日本は「再訪したい国」1位、52.7%の高支持 電通調査


 電通は8月25日、世界20の国と地域を対象に12400人に対して実施した「ジャパンブランド調査2025」の結果を発表した。日本は「再び観光に訪れたい国」として52.7%の支持を集め、2位の韓国(20.0%)に32.7ポイントの大差をつけて1位となった。同調査では訪日体験、買物傾向、地方創生、持続可能性の5つの視点で外国人の日本に対する意識を分析している。

再訪意向1位、13か国・地域で首位を獲得

 「ジャパンブランド調査2025」は、2011年の東日本大震災で日本の農水産物や訪日観光に風評被害が発生した際、ジャパンブランドが世界でどのように評価されているのかを把握するために始まった電通独自の海外生活者調査。15年目となる今回の調査では、海外旅行、訪日観光、日本文化、地方創生、日本の食、日本製品、ライフスタイル、価値観など多岐にわたる設問から最新のインサイトを分析している。

 調査対象の20の国・地域別の再訪意向については、日本は計13の国・地域で首位を獲得した。2位との差は最大46.2ポイント(タイ)、最小11.5ポイント(インド)と、アジアや北米、豪州で人気が高い結果となった。欧州・中東では順位がやや後退したものの、引き続き上位に位置している。

 観光目的での日本への再訪意向は上昇を継続しており、2023年の30.6%、2024年の34.6%から2025年は52.7%と大幅に増加した。これは円安の影響だけではなく、日本食と日本製品などの魅力が訪日観光を後押ししていると考えられる。香港と台湾を除いて、円安が主な訪日動機ではないことが明らかになっており、旅行地としての日本人気が一過性でないことがうかがえる。

 

和食と自然、四季の体験が上位に

 今後来日時に関心のある体験項目については、「和食」(56.4%)、「自然景勝地」(45.3%)、「四季の体験」(39.3%)、「繁華街の街歩き」(38.7%)、「伝統文化の体験」(36.4%)などが上位となった。「コンビニでの買物」(32.9%)も関心が高く、特にアジアの国・地域で支持されている。

 一部の体験項目においては、文化圏ごとの差異が明らかになっている。「ドラッグストアでの買物」「温泉体験」「神社仏閣巡り」などは、特に文化圏ごとに好みが異なり、明確なグラデーションを形成している。このことから、国・地域別の対策が必要であることが示唆された。

 自然体験アクティビティについては、「桜の花見」(59.2%)が最も高く、訪日観光の代表的な体験項目となっている。「温泉入浴」(52.2%)、「自然散策」(48.7%)、「紅葉狩り」(41.0%)が続き、日本の多様な自然観光資源が認知されていることがわかる。季節系、山岳・森林系の自然体験アクティビティへの参加意向が比較的高い一方、海洋・河川系や空中系は開発の余地があることも示された。

 

外国人が感じる「日本らしさ」とは

 海外から見た「日本らしさ」を知ることも需要創出には欠かせない。外国人が日本らしいと感じる象徴は「寿司」(42.2%)、「桜」(42.0%)、「富士山」(41.0%)などとなっている。国・地域別では「富士山」が共通する一方で、市場ごとの独自要素もある。例えばベトナムでは「うどん」や「自動車」、フランスでは「盆栽」や「醤油」が上位に入るなど、国・地域によって日本のイメージは異なる。

 世代間の差異も一定程度現れており、Z世代(20〜28歳)は「マンガ・アニメ」が「富士山」や「寿司」をやや上回っている。訪日回数が増加し日本ファンになるにつれ、「紅葉」「温泉」「祭り」など多くの項目は日本らしさが増す一方で、「桜」は低下傾向にあることも興味深い。これは、訪日回数が増えるにつれて紅葉シーズンへの関心が高まっていくという調査結果とも一致している。

コンビニでは寿司、ドラッグストアではスキンケア商品が人気

 訪日時の体験意向で、コンビニとドラッグストアでの買い物を比較したところ、コンビニの選択率(32.9%)がドラッグストア(24.1%)より高い結果となった。購入したい商品は、コンビニでは「寿司」(46.9%)、「アイスクリーム」(45.1%)、「おにぎり」「スイーツ」(ともに43.3%)が上位に挙げられた。ドラッグストアでは「スキンケア」(45.9%)、「メイクアップ」(38.7%)、「ボディケア」「サプリメント」(ともに37.4%)が人気となっている。

 国・地域別で見ると、コンビニとドラッグストアでの買い物意向はともにアジアが高く、欧米豪では低調であった。買いたい商品の種類(個数選択)は、アジア圏でも東南アジア・中東・インドが多いという結果が出ている。

