
長野担当部長
新たな魅力を備えた北海道に
雄大な自然と独特の歴史文化を持つ北海道。民間研究機関の都道府県魅力度調査で16年連続1位に選ばれるなど魅力いっぱいの地域で、観光資源も多く、国内外からたくさんの人が訪れる。北海道の面積は、国土の22%を占める。道都「札幌」がある道央圏を中心に、サハリンを望む道北圏、津軽海峡を挟んで本州に接する道南圏、そして、北方領土や流氷の海に続く道東圏までと、非常に広い。
そこに全国最多の179市町村がある。それだけに地域の個性は豊かで、環境、SDGs、共生、防災などさまざまなテーマでの修学旅行が実施できる地域でもある。いま、新型コロナの影響を受けた修学旅行も、2019年前の状況にと回復しつつあり、北海道では、改めて官民一体となって、道外からの誘致拡大に向けて積極的な取り組みを進めている。
北海道観光機構誘致担当部長 長野 博樹さんのメッセージ
多様化する学習ニーズに応える
コロナが落ち着いて以降、明らかに修学旅行に変化が出ていることを実感しています。
学校における「総合的な学習」「総合的な探究」の時間の導入により、従来からの施設や体験に加え、より真の学びができるコンテンツを求める声が多くなっています。
石狩市で進めているGX学習はその代表例といえますが、DX、最先端産業、防災、減災、観光教育、共生などの幅広い視点での学習コンテンツが求められています。
5月に東京都の区立中学校生120人が来道しました。十勝地方で道外中学校の受け入れは初でしたが、更別村でAIを活用したスマート農業体験やスーパービレッジ構想について勉強。そのあと鹿追町の環境保存センターでSDGsやジオパークを学習、帯広畜大で学食体験などを行い、さらに、農業運動会への参加や然別湖の大自然を満喫するアクティビティも実施し、大変好評でした。
このように修学旅行は多様化しています。北海道は、それに応えるコンテンツづくりを進めています。修学旅行を通じ、「生きる力を育む」北海道で広がる未来への活力を得ていただければと思います。ぜひ、検討をお願いいたします。
長野担当部長
道外学校からの声
太田鋭一さん(埼玉県さいたま市立植水中学校長)
北海道での修学旅行はは4回目で、本校では定着しています。5月に北海道新幹線を利用し、2泊3日の日程で函館にまいりましたが、魅力は班別研修です。函館はコンパクトな街で、生徒が調べ歩くにも街を縦断する市電があって便利です。近代の歴史を学ぶコンテンツが豊富で、元町やベイエリアの雰囲気も非常にいい。郊外に出ると北海道らしい自然が広がっている。
生徒だけでなく保護者からの評判も高いので、今後、北海道への修学旅行は増えていくと思われます。
小川幸男さん(東京都大田区立羽田中学校長)
初めて北海道で実施しましたが、天候にも恵まれ充実した内容の修学旅行ができました。1日目は函館を見学。2日目から、各地に分かれファームスティを行いました。生徒の多くは1次産業体験が初めてで貴重な経験になり、大自然の中での活動は北海道ならではと感じました。
ファームスティ先で生徒4人が発熱。しかし、農協職員のサポートのおかげで全員揃って東京に戻ることができた。函館の美しい夜景と地元の温かい心遣い、生徒の記憶に深く残る修学旅行になったと思います。
充実する修学旅行誘致支援策
観光機構では、今年度の教育旅行活性化事業の中で説明会・相談会を拡充して開催するのをはじめ、地域の受け入れ態勢づくりや、来道校に対する支援などを強化。積極的な取り組みを進めており、活用を呼び掛けている。
【誘致宣伝】
〇説明会、相談会の開催
東京、大阪、宇都宮、仙台の4都市を予定
〇旅行会社や学校の訪問活動
【受け入れ態勢づくり】
〇コンテンツ開発など地域の受け入れ態勢づくりを促進
【来道校に対する支援】
〇事前下見の招待
来道予定校や検討中の学校の教職員の事前下見を支援する。特に来道が初めての学校の場合、受け入れ先の状況が分からず、不安があり、プランが立てづらい。
実際に現地や宿泊施設を見ることで安心して計画してもらえるよう、事前下見のサポートに力を入れている。
現地までの交通費と宿泊費を機構が負担する。
〇事前学習アドバイザーの派遣
