
毎年1月開催のスペイン最大の旅行博FITURの日本ブース
2024年の訪日スペイン人数は過去最高の18万2284人、対前年比57・3%増と欧州重点市場(※)で最大増加率となった。昨年のイベリア航空による日本―スペイン間の直行便再開は10月下旬であり、1年の大半が直行便のなかった状況において、アクセスの悪さを上回る旺盛な訪日需要があったと言える。
オンライン旅行予約サイト大手KAYAKの発表によると、スペインにおける2025年夏の航空券検索数は東京行きが第1位、対前年比の検索増加率では大阪行きが第1位となった。1月にマドリードで開催された国際旅行博FITURにおいてJNTOが実施した旅行会社向けアンケートでは、2025年の訪日旅行の販売予測で回答者の80%が2024年よりも増加すると答えており、さまざまな調査結果から2025年も当面は訪日旅行人気が続くものと見込まれている。そのような中、今後の訪日旅行のトレンドがどうなっていくのか二つのキーワードを紹介したい。
(1)子連れ家族層・シニア層
2024年のスペイン市場における変化の一つに訪日旅行者の裾野の拡大がある。従来、日本はハネムーンをはじめとする夫婦・カップル層に人気の旅行先であったが、旅行会社によるヒアリングや事務所での問い合わせにおいて、子連れ家族層・シニア層の顕著な増加が見られている。子連れ家族層は長期的な日本ファンの育成、時間に余裕のあるシニア層は訪日時期分散という点でも有望であり、今後の一層の拡大が期待される。
(2)地方×自然
前述のFITURにおける旅行会社向けアンケートにおいて最近の顧客の訪日旅行動向の変化を質問したところ、日本での自然体験やアウトドアを要望する顧客が増えたという回答が最も多くなった。また、旅行会社向けの「顧客からの要望が多い観光地」、一般消費者向けアンケートの「将来旅行したい観光地」に関する質問では、ゴールデンルートの次に沖縄、北海道といった自然豊かな観光地が共通して上位にあがった。近年の訪日旅行ブームによりスペインにおける訪日経験者が年々増えていく中で、今後リピーターや長期旅行者層にとっては地方×自然という組み合わせがますます注目を集めると考えられる。
これらを踏まえつつ誘客で重要なのは「スペイン語での情報発信」である。ある意味当然だが、英語に苦手意識を持つスペイン人にとって、スペイン語での情報発信は特に重要な意味を持つ。現状スペイン語で情報発信している自治体や観光施設は圧倒的に少ないからこそ他社と差別化できるチャンスと言える。その上で、トレンドにあるような「子連れでの楽しみ方」「自然を楽しめるオススメの周辺観光地」などニーズに沿った情報も補足できると一層効果的である。スペイン市場にご関心のある方はお気軽にJNTOにご連絡いただきたい。
※特殊情勢下にあるロシア市場を除く。本来、JNTOにおける欧州の重点市場は、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、ロシアの7市場。
毎年1月開催のスペイン最大の旅行博FITURの日本ブース
(観光経済新聞2025年5月30日号掲載コラム)