
金子博美氏
滋賀DCの好機生かす 若者に魅力ある業界に
――5月20日付の就任ですが、どう受け止めていますか。
「いろいろな団体の役員などをやっていますので、時間的に責任をもって務められないと考え、いったんはお断りしたのですが、説得されました(笑い)。ただお引き受けする以上は精一杯務めさせていただきます」
――滋賀県旅組はもちろん、全旅連組織の中でも初の女性理事長ですね。
「女性であることは日ごろから全く意識していません」
――滋賀の魅力は。
「ほど良い都会・ほど良い田舎ということです。皆さん、滋賀は遠いというイメージを持たれているようですが、たとえば、JRおごと温泉駅は京都駅から20分ほどです。新幹線を使えば東京からもそう時間はかかりません。アクセスはとても良く、気軽に来れるところです」
「滋賀といえば琵琶湖。富士山と違って全体が見えないせいか、その大きさに実感がわかないようです。絶景スポットのびわ湖バレイ(大津市)に行っていただければ一望できますので、ぜひ訪れてください。また、船上から見る景色もいいですよ。個人的には県立琵琶湖博物館(草津市)もおすすめです」
――旅館・ホテルを取り巻く状況は。
「京都や大阪などはオーバーツーリズムといわれていますが、滋賀ではそういうことはありません。あまり盛り上がっていないのが実情です。もっと情報発信して、京都や大阪からお客さまを引っ張ってこられるよう、もっと魅力をアピールしなければなりません」
――大阪・関西万博が開幕しましたが、影響は出ていますか。
「関西エリアの人たちは万博に大きな関心をもち、何度も足を運んでいる人もいると聞きますが、関東エリアでは関心は薄く、盛り上がりに欠けます。関西にしても日帰り圏なので、いまのところ宿泊増に結びついていません。これから来場者も増えてくるといわれていますので、期待したいですね」
――27年秋に大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」が実施されます。
「27年ぶり、2回目の開催です。観光業界としては期待大ですね。プレ、本番、アフターと続きますので、滋賀の魅力をアピールする絶好のチャンスです」
「それにはわれわれ県民が魅力は何なのかということを意識して、外に向けてアピールしなければなりません。声を大にして言う習慣がないようです。言わなければ伝わりません。まずは観光業界の人たちが率先して声をあげることが大事です」
――25年度事業計画も決まりましたが、まず取り組むことは何でしょう。
「慢性的な人手不足の解消です。若い人たちの事業継承も含めて、この業界に入りたいと思っていただけるような魅力ある業界にしていきたい」
「修学旅行生を含めて、旅館よりもホテルを選ぶ傾向が強まっています。旅館に泊まらないため、魅力が分からず、就職先に結びつかないようです。旅館は日本の伝統文化の一つで、それに対する理解が乏しいと感じています」
「昨年、フランスで商談会を行ったのですが、サービス業は社会的地位の高い職業で、そこで働くことはステータスになると聞きました。日本もそうなればいいし、なるためにわれわれは努力しなければなりません」
――来年のNHK大河ドラマは「豊臣兄弟!」で、滋賀も舞台になる。
「主人公、豊臣秀長にゆかりのある長浜市などが舞台になります。来年2月から『北近江豊臣博覧会』が開催されるようです。『光る君へ』は大津市が舞台で客足も伸びましたので、豊臣兄弟!の波及効果を期待したいですね」
「また、来年は安土城築城450年で、彦根城の世界遺産登録の動きもあります。比叡山延暦寺の国宝・根本中堂大改修も進み、完成に近づきつつあります。話題には事欠かないので、全国に発信し、集客につなげたい。観光業界はもちろん、県民が足並みをそろえて滋賀の魅力を知ってもらう絶好の機会にしたいです」
かねこ・ひろみ 美術系の大学を卒業後、プロの画家として活躍。1996年に琵琶湖グランドホテル入社。副社長などを経て、2015年4月から社長。びわ湖観光協会副会長。滋賀県旅組では理事を経て、15年から副理事長。京都市出身、59歳。
【聞き手・内井高弘】
金子博美氏