
下呂温泉観光協会(岐阜県下呂市、瀧康洋会長)は4日、同温泉の水明館で通常総会を開催した。瀧会長が昨年度の宿泊者数や宿泊単価の実績値の報告、2025年度の注力事業について説明したほか、会員企業の観光功労者表彰・優良従業員表彰などが行われた。
瀧会長は冒頭、同協会が23年に先駆的DMOに選定されたことに言及。「まだまだ取り組みは道半ば。今年度も引き続き選定されているので、さらなる活性化に向けてしっかりと事業を進めていきたい」と意気込みを語った。
あいさつする瀧会長
続いて、24年度の宿泊者数や観光消費額、主な来訪者の特徴について説明した。
昨年度の宿泊者数は前年度比4.0%増の100万1852人で、特に鉄道や自家用車での来訪が前年度比12%増と好調。一方、バスでの来訪は同14.2%減となり、国内団体が回復していない現状を明らかにした。
消費額については、24年度の宿泊消費額が183億985万円、平均宿泊単価が1万8276円となり、いずれもコロナ前の19年度を上回った。ただ、平均宿泊単価は23年度比96%とわずかに下回っており、旅館の人手不足による1泊朝食付きのみや素泊まりのプランを増やしていることが影響しているとの見方を示した。
「周辺のコンビニなどに人があふれる状況が見られている。インバウンド、個人、団体のバランスをとることが地域活性化には大事だ。個人客だけを追いかけては単価が下がり、(旅館と周辺飲食店との間で)客の取り合いになりかねない。旅館だけが生き残ればよいという話ではない」と強調し、今年度は団体客の獲得も目指すと説明した。
同温泉を訪れる顧客層については、顧客データを用いて適切なプロモーションを図ったことにより、日本人旅行者では中部地方以外の遠方からの集客に成功。総計で昨年度比プラスになったことを報告した。インバウンドも、19年度で13カ国からの来訪が、24年度は31カ国に増加したと説明。下半期の閑散期である1月、2月にインバウンド集客に成功しており、今年度以降は上半期の閑散期である6月、7月の集客にも着手するとした。
瀧会長は、今年度の注力事業についても説明。同協会の公式サイト内にある「モデルコース」のページにAIを導入し、来訪者のニーズに対して適切なコースを提案できる仕組みを構築。品質や顧客満足度の向上に努める。今後も引き続き、同協会が幅広い層に対してプロモーションを実施し、各旅館が自館の規模に応じたターゲティング、プラン造成を進める体制を維持していくとした。
「最近は20代や関東在住者でリピーターの増加傾向が見られる。リピーターを確保しながら新規獲得を目指し、次は移住・定住にも目を向けていく」と交流人口の拡大、さらにその先のビジョンについても共有した。
総会では議事のほか、来賓あいさつ、新規加入会員の紹介、観光功労者・優良従業員表彰などが行われた。議事終了後には、熊本県人吉市で農泊レストランを運営する有限会社ひまわり亭の代表取締役・本田節氏が「観光と農泊連携の時代に向けて」と題した講演を行った。