
8月13日に、大阪・関西万博の東ゲート近くの夢洲駅へ乗り入れる大阪メトロ中央線が送電線トラブルによって運転見合わせとなり、万博会場から外に出られない帰宅困難者が相次ぎ、中には朝まで万博会場内で過ごした来場者(オールナイト万博)もいた。
最大3万人ほどが滞留したが、地下鉄の運転見合わせによって動けない人のために大阪ヘルスケアパビリオン、null2、さらには海外パビリオンのいくつかが朝まで開放するなど、スタッフの迅速な対応によって体を休めることができた来場者も多かった。私も万博に20回訪れており、バスやタクシーを利用する機会も何度かあったが、基本的には大阪メトロ中央線を利用して、夢洲駅で下車し、東ゲートを利用している。
今回の問題としては、東ゲートは大阪メトロ中央線でしか入る方法がなく、タクシー乗り場・バス乗り場は全て西ゲートであり、さらに徒歩ルートもないことから、地下鉄が運転見合わせになった段階で、身動きが取れなくなってしまう構造になっている。
夢洲駅はよくできており、混雑時間帯は数分おきに発車するので、帰りの混雑時間帯でも2本待てば座れる。通常運転時であれば、たくさんの来場客を大きな混乱もなく、万博会場に運んでおり、素晴らしい移動手段であり、まさに万博客の依存度は高い。一方で大阪メトロ中央線が運転見合わせになれば、依存度が高い分、その影響が大きくなってしまうことになり、特に今回は人気のドローンショーが終わって帰宅ラッシュになる21時半ごろに発生したことも追い打ちをかけた。
これが日中時間帯であれば、帰宅ラッシュ前で混雑していない西ゲートからJR桜島駅などへ臨時のシャトルバスを出すなどの対応も可能であったが、今回は西ゲート自体も混雑時間帯であり、東ゲートの来場者をカバーできる余裕はなく、西ゲートのタクシー乗り場も当然長蛇の列になってしまった。バス運転手の労働時間の問題もあるなど、突発的に増車できるバスの数も限られていた。
24時前に夢洲―コスモスクエアの1駅間が運転再開し、コスモスクエアからニュートラムで住之江公園駅まで行き、終夜運転した大阪メトロ四つ橋線に乗り換えて、なんばや梅田などへの足が確保されたが、夢洲駅の混乱は続いた。
万博も10月13日の閉幕まで2カ月を切ったが、徒歩ルートでの脱出、普段は認められていない自家用車での出迎え、緊急時のバスの増車など課題も浮き彫りになった。今後の大型イベント開催時における教訓になっただろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)