 お土産の購入意向の上位5つは「和菓子」(43.1%)、「チョコレート菓子」(41.4%)、「工芸品」(40.0%)、「甘いお菓子(チョコレート以外)」(38.3%)、「日本ブランドの衣料品」(38.2%)となった。各リージョンの代表的な市場(中国・タイ・米国)を比較すると、「和菓子」「日本ブランドの衣料品」「化粧品」「お茶(日本茶、抹茶)」で嗜好差が顕著であることが明らかになった。



地方観光の認知と課題

 地方創生に関する調査では、都道府県の認知・訪問経験・訪問意向という3つの基本的な指標を測定している。今年は新たに、全国の政令指定都市・中核市も対象に加えられた。

 都道府県別の認知度では、東京都、北海道、大阪府、京都府が上位を占め、この傾向は10年以上変わっていない。主要都市別では、札幌市、大阪市、京都市が最も上位3位を占め、それに福岡市、横浜市、広島市が続いている。上位3都市以外の多くの都市は一定の認知はあるものの、訪問経験に顕著な差が見られないという結果となった。

 地方観光の満足度については、訪日経験者を対象に調査が行われた。地方部のみを訪問した割合はまだ低いものの、一度でも地方を訪問した場合の満足度と再訪意向はともに高く、平均90%台を記録している。

 地方観光資源としての温泉地の認知に関しては、国・地域によって大きな差があることが判明した。特に英語圏・欧米文化圏では温泉地の「非認知率」が近隣アジアを大きく上回っている。例えば、韓国では九州エリアの温泉が上位に来ている一方、スペインやオーストラリアではほぼ2人に1人が日本の温泉地をまったく認知していないという結果となった。

 地方観光の課題としては、WiFiなどの通信環境の整備、多言語対応、交通アクセスの向上などが挙げられている。国や地域によって感じる課題は異なり、一括りにした対策では解決が難しいという指摘もある。


持続可能な未来に向けた取り組み

 訪日希望時期については、桜シーズンに集中する傾向がある一方、次の需要の核となるシーズンは属性や国・地域ごとに関心が分散している。訪日回数が多い「日本ファン」ほど紅葉シーズンへの関心が高まる傾向も見られた。国別では、米国は夏休みを軸にしたサマーシーズン、中国は比較的紅葉シーズン、インドは特定のシーズンへの偏りが少ないという結果となった。

 持続可能な未来に向けた取り組みとして、日本の中古品への関心度も調査された。全体として日本の中古品への関心度は6割超で、使用状態の良さや耐久性といった模倣困難な商品価値が高く評価されている。国・地域別では中国やフィリピンなどで関心が高く、関心のあるカテゴリーも国・地域によって異なることが明らかになった。

 社会潮流への関心については、「生成AIの利活用」(36.6%)が最も高く、急速な進化を遂げたテクノロジーへの関心の高さが明らかになった。また、「再生可能エネルギー」やヘルス関連の項目も上位に入っている。特にZ世代の女性は、メンタルヘルス関連の潮流に強い関心を示している。


電通が15年の調査から得た示唆

 電通は15年間継続してきた調査から得た示唆として、3つの点を挙げている。1つ目は「マタイ効果」と呼ばれる優れているところにどんどんリソースや注目が集まる現象である。これはポテンシャルを示す一方で、オーバーツーリズムなどの問題をもたらす可能性もある。

 2つ目は「意図禍」と呼ばれる概念で、人間の思い込みを避け、データやファクトに基づいた判断の重要性を指摘している。そして3つ目は「バタフライ効果」として、世界情勢の変化が消費者の傾向にどのような影響を与えるかを継続的に探索することの重要性を挙げている。

 この調査は日本の国際的な位置づけを理解し、今後のインバウンド戦略や海外展開を考える上で貴重な基礎データとなるものだ。特に地方創生や持続可能な観光の推進において、国・地域別の細かな対策が求められることを示唆している。

調査概要

 「ジャパンブランド調査2025」は、日本の主な輸出先及び訪日観光の主な上位の送客元を網羅し、現地在住の20代から50代の中間所得者層以上の生活者を対象としている。2025年度の最新版では、20の対象市場を調査し、10以上のテーマを調査対象としている大規模な調査となっている。

 調査対象の20の国・地域は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、サウジアラビア、インド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、中国本土、香港、台湾、韓国である。

 調査の目的はジャパンブランド、すなわち特定の企業や製品ブランドに限定せず、国土、地方創生、和食、日本産品、カルチャーコンテンツ、価値観、ライフスタイルなど、日本に関連するものごと全般を包括的に捉えた概念が、世界でどのように評価されているかを把握することにある。

 
 
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