
「やまなしフードダイバーシティ認証」に注目
政府目標である2030年の訪日客数6千万人、旅行消費額15兆円を受けて、2025年3月21日に農林水産省は、2030年までに訪日客の「食」関連消費額を現在の3倍となる4.5兆円にすると目標を掲げています。これは、少子高齢化で国内市場が縮小する中、海外需要を取り込むことで生産基盤を強化し、輸出拡大につなげる狙いがあります。
現在、コロナ前を超えて過去最高を記録し増加するインバウンドの外国人観光客への食の多様性対応を通じて、メイドインジャパンの食や食材、農作物、畜産物などの魅力や味を認知していただき、将来的には、世界中へ輸出を拡大していくというのが農林水産省の狙いであり、これは、まさに国だけでなく各地域の行政の将来的な向かうべき道と考えられます。
この中、一歩先をにらんだ取り組みをしているのが山梨県です。昨年私が支援させていただき実施したのが「やまなしフードダイバーシティ認証」(https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sk/yfdc.html)事業です。
なぜなら、山梨県は、観光GDPでは、沖縄に次ぐ2位、昨年度の都道府県別訪問者数(出典:インバウンド消費動向調査)では、8位と上位に付けていますが、消費額でいうと下から数えた方が早いのです。
これには、当然、東京からの日帰り圏内で、宿泊しないなどさまざまな要因はありますが、その中で、観光消費額を上げるためには、飲食店、宿泊施設、お土産における食の多様性対応を普及させることで、山梨県を訪問先として選んでいただける、リピートしていただける地域の魅力づくりや消費を拡大するために事業者が取り組む環境づくりとして、観光庁が提唱する情報開示型対応からハラール、ベジタリアン、ヴィーガンなどの国際レベルの認証まで取り込んだ行政独自の認証基準を策定して、事業者を募りました。
当初は、20事業者が目標でしたが、結果は31事業者(延べ57認証)となり、大きな一歩となりました。全国的にも、ムスリムフレンドリー、ベジタリアン・ヴィーガンフレンドリーからハラール、ベジタリアン、ヴィーガン認証までを包含して認証し、発信している取り組みは、日本初といえます。
まさに、食の多様性対応でも「山梨モデル」として、全国に広がれば食の消費額4.5兆円への道標になると考えられます。まさに日本のインバウンドからつながるアウトバウンドの未来です。
(メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長)
「やまなしフードダイバーシティ認証」に注目
(観光経済新聞25年5月19日号掲載コラム)