
田部井氏
法制化で国との連携を強化、
持続的な発展へ
観光立国推進基本法は観光施策の実施について国と地方の役割分担を定めている。国は施策を総合的に策定して実施し、地方自治体は主体的に地域の特性を生かした施策を策定、実施をする責務がある。同法付帯決議で「国は地方自治体の自主性及び主体性を尊重しつつ、やる気のある地域による知恵と工夫にあふれた観光振興を支援する」とし、観光施策を推進する上で地方自治体の役割は極めて大きい。
しかし、施策の内容と実施基準が不明確なため、自治体の任意の取り組みとなっており、いわば「選択科目」である。専管部署・担当を置かない市町村があり、予算・要員の不足から事業活動が低迷している地域も多い。また、MICEの基本である企業会議等のデータは観光統計から抜け落ちている。
そこで観光施策を地方自治体の基本施策に位置(義務)づけして統一的に実施し、総合産業として育成するため、(仮)観光地域振興法の制定を提案したい。全市町村に及びつつあるインバウンドの受け入れ、新規国内需要開発、オーバーツーリズム(観光公害)・環境問題などへの対応の基本とする。
【1】新法の概要=(1)観光の定義づけを行う。レジャー観光、MICE、ニューツーリズムなどを例示の上、施策の対象を明確にする(2)都道府県および政令都市は基本条例を制定し、地域の政策理念・方針など基本事項を定める(3)市町村は地域内の観光資源と需要の実態をデータ化して施策を実施。都道府県は市町村の施策を集約し調整した上で地域全体の計画を策定して実施する。
【2】期待される効果=(1)自治体の意識・責任感が高まり、事業者・市民へ波及してビジネスが活性化する(2)観光が「産業権」を得ることで、観光公害やSDGs対策等に関し、関連部局と対等に協議できる(3)企業会議等の情報収集に当たり、法に基づく行政施策として協力要請ができ、正確な統計資料が得られる。
【3】第三セクターの設立
施策を効果的に推進するため、官民共同出資の第三セクター(株式会社組織)を都道府県内に1社の設立を認める。会社は公益・収益の2事業部門を擁し、行政からの受託業務、DMOなどの支援・協働。収益部門は観光施設・資源の開発などに参画し、地域振興のエンジン役を担う。
【4】財源、所管
施策の所要経費は地方交付税、ふるさと納税寄付金および自治体の自主財源(宿泊税を含む)で賄う。法の趣旨に照らし、国土交通省(観光庁)、経済産業省、総務省3者の共管とする。
田部井氏