
加賀屋代表取締役社長の渡辺宗嗣氏
観光経済新聞など専門紙6紙の連携による特別オンラインセミナーが開催され、5月14日に配信された。連携した専門紙は、観光経済新聞、ニッキン、建設通信新聞、海事プレス、環境新聞、鉄鋼新聞の6紙。観光経済新聞の創刊75周年の記念事業の一環でもある。2024年1月に発生した能登半島地震を踏まえ、復興や防災への取り組み、官民連携の在り方などについて、有識者などによる講演やパネルディスカッションが行われた。
観光分野では、「和倉温泉街の復興への道筋と金融支援」と題したパネルディスカッションが行われた。國學院大學観光まちづくり学部教授の井門隆夫氏をモデレーターに、石川県七尾市、和倉温泉の旅館、加賀屋社長の渡辺崇嗣氏、七尾市に本店を置く地元金融機関であるのと共栄信用金庫理事長の鈴木正俊氏(役職は当時、現・会長)、能登半島の観光復興を支援している観光庁審議官の鈴木貴典氏(役職は当時、現・内閣府大臣官房審議官)の3人がパネリストとして参加。和倉温泉の復興、金融支援の状況などについて語り合っていただいた。
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復興支援ファンド創設、国主導で護岸復旧
井門教授 能登半島地震から約1年半が経過した。日本を代表する温泉地である和倉温泉を中心に、能登半島にどのような復興の道筋があるのか。産業の復興や防災、新しいまちづくりに向けて全国の皆さまに参考になるお話が伺えるのではないかと考えている。まず、能登半島地震の発災から現在までの状況、取り組みについて、のと共栄信用金庫の鈴木理事長にお話しいただければと思う。
モデレーターを務めた國學院大学観光まちづくり学部教授の井門隆夫氏
鈴木理事長 のと共栄信用金庫は、能登地区と金沢地区の両方に拠点を持っている。能登半島地震の発災直後は、当金庫としても、被災した職員がどれだけいるのか分からず、職員と連絡が取れないという状況が1週間ぐらい続いていたので、お客さまの状況も分からなかった。和倉温泉の状況もニュースで、非常に厳しいことになっていると知った。発災から1週間後、ある国会議員の方が来られたが、東日本大震災や熊本地震に匹敵するというか、能登半島の地理的な条件もあり、非常に厳しい状況なのではないかということをお話しした。
当金庫のお客さまは、飲食業や観光・宿泊・旅館業が非常に多い。まずコロナ禍で大変厳しい状況となり、いわゆるゼロゼロ融資で多くを借り入れている状況の中、1年もたつか、たたないかの間の震災なので、当然ながらさらに借入金がかさむということが予想された。債務超過になられるお客さまも多いのではないかと非常に心配した。その対策をぜひお願いしたいとも陳情した。
金融でできることは何かと考えた結果、それが地元の信用金庫、銀行の協力のもと、復興支援ファンドになった。4月1日に相談センターができ、100億円規模の復興支援ファンドが創設された。国から80億円を出資いただき、県から5億円、残り15億円を私ども地域金融機関が負担するという形となった。
和倉温泉については、護岸や旅館・ホテルの施設が大きな被害を受けた。護岸に関していえば、民有地、公有地、それぞれ所有権が分かれていて、非常に調整が困難ということもあり、行政の方から、和倉温泉全体の復興の目安として、当初は5年かかるという話もあったが、これは非常に不本意で、全国の旅館・ホテル、温泉地が競争している中、5年も一般営業ができないと、それは大変不利な状況になる。2~3年以内に8割ぐらいの旅館・ホテルが一般営業を始められるようにしてほしいと要望した。2024年7月には岸田文雄首相(当時)が現地に来て、国主導の護岸工事をお約束いただき、一応のめどがついた。
