ヨーロッパ中のホテルは、Booking.comに対する集団訴訟に参加し、数十億ユーロの過払い手数料を取り戻すよう奨励されています。
このアクションは、Booking.comの本社があるオランダで開始され、Stichting Hotel Claim Allianceと呼ばれるオランダの財団を通じて調整されています。ブリュッセルに本拠を置く法律事務所Schneider Geiwitz & Partner（SGP）のパートナーであるVolker Soyezを含む、競争損害賠償請求の分野での経験を持つ弁護士とエコノミストの汎ヨーロッパチームによって追求されています。
この訴訟は、2024年9月に欧州司法裁判所（ECJ）がBooking.comと25hours、Dorint、Steigenbergerを含む63の個々のドイツのホテルおよびグループとの間の長期にわたる事件の判決を受けて開始されました。この事件は、オンライン旅行代理店（OTA）とホテル経営者の間の契約におけるいわゆるパリティ条項の合法性を中心に展開しています。
「パリティ条項（Parity Clause）」とは、ホテルなどの供給事業者が、自社公式サイトや他の販売チャネルで提示する価格・条件を、OTA（オンライン旅行代理店）に提供する価格・条件と同等（またはそれ以上）にすることを義務づける契約条項のこと。
Booking.comが2006年にドイツ市場に参入したとき、それはホテル経営者のための利用規約に「幅広いパリティ」条項として知られているものを含み、Booking.comが独自の販売チャネルまたは他のOTAを通じてBooking.comで提供されているものよりも低い料金を提供することを禁止しました。
HRSが関与した2013年の事件で、ドイツの連邦カルテル局は、広範なパリティ条項はカルテルに関するドイツおよび欧州連合の法律に反すると判断した。2015年、Booking.comは、広いパリティ条項を「狭いパリティ “narrow parity”」条項に置き換え、ホテルが独自のチャネルでより低い料金を提供することを禁止しました。連邦カルテル事務所はその後、これはドイツとEUの競争法にも反すると判断した。
最新の集団訴訟は、欧州ホスピタリティ協会Hotrecによって支持されており、ECJは「プラットフォームのパリティ条項がEU競争法に違反していると判断した」と主張しています。
「ヨーロッパのホテル経営者は長い間、不公平な条件と高騰したコストに耐えてきました。今が一緒に立ち、救済を求める時です。この集団行動は強いメッセージを送ります。デジタル市場における虐待行為は、異議を唱えられないことはありません」とHotrecの Alexandros Vassilikos 社長は述べています。
PhocusWireへのメールで、Booking.comの広報担当者はHotrecの声明を「不正確で誤解を招く」と言っています。
「ECJの判決は、Booking.comの価格パリティ条項が反競争的であったり、競争に影響を与えたりしたと結論づけませんでした（これは判決のパラグラフ92で明確にわかります）。したがって、この判決は損害賠償請求への扉を開くものではなく、必要に応じて、平等条項が法廷で反競争的効果を持たないことを示し続けます」とこのスポークスマンは言いました。
行動を起こす Taking action
SGPのSoyezは、2024年9月の判決により、状況がより鋭く焦点を当てたと述べた。「ECJが判決を下したとき、私たちのホテル全体、ヨーロッパ中の人々は、これがドイツだけの問題ではなく、ヨーロッパのすべてのホテルに影響を与えるものであることに気付きました」とSoyezは言いました。
彼は、ホテル経営者は何かをすることに熱心であるが、彼らが一人で行くと報復を恐れていると付け加えた。「大規模なホテルチェーンは、このケースに資金を提供することをいとわないが、小規模なホテルには資金がありません。さまざまな規模の多数のホテルと話をした後、すべての費用とコストリスクをカバーする資金提供者を配置することが決定されました」とSoyezは言いました。
Soyezは、この訴訟に関わった総額は、過払い手数料で数十億ユーロに達する可能性があると述べた。「参加するホテルの数にもよりますが、ドイツの場合、約2,000のホテルが参加しており、請求額は利息なしで7億5,000万ユーロです」と彼は言いました。アクションへの参加を希望するホテルやグループは、7月31日までに請求に参加する必要があります。彼らは、彼らがどのように組み込まれたかの詳細と、Booking.comから受け取った請求書が必要になります。そして、行動はEUのホテルだけに限ったものではありません。
「アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインを含む欧州経済地域のホテルだけでなく、英国とスイスも参加できます」とSoyezは言いました。
同社（Booking Holdings）は2024年に237億ドルの収益を上げ、2023年から29.3%増加しました。
Booking.comは、2024年第4四半期の財務諸表で、「同社は、Booking.comと宿泊施設プロバイダーとの契約上のパリティの取り決めが反競争的であるかどうかに関する調査に関与しています。なぜなら、Booking.comは、少なくとも他の[OTA]またはパートナー自身によって提供されるものと同じくらい有利な料金、条件、可用性をBooking.comに提供する必要があるからです。特定のパリティ関連の調査を解決するために、パリティ条項の範囲を狭めることに同意するなど、将来のビジネス慣行や活動に関して随時約束しています。これらの調査の一部は罰金を科せられ、追加の罰金を科せられたり、将来の特定のビジネス慣行が制限されたりする可能性があります」と述べている。
古いニュース？ Old News?
GuestCentricのCEOであるPedro Colaçoは、このケースは「過去の亡霊がよみがえったようだ」と述べた。「20年前にさかのぼると、人々はこれらの行動が本当に反競争的であると考えていると不平を言っていました」と彼は言いました。「ホテル業界は、すでに前に進んでいる」とColaçoは言いました。「健全な販売チャネルのバランスに集中する必要があります。私は、直販戦略を強化し、適切な技術基盤を整え、価格戦略を最適化し、新しいGoogleツールをどう活用するかを考えるべきです。今回の件は、数百万ユーロの損害賠償問題になるか、数百万ユーロの時間とリソーシスを浪費させる混乱になるか、私の意見では、より後者の可能性が高いようです」と彼は言いました。
問題は、Booking.comが行動にどのように反応するか、そして和解金を交渉するかどうかです。
Colaçoは、「Booking.comは、リスティング料金やプロモーション料金、およびあらゆる種類の新しい料金を思いつくでしょう。そして、その体型はさらに不透明になるでしょう。大手ホテルチェーンならば、自分が何にいくらを費やしているかを正確に知っています。中小のホテルはそうではない。彼らは『Booking.comは安くて便利』だと勘違いし、ますます依存してしまう。結局、なにも解決されない。」
Soyezは、「