
観光まちづくり演習Ⅲ
観光は明日の日本を支える重要な産業といわれ、今後さらなる成長が見込まれるが、その成長を確かなものにするには優秀な人材の確保が必要不可欠だ。ここでは観光に関わる充実した教育環境を誇る大学、専門学校9校を取り上げた。
地域を見つめ、地域を動かす
國學院大學観光まちづくり学部は同学の創立140周年を迎えた2022(令和4)年に開設。「地域を見つめ、地域を動かす」をモットーに、「日本各地の歴史・文化・自然を見つめ、観光を基軸に持続可能な『まちづくり』を考えて多様な側面から地域に貢献できる人材の育成を目指す」との教育方針を掲げている。
母体となる皇典講究所が明治15年に設立されて以来、地域社会のよりどころである神社に奉仕する神職たちを輩出してきた同学。卒業生が近年の少子高齢化により「氏子が減って祭りができない」「地域の伝統文化の継承が危ぶまれている」と危機感を持ち、「地域を元気にするような学びを大学に期待したい」と声を上げたのが学部創設の大きなきっかけとなった。
学びの柱は、文系と理系の垣根なく科目を柔軟に選択できるカリキュラムと、少人数で分野横断的な共同作業を行う「ゼミナール」「観光まちづくり演習」だ。
ゼミナールは都市計画、観光地経営、地方自治など、観光まちづくりに関わるさまざまな分野の教員が担当。1人の教員が約15人の学生を指導し、それをもとに学生が発表・討論を行うという対話的な学修となっている。
観光まちづくり演習は、ⅠからⅢの3段階に及び、観光まちづくりに取り組む地域の現場に実際に足を運び、それぞれの課題解決につながる構想・企画を考え、提案するという内容。Ⅰで地域の見方や調査・分析方法の基本を学び、Ⅱで現地調査と、それを踏まえた地域課題の分析。Ⅲは総仕上げとして、課題解決の具体的な構想をまとめ、まちの関係者らにプレゼンテーションを行う。
観光まちづくり演習Ⅲ
フィールドワーク先は全国各地に及び、岐阜県高山市、千葉県香取市佐原地区のまちづくりNPOなどと観光まちづくりに関する連携協定を締結している。夏季休暇中に学部独自の「海外スタディツアー」を行うなど、学びのフィールドは世界にまで広がっている。
同学部の付置センターである地域マネジメントセンターでは、地域社会を学ぶための教科書を発行。「観光まちづくり演習Ⅰ~Ⅲ」で使用する『「観光まちづくり」のための地域の見方・調べ方・考え方』(朝倉書店)では、地域を見つめ、地域を動かすための、基礎的な視点や手法を学ぶ。
「観光まちづくり」のための地域の見方・調べ方・考え方
4年間を横浜市の横浜たまプラーザキャンパスで学ぶ。学部の創設を契機にキャンパスの1棟を同学部用に改装。教員の研究室のすぐ目の前に演習室を設け、学生が自由に使えるようにしている。「空き時間に仲間と勉強をしてもらい、行き詰まったら教員を呼んでアドバイスを受ける。教員と学生の距離が近くフレンドリーで、共に良い学びの環境をつくっていこうという意識があることが当学部の特徴だ」と同学総合企画部入学課の佐野祐人課長補佐。
卒業生の進路先は国家・地方公務員、観光協会・DMO職員、観光事業者などを想定。来春に同学部の第1期生が卒業する。