その後は、和倉温泉に限らず、能登エリアにおいてなかなか復興需要が出てこないということもあった。地域の人口が減り、住民票ベース以上に、スマホの位置情報などで見るとさらに大きな減少で、住民票は残しているが、現在は住んでいない、そういうこともあって、例えば、住宅ローンとか、生活関連のローンが出ていかない。これは何度も当局に申し上げているが、一番の心配はそういう人口減少が加速することだ。震災によって多大なる影響を受けたところには、何らかの措置をお願いしたいと要望し続けている。
のと共栄信用金庫理事長(当時)の鈴木正俊氏
宿泊客の避難、直前の訓練役立つ
井門教授 続いて、和倉温泉を象徴する旅館である加賀屋の渡辺社長に、発災から現在までの状況をお話しいただきたい。
渡辺社長 この1年数カ月を振り返ると、本当に暗中模索、右往左往の日々だった。周囲の環境や前提条件が刻々と変わる中、いろいろなことを決めていかなければならなかった。一つでも要素が確定すれば、それをベースに次に進めるが、不確定要素、変動要素が多い。それでもいろいろなことを進めていく日々だった。その都度、修正して検討し、さらに修正して検討しての繰り返しだった。
鈴木理事長からお話があったが、護岸という課題があった。和倉温泉は海沿いに多くの旅館がある。護岸については当初、これは自分たちで何とかしなければならないと考えていたので、大変なお金と時間がかかると頭を抱えていたが、いろいろな方のご支援をいただき、国、県、市の方で護岸復旧をやっていただけることになった。これは本当にありがたく、そのおかげで、旅館の方をどうするかという検討にシフトすることができた。
和倉温泉には21の旅館がある中で、まだ4、5軒ぐらいしか一般営業ができていない。加賀屋グループとしても、開業までにはもう少し時間を要する状態だ。これまでの期間、何をしてきたかというと、一つは雇用を守るということだ。ありがたいことに、全国の旅館・ホテル、食品会社、いろいろな企業の皆さまからお声掛けをいただき、今、全国各地に出向ということで、当社のスタッフを預かっていただいている。出向中のスタッフと話すと、出向先でいろいろなことを学ばせていただいている、体験させていただいているということで、本当にありがたい機会を頂戴したと感謝している。
加賀屋グループとしては、2024年夏に、大阪にレストランを出店させていただいた。これも震災直後だったので、本当にいいのかどうか悩んだが、加賀屋グループが何とか頑張っているということを社内、社外にメッセージとして発信する機会になるのではないかと出店を決めた。本当にいろいろな企業の皆さまからお声掛けをいただき、コラボレーション商品などの取り組みもやらせていただいている。
地震発生時のこともお話ししておきたい。加賀屋にはその時、お客さまが400名ほど、スタッフが300名ほど、合わせて700名が建物の中にいた状態で地震が起きた。すぐに避難所の方へお客さまを誘導させていただいた。後でいろいろな映像を見ると、スタッフがお客さまの上に覆いかぶさりながら、落下物から守らせていただく、というようなシーンが各所で見られ、後には多くの方からSNSなどでご評価いただいた。加賀屋だけでなく、和倉温泉の各旅館・ホテルのスタッフが本当にそれぞれ体を張って対応してくれた。結果としては、お客さまも、スタッフもほとんどけががなかった。この和倉温泉にそういうスタッフがたくさんいてくれるということが、和倉温泉の誇りだと自負をしている。
地震の本震があったのは午後4時10分だが、ちょうどその時間帯は、和倉温泉駅に到着後、旅館に移動されているお客さまが結構いらしたが、もうちょっと地震が後ろの時間であれば、おそらくチェックインでロビーのあたりに、多くのお客さまがいて、落下物でけがをされた方もいたかもしれない。この点では、時間帯が少し前、ということが幸いだったのかもしれない。後日考えたが、お食事処ではお鍋に固形燃料が準備してあった。もしお食事時間帯に地震が起きていれば、火災が起きていたかもしれない。地震があったことは本当に大変な出来事だが、もっと悪いシナリオはあり得たかもしれない。そう考えて前向きになろうと思っている。
