
河口湖から富士を望む(山梨県)
食の多様性対応は、インバウンドの増加と共に、さらに多く求められるようになります。しかし、現実的には、インバウンドの増加とは裏腹に、宿泊業界、飲食業界、共に未曽有の人材不足の状況が続き、増え続けるインバウンドを受け入れるので精一杯の状況といえます。そのような中で、人材不足の解消のために増え続けているのが外国人労働者です。その中には、留学生などもいますが、日本に定住していく外国人が増えているのが現状です。
2025年5月27日の山梨放送の記事にも見られるように、山梨県富士河口湖町で外国人住民が10年で6倍に急増しています。富士河口湖町の最新の人口は、2025年5月1日現在で2万7085人なので、今年3月末時点で、外国人住民1145人で全体の4%ですが、今後さらに外国人観光客が増え続ければ、飲食店や宿泊施設での外国人対応もどんどん増えていきます。そうなると、さらに外国人材が増えていくと考えられます。
全国で「消滅可能性自治体」が急速に増える中で、富士河口湖町の人口は、令和2年(2020年)=2万6082人、平成27年(2015年)=2万5329人、平成22年(2010年)=2万5471人と近年、人口は増加傾向にあります。
そして、このように定住する人々の中にも当然さまざまな国の方がいて、さまざまな宗教や倫理観から食の多様性が求められるのです。
それ以外にも、河口湖町では、観光地としての礼拝のニーズや今後増えるムスリムの住民や長期滞在者向けに一般社団法人日本ハラール認定推進機構(JHCPO)が中心になり、富士河口湖モスク(Fuji Kawaguchiko Masjid)を2020年11月15日に設立、現在は、多くのムスリム観光客や地元で働く在日ムスリムも集まる場所となっています。
その他にも、草津温泉のあるホテルでは、インドネシアの従業員を採用し始めたら、口コミで多くのインドネシア人が新たな人材として集まり、インドネシア人従業員が増えて、周辺の施設でも同様な動きがあり、結果的にインドネシア人の人材が草津に増えていったそうです。そうなると、当然、多くがムスリムなので、まずは、彼らのための社員向けの食事の多様性対応から取り組む事例が出てきています。さらに、リビング・ムスリムのために、インドネシア人がハラールの食材を売る店を始めるという現象が出てきているそうです。
外国人観光客6千万人を目指すなら、まずは、インバウンド受け入れ人材の確保のための食の多様性対応が重要な一歩かもしれません。
(メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長)
河口湖から富士を望む(山梨県)
(観光経済新聞25年6月16日号掲載コラム)