
観光経済新聞社は8月21日、観光業界の識者を招いてのオンラインセミナー「観光経済新聞チャンネル」の第42回配信を行った。温泉家で杏林大学地域総合研究所客員研究員の北出恭子氏を招き、「世界に誇る日本の温泉を再定義する~温泉の価値を“見える化”する必要性~」をテーマに講演した。
北出氏は日本の温泉が直面する課題として、(1)世界的ウェルネス市場との乖離(かいり)(2)温泉資源の適切な価値化(3)温泉研究とエビデンス蓄積の停滞(4)温泉リテラシーの不足(温泉に関する教育)(5)温泉文化の継承とリブランディング―の5点を挙げた。世界のウェルネス経済は2023年に6・3兆ドル規模に達し、28年には9兆ドルに拡大すると予測されている中、日本の温泉資源が十分に活用されていないことを指摘した。
世界一の温泉大国でありながら、その経済的価値を生かしきれていない日本の現状を踏まえ、フランスやドイツなどの欧州諸国が温泉資源を自然療法の一環として有効活用し、価値化に成功している事例を紹介。
温泉資源のさらなる活用を目指し、その魅力を掘り起こす取り組みである「新・湯治」や、各温泉地で実施されたプロジェクトなど、日本の好事例についても言及。
同氏は「温泉の持つ効果・効能を科学的に検証し、五感で感じる体験価値として国内外に発信していくことが重要だ」と締めくくった。
北出氏