
東日本大震災の記憶が蘇った人も多かったのではないか。7月30日午前、ロシアのカムチャッカ半島付近を震源とする地震の、日本への津波の影響だ。交通機関や観光施設の利用客らにも影響が出た。
地震の規模はマグニチュード(M)8.7と非常に大きく、気象庁は北海道から和歌山県にかけた太平洋沿岸部に津波警報、沖縄までの地域に注意報を発表した。
千キロ以上離れた地で起きた地震で、日本列島の沿岸部に津波が押し寄せる。改めてその恐ろしさを実感する。
1960年にチリ沖で発生した地震(M9.5)では日本の太平洋沿岸に最大6メートルの津波が押し寄せたという記録がある。地震発生から20時間以上たっての津波到達だ。北海道や東北などを中心に死者・行方不明者は140人を超え、約1500戸が家屋全壊したという。
地震、津波の恐ろしさが分かっているつもりだが、今回のように、遠いところで起きた場合は実感に乏しく、軽く見がちだ。しかし、津波は浸水の深さが30センチで死者が出始め、70センチだと死亡率は70%を超え、1メートルでは100%の人が死亡するとされる。楽観は禁物だ。
津波に巻き込まれないためには、沿岸部や川沿いにいる場合は高台や避難ビルなど安全な場所に避難する。普段からその場所や施設、避難経路などを確認しておきたい。人命を預かる宿泊施設はまずこれらのことを徹底したい。
津波注意報は31日午後、すべて解除された。大きな被害は出なかったが、夏休み真っただ中であり、観光地やレジャー施設、宿泊などに影響があった。太平洋沿岸に立つ千葉県鴨川市の水族館「鴨川シーワールド」では、津波警報を受け臨時休館に踏み切った。
また、大阪・関西万博会場では津波注意報に対する場内アナウンスが遅れた問題も発覚し、改善の余地があることが明らかになった。
津波に対する警戒は外国人観光客も同様で、被害が及ばないよう、適切な情報発信が欠かせない。多言語や、簡単な日本語で情報を伝える取り組みがなされてはいるが、情報の少なさを訴える声は依然としてある。
津波警報で大勢の観光客が足止めされ、猛暑の中で立ち往生していた中、宿泊施設が連携して観光客をマイクロバスに乗せてピストン輸送し、観光客を無事に送り届けたといううれしいニュースもあった。災難時に力を合わせることの大事さをうかがわせる話だ。
津波の影響で海水浴が中止になったところもあった(写真と本文は関係ありません)