
雄大な自然、風光明媚な景色、レジャースポット、寺社仏閣、グルメ…観光客を呼び込む方策はさまざま。生き物もその一つだろう。たとえば、パンダ。愛らしい姿を一目見ようと、遠くから足を運ぶ観光客も少なくない。
しかし、ご存じのように日本からパンダがいなくなる日が刻一刻と迫っている。パンダファンにとっては悲報だが、パンダに依存していた観光地にとっても痛手となりそうだ。
現在、日本にいるパンダは東京・上野公園の双子パンダ、シャオシャオとレイレイの2頭、そして和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャ―ワールド(AW)」にいる良浜(らうひん)、結浜(ゆいひん)、彩浜(さいひん)、楓浜(ふうひん)の4頭。
このうち、AWの4頭は6月ごろに中国に返還される。1994年から日中双方で取り組んできたジャイアントパンダ保護共同プロジェクトの契約が今年8月に満了するためだとか。
上野動物園の2頭も来年2月ごろには返還されそうだ。中国と新たな貸与協定を結べばいいのだろうが、年間で1頭当たり50万から100万ドルとされるレンタル料やエサ代などもばかにならず、また、「中国にそれだけの大金を払うメリットはあるのか」「パンダ外交に振り回されるのもどうか」という指摘もある。
筆者も過去にAWを訪れたことがあり、その時はパンダの数ももっと多かったような気がする。熱心なパンダファンではないが、確かに愛らしい。白浜町を訪れる観光客の訪問目的としてパンダを挙げる人も少なくないと聞く。
パンダ返還のニュースが流れてからは、今のうちに見ておこうと思うのか、駆け込み需要でAWの人出、宿泊施設の予約も増えたようだ。パンダがいなくなった7月以降の客足がどう変化するのか、気がかりでもある。
ピンチをチャンスに。パンダ依存から脱却し、多くの人に支持される観光地になるかどうか、観光関係者、自治体、住民らの覚悟が問われているといったら大袈裟か。大江康弘町長は一般紙の取材で「パンダがいなくても楽しめる観光を整備したい」と話している。
白浜町は温泉もあり、海水浴で有名な白良浜などもある。AWには120種・1600頭ほどの動物がいる。パンダ以外に魅力的な動物も多い。それらを生かす方策を探ってほしい。
白浜エリアの観光客(24年速報値)は年間約301万人、うち宿泊客は約172万人、日帰り客は約129万人となっている。
パンダがいなくなった影響は大きいが…