スタッフに聞くと、過去の経験が生かされたという話も出ている。過去の地震の経験から、どこで落下物が起きやすいのか、把握できていたり、館内放送も以前にお客さまからいただいたアドバイスをもとにスムーズにできたという。もちろん対応はマニュアルをベースにしているが、やはりマニュアルは50%で、残りの50%は目の前のお客さまの状況、揺れの状態を見ながら、それぞれのスタッフが自分たちで判断して対応してくれたということだ。
加えて、地震の2カ月前の2023年11月に避難訓練を行っていた。その時は例年と違うやり方で実施した。例年は、館内のどこで火事が発生するかを事前に告知していたが、その時は、どこで火災が起きるかは事前に知らせず、アナウンスを受けてスタッフがどう動くべきかをその場で考え、その場で臨機応変に対応するという訓練にした。これが地震の時に役立ったようだ。事前の避難訓練を含め、準備というのが大事だと改めて実感した。
加賀屋代表取締役社長の渡辺宗嗣氏
団体客の減少、人手不足 訪日インバウンド拡大
井門教授 能登半島地震における観光庁、国土交通省の対応はどうだったか。鈴木審議官にご説明をいただきたい。
鈴木審議官 国を挙げた対応だった。大変な災害なので、初期には自衛隊であったり、国土交通省関係の海上保安庁であったり、こうした方たちが現地に入り、救援活動に当たった。インフラについては、国土交通省では道路、上下水道、避難用住宅、仮設住宅であったり、先ほどお話に出てきた護岸の関係であったり、さまざまな面で復旧、復興に取り組んでいる。
観光庁審議官(当時)の鈴木貴典氏
観光分野においては、観光庁だけでなく、例えば、被災された旅館の復旧という面では、被害を受けた建物の除却には環境省が支援を行い、また自治体の方々にも協力をいただいた。新しい建物に建て直す場合の費用については、経済産業省が支援している。観光庁は、大きな被害を受けた観光地がこれから蘇っていくため、再生されていくため、ソフト面からの支援を主にさせていただいている。
観光庁が最初に取り組んだのは、2次避難所の確保に関して、宿泊関係の業界団体のご支援、ご協力のもと、その情報を取りまとめ、政府内、自治体と共有するということだった。それと並行して行ったのが「北陸応援割」だ。大きな地震が起こると、広域にわたって風評被害的な旅行控えが起こるということで、旅行費用をほぼ半額に割り引く応援割を実施した。石川県に関しては、24年の3月からまず1カ月間実施し、ゴールデンウイークをはさんで、さらに5月から7月いっぱいまで、8月を空けて、また9月からと3回にわたって実施した。北陸4県でだいたい100億円ぐらいの消費が行われたといわれている。
次の段階の施策としては、ソフト面での観光再生支援事業を実施している。2024年度予算、補正予算による措置で、旅館の施設については先ほど申し上げたように、経済産業省の支援措置を活用して再建を行っていただくが、観光庁では、観光産業を守っていくために、復興に当たってどういう計画をつくるべきか、それらに専門家を派遣したり、新しい誘客コンテンツづくりを支援したりしている。復興しているところ、お客さまを受け入れられるところに対してはプロモーションを支援する。こうしたソフト面での支援を観光再生支援事業として始めている。関係者と一緒になって地域の観光を再生していきたい。
鈴木審議官 地元の方では、和倉温泉の旅館の若手経営者などが中心となって「和倉温泉創造的復興プラン」をつくっているが、国土交通省の港湾局と観光庁では、「和倉温泉の地域観光再生支援プラン」というものを公表した。鈴木理事長、渡辺社長からお話があったように、護岸の工事が復興にあたって大きな課題ということで、民有護岸を公有化した上で、国でまとめて一体的に施工することにし、できるだけ早い時期の工事完了を目指す。大きな建物の解体、工事用道路の整備によって、護岸工事と並行して旅館の工事が可能になっている。旅館の営業再開という意味でも、海側に工事用道路ができることで、そちらを重機などが通るので、護岸工事と並行して営業を再開できる。
