にかけて実施した(参加生徒数は149人)。

 事前学習は2年生時からスタート。京都について、自分だけのとっておきの情報をまとめた「Myるるぶ」の制作や生徒たちにとって未知のものだった万博について調べた内容をスライドにまとめた。当初は万博にあまり興味がひかれない様子の生徒たちだったが、万博の起こりや江戸時代末期から開催されていることを学ぶうちに万博訪問を待ちわびるようになったという。

 「首尾一貫~今日もKyotoて万博(わんぱく)に~」をスローガンに掲げた修学旅行は、京都観光、民泊体験、大阪・関西万博訪問を盛り込んだ今年ならではのプログラム。

 1日目はクラスごとに分かれて京都の名所を訪れた。行き先はクラスで実施したアンケートをもとに決定。4クラスのうち、3クラスが嵐山、残り1クラスが伏見稲荷大社を選択した。第3学年の主任である塚本聡教諭は、京都観光の定番である伏見稲荷の鳥居を前に目を輝かせる生徒たちの様子が印象的だったと話す。

 一方、嵐山では昼食も満足にとれないほどの混雑に見舞われ、事前学習で調べていたオーバーツーリズムの洗礼を受けたという。その後金閣寺、三十三間堂を見学し、夕方に受け入れ先に到着した。予定では2日目に農業体験を行うはずだったが、到着した時点で翌日の予報は雨。そこで、受け入れ先の多くの家庭が雨天ではできない体験を前倒しで提供してくれた。

 受け入れ先は、一般家庭にはじまり米農家、竹細工などの伝統工芸作家、牧場や民宿を経営している家庭など。多岐にわたる受け入れ先で、田植えや工芸品作りなど初めて尽くしの体験に熱心に取り組んだ。

 夕食はそれぞれの家庭で協力して作った。自ら収穫した野菜や地物を使い、慣れない食事作りに奮闘した。道の駅で販売するジャム作りを手伝ったグループもあった。

 団らんのあとは滋賀県のローカルゲーム「カロム」で楽しい夜を過ごした。シンプルながら熱中できる対戦を通して、ホストファミリーとの距離がいっそう縮まったようだ。

 2日目はあいにくの雨だったが、ガリ版印刷やビニールハウスで種まき、水路や器を竹から作って流しそうめんを行うなど、各受け入れ先が屋内でもできる体験を工夫。生徒たちは雨でも充実した1日を過ごせたという。

 最終日は大阪・関西万博を訪れ、班別で生徒たちが自身で予約したパビリオンなどを見学した。事前準備の段階で人気のパビリオンは落選することもあったが、予約のいらないパビリオンを調べるなど、臨機応変に万博を満喫している様子が見受けられたという。

 今回の修学旅行に際して、塚本教諭は「受け入れ先が家庭というプライベートな空間であることから、生徒たちとの相性が気がかりだった。生徒たちの性格や普段の様子を伝えられる範囲で窓口の近江日野交流ネットワークの担当者にお伝えしたところ、受け入れ先の家庭や体験活動の内容を照らし合わせて、一人一人にマッチする受け入れ先を模索してくれた。生徒と民泊先のミスマッチが起きることなく、子どもたちにとって充実した旅行にできた」と笑顔を見せた。

 修学旅行を終え、生徒たちの様子に変化を感じているという吉成夏生教諭。「民泊先ではあいさつから丁寧に教えてくれたと生徒から聞いた。農業体験や食事作りを通して、今までの”当たり前”に深く感謝できるようになった」と生徒たちの成長をかみしめる。

 生徒からも、充実した旅行の感想や手応え、ホストファミリーへの感謝の声が上がっており、事後学習の集大成として、10月に後輩へ向けてプレゼン発表を行うという。


泥に足を取られながらも丁寧に田植えを行った

 
 
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