北海道での修学旅行を予定している学校が実施する事前学習の際に専門講師の派遣を行う。講師費用は機構が負担する。
〇教育関係者の視察招待
道内各地の教育旅行コンテンツを実際に見てもらうため、全国の教育関係者を対象とした視察招待を行っている。交通費と宿泊費を機構が負担する。
各地の主な取り組み
こうした中で各地域では、観光機構や関係機関と連携協力し、地域の特色や強みを生かしたコンテンツ開発など教育旅行の受け入れ態勢づくりに注力。誘致拡大に向け積極的な取り組みを進めている。
各エリアの主な取り組みを紹介する。
■道央圏(石狩、後志、空知、胆振、日高地域)
人口約200万人の道都「札幌」を囲む政治経済の中心地で、各種産業や商業施設、文教施設、サービス業などが集積。
近郊には農地や海、森林が広がり、農業、酪農業、水産業のほか、大自然を生かした観光地も多いなどバラエティに富んでおり、それらの特徴を生かした多様なテーマでの学習ができる。
【自然や社会との共生を考える】
白老町=「ウポポイ」でのアイヌ文化体験プログラムなど
【災害復旧と防災を学ぶ】
厚真町、洞爺湖町、壮瞥町=噴火や地震災害からの復興や防災の取り組み
【再エネのまちづくりを学ぶ】
石狩市=洋上風力発電など再エネ活用の取り組み
【温暖化と環境問題を考える】
札幌市=SDGsの未来都市づくり
豊浦町=養殖現場から見る海洋環境など
■道南圏(渡島、桧山地域)
北海道の最南端に位置し、古くから北海道の玄関口として開発の歴史を紡いできたエリアで、幕末や開拓以前からのさまざまな史跡や文化が集積されている。
世界文化遺産に登録された縄文遺跡群、人気アニメの聖地、日本三大夜景、広がる大自然など盛りだくさんの魅力がある。
16年には、北海道新幹線が函館まで開通し、本州からのアクセスも向上。班別学習で巡れる場所が多く、さまざまな選択肢がある。
【縄文文化や幕末の歴史を学ぶ】
函館市、松前町=縄文遺跡や幕末史跡の探訪
【持続可能な観光地づくりを考える】
函館市、北斗市=班別学習による観光現場の課題研究
JRでの到着を出迎える(北斗市)
酪農体験を楽しんんだ(八雲町)
【自然や海洋環境を学ぶ】
七飯町、鹿部町=湖や海でのアクティビティ
■道東圏(十勝、釧路、根室、網走地域)
見渡す限りの農地と豊穣の海に面した広大なエリアで、北海道の耕地面積の22%を占める十勝平野の農業や酪農業では、先端技術の活用が進んでいる。
さらに世界自然遺産の知床半島、釧路湿原、阿寒湖、冬には流氷が押し寄せるオホーツク海など、自然環境と温暖化を考える絶好のフィールドでもある。
国際関係が注目される中、北方領土学習の問い合わせも増えている。
【先端技術の活用とSDGsを考える】
更別村、鹿追町=スマート農業やバイオマス発電など
湖でのカヌー体験(鹿追町)
全員で講話を聞く~たくさんの手が上がった(更別村)~
【宇宙産業への挑戦を学ぶ】
大樹町=宇宙ロケット開発や打ち上げ
【北方領土問題を学ぶ】
根室市、標津町、別海町、中標津町、羅臼町=講座や目で見る運動への参加
■道北圏(上川、留萌、宗谷地域)
日本列島の最北端に位置する雪の多いエリアで、離島もある。有数の農業、酪農地帯であるが、過疎対策が大きな課題でさまざまな取り組みを模索し、進めている。
また、ラムサール条約で登録された湿原があり、環境保全や海の環境維持にも力を入れている。
戦争で失った樺太との関係を学ぶ平和学習も可能である。
【環境保護を学ぶ】
釧路市、厚岸町=湿原保全やCO2対策など
【農都連携を考える】
東川町、豊富町=農泊や農業体験など
【アイヌの歴史文化を学ぶ】
旭川市=博物館や関係施設での交流など
◇ ◇
以上、北海道の修学旅行誘致の取り組みや各エリアの状況を紹介してきた。
北海道では他の都府県に見られない豊かな自然や歴史文化に加え、いま、新たな魅力が続々と生まれてきている。
179市町村、各地域、それらを含めそれぞれの特徴や強みを生かしたコンテンツづくりを進めている。言うまでもなく、修学旅行は学校生活の一番の思い出となる行事だ。
北海道での修学旅行を楽しみ、そして学び、考え、未来への力と希望を得ていただくことを心から期待したい。