和倉温泉21旅館のうち、2024年度中に4旅館が開業しているが、25年度中に4旅館、26年度に5旅館が一部再開を含めて営業再開の予定になっている。全部の旅館が再開して、温泉地として再開するというのではなく、実際には段階的に復旧が進んでいく。復旧の過程においても、営業できる旅館は営業してお客さまに来ていただく。国としても情報発信を行って、いろいろな面で復旧、復興を支援していく。
井門教授 次に、これからの和倉温泉や能登半島についてお話をお聞きしたい。はじめに観光庁の鈴木審議官に、能登の生業や暮らし、そして、にぎわいを取り戻すために、どのように復興を進めるのかお話しいただきたい。
鈴木審議官 マクロの環境で言うと、近年、顕著な変化がいくつかある。一つ目に、旅行形態については、団体から個人へ、特に宴会付きの団体のお客さまが徐々に減ってきていたのが、コロナでさらに減少した。一定数は残るだろうが、減少傾向が急に増加に転じるということは考えにくい。これにどう対応していくのか。次に働き手の問題、人手不足にどう対応していくのか。
一方でインバウンドが増加していく。日本の人口は約1億2千万人だが、2005年ぐらいから減少が始まっていて、これからも基本的には減少していく。世界の人口は約80億人で、これからまだ伸びて100億人ぐらいまでいくだろう、という国連の推計も出ている。特に、アジア太平洋地域は、経済的にも発展していく地域が多いので、インバウンドはこれからも需要としては相当大きく伸びていくと期待されている。
これらにどう対応していくのか、というのが基本的な視点になる。
また、北陸地方の観光の状況を見ていると、北陸4県の中で、石川県の宿泊客はコロナ前との比較で増えている。特にインバウンドの宿泊は大きく増えている。おそらく金沢、加賀エリアに泊まっているということだと思うが、これをどう能登の方に誘客していくのか、足を伸ばしていただくのか、インバウンドが一つの大きな視点になる。地域で魅力的な体験をつくったり、魅力的な宿泊施設に改修したりしていくことが重要だ。
観光庁としても、先ほど「北陸応援割」について申し上げたが、能登地域については復興の状況を見ながら、より手厚い旅行需要喚起策を検討していきたいと考えている。旅館、地域の復旧が進んでいけば、それを応援する需要喚起策も検討していく。
加賀屋の今後の戦略 リブランディングの好機に
井門教授 渡辺社長からは、これからの加賀屋の戦略をお聞きしたい。そして和倉温泉がどうなっていくのか、復興に向けた展望を語っていただければ。
渡辺社長 当面の課題は、加賀屋グループとしても、和倉温泉の他の旅館の皆さまも同じ状況かと思うが、大きく二つある。一つは、建築関係の費用が高騰しており、改修、新築にどう対応していくのか。もう一つは、加賀屋としても、和倉温泉としてもスタッフが一番の宝なので、この雇用をどう維持していくのか。雇用の維持だけではなく、モチベーションと言うか、スタッフの気持ちをどう維持してもらうか、これへの対応というのが開業までまだ1、2年かかる中で大事になってくる。
加賀屋グループとしては、和倉温泉で4ブランド7棟の旅館を展開させていただいているが、先ほど鈴木審議官のお話に出たように、コロナの時から、団体客が徐々に小さい団体となり、ご夫婦、ご家族のお客さまが中心になってきている。ちょっと変な表現になるが、「地震に背中を押された」というか、これを機にリブランディング、私どものブランドはどうあるべきなのか、テーマ、コンセプト、それに伴うおもてなしのあり方がどうなのか、当然、価格帯も連動してくるが、これらを見直すきっかけにしようと。地震の前には、なかなか踏み出せず、手を付けられなかったが、それに挑戦をしていきたいと考えている。
和倉温泉としては、旅館だけが戻ればいいかというと、当然そうではない。周辺の観光施設や商店の皆さまと一緒になって連動して盛り上がっていかないと、和倉温泉は難しい。そんな中で和倉温泉全体としては、「和倉温泉創造的復興プラン」として、旅館、商店の皆さまなどが一緒になって計画をつくった。能登の里山、里海を「めぐる」をコンセプトに、八つのゾーンに歴史、生活、スポーツなど、それぞれにテーマを持たせて和倉温泉全体の魅力を高めていこうとしている。少しポイントを申し上げるならば、一つは景観。海、山、両方の素晴らしいものが能登にはあるので、この魅力をお伝えするにはどうあるべきか。観光客にもたくさんお越しをいただく、それと同時に、地元の住民の皆さまの生活を両立させることが大事になる。また、旅館業では、泊食分離や長期滞在への対応も大事になってくる。これは旅館だけではなく、旅館と周辺の飲食店の皆さまとの連携をどう取っていくのかということがますます重要になる。
地域づくりでは震災を経験したからこそ、できること、やるべきことがある。安心、安全の確保というのは、おもてなしの第一の基本。これだけ災害の多い国なので、やはりその取り組みがしっかりしたモデル温泉街を目指していきたい。合同の避難訓練なども必要だ。旅館ごとには実施しているが、これに温泉街として取り組むべきかもしれない。旅館を出るところまでの避難訓練にとどまらず、そこから避難所までどうやってご案内させていただくか、誘導させていただくか、そうした訓練も必要だろう。防災グッズや食料などの備品もみんなで役割分担する必要がある。
避難所については、和倉温泉の避難所はもともと住民の避難を中心に設定していたようだが、観光客、帰省客を含めて、避難所がどうあるべきかも見直す必要があるだろう。これからインバウンドのお客さまも増えるし、ハンディキャップのある方、高齢者の方に向けた対応、おもてなしがどうあるべきかという、根本的なところから改めて取り組みたい。今回の地震における避難誘導については、各館の取り組みに対して、皆さまから称賛をいただいた部分もあるが、紙一重だったところもあるだろうと思う。今一度、何が良かったのか、どうあるべきだったのかということを見つめ直し、有事に備えていきたいと考えている。
井門教授 最後に鈴木理事長に、和倉温泉、能登地域のこれからへの思いをお聞かせいただきたい。
鈴木理事長 和倉温泉は能登半島における観光の拠点だ。和倉温泉を中心に、輪島に行ったり、珠洲に行ったり、能登半島の各地を巡るために非常に重要な場所だ。なかなか定住人口が増えない中で、交流人口、関係人口をどう増やしていくのかというのが、能登半島全体の経済にとって重要だ。そういうことも含め、能登半島の創造性ある復興に向け、和倉温泉が極めて重要なポイントだと言い続けている。
そのために金融機関としてなすべきことは何かというと、先ほどの復興支援ファンドというのは、既存の債務のカットのためのものであって、新しい資金供給をすることとはちょっと違う。そこで、新型コロナの影響を受けた中小企業向けに設けられた金融機能強化法の特例を活用して、さらに復興需要に対応できるような金融機関になろうと。趣旨としては、国からも、復興に努力する金融機関については低い金利で資金供与して、それを復興需要に生かしていきたい、生かしていくべきであるというご示唆をいただいた。金融機関として体力をつけて、この地域の創造性ある復興に役立っていきたい。
能登を「NOTO」として国際的に通用するようなリゾートにできないか、震災の前からそう思っていた。渡辺社長、鈴木審議官のお話を聞いて、インバウンド向けの対応をきちんとやっていかないといけないと強く感じた。ヨーロッパにでも、アメリカにでも行って宣伝したいと思うぐらいで、思い切った新しいことをやらないと、なかなか創造的復興というところまではいかない。早期の創造的復興を目指して、私どもも金融の面からしっかり取り組んでいきたい。
パネルディスカッションの収録の様子
国土交通省/観光庁「和倉温泉の地域観光再生プラン」
国土交通省、観光庁は、和倉温泉(石川県七尾市)が能登半島の観光の拠点として、復興に向けて前進していることを示そうと、旅館の営業再開に関する情報や護岸の復旧工事の状況、観光再生に向けた取り組みなどの状況を、国の支援に係る情報とともに発信する「護岸復旧と一体となった和倉温泉の地域観光再生支援プラン」を策定している。
護岸復旧については、民有護岸を市に公有化した上で、国が一体的に施工することとし、2024年12月に護岸の本復旧に全面着工。2026年度中の可能な限り早期の工事完了を目指す。護岸復旧工事中であっても旅館営業の一部再開が可能。組合に加盟する21旅館のうち、2024年度に4旅館が一般客受け入れの営業を再開。2025年度に4旅館、2026年度に5旅館が営業再開を予定する。
和倉温泉の旅館再開状況(国土交通省/観光庁調べ、2025年4月12日時点)
◆2024年度中に一般客の受け入れ再開済み(4旅館) 花ごよみ、味な宿宝仙閣、湯の華、日本の宿のと楽
◆2025年度中に一般客の受け入れ再開、または再開予定(4旅館) TAOYA和倉、ホテル海望、はまづる、お宿すず花
◆2026年度以降、または未定(13旅館) おくだや、加賀屋、あえの風、虹と海、加賀屋別邸松乃碧、多田屋、ゆけむりの宿美湾荘、大正浪漫の宿渡月庵、能州いろは、宿守屋寿苑、白鷺の湯能登海舟、天空の宿大観荘、旅亭はまなす
能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業
観光庁は、能登半島地震で被害を受けた観光地全体の復興のために、「能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」を実施している。自治体、団体、事業者が一体となった復旧・復興計画の作成、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成などの取り組み17件を採択し、専門家の派遣などを含めて支援している。
主な採択事業の申請者、取り組み名は次の通り。
◎石川県観光連盟「能登半島地震復興ツーリズムに向けたコンテンツ造成事業」
◎ななお・なかのとDMO「Starting Over 第2次ななお・なかのと観光振興プラン作成事業」
◎和倉温泉創造的復興まちづくり推進協議会「和倉温泉観光再生推進支援事業~能登の里山里海をめぐるちからに~」
◎能登島地域づくり協議会「能登島観光産業プラットフォーム再整備事業」
◎輪島市観光協会「輪島温泉郷の災害復興促進プラン」
◎輪島市朝市組合「輪島市内仮設拠点での復興輪島朝市と出張輪島朝市による対外プロモーションとの連動による共感ツ-リズムの造成」
◎珠洲市「さいはての力 最先端の復興への挑戦」
◎志賀町観光協会「能登の未来を拓く:志賀町観光復興プラン~風評を乗り越え、『泊まれる』強みを活かす~」
◎穴水町観光物産協会「まいもんまつりを核とした飲食店賑わい復旧への取組」
和倉温泉創造的復興プラン
和倉温泉組合、七尾市、七尾商工会議所などからなる「和倉温泉創造的復興まちづくり推進協議会」(多田健太郎代表)は、2025年3月に「和倉温泉創造的復興プラン」をとりまとめた。
「復興プラン」に先立つ「復興ビジョン」に掲げたコンセプトは「能登の里山里海を”めぐるちから”に。和倉温泉」。「いのちがめぐり、人がめぐる能登の里山里海。自然の循環がもたらす恩恵と、人が集い行き交うことで生まれるちからと、和倉温泉の生業を共鳴させ、能登に暮らす人、働く人、訪れる人全てが幸せになれる和倉温泉を再生します」とした。「復興プラン」には、「景観」「生業」「共有」「連携」「生活」「安全」の基本方針に基づき、具体的な取り組みを掲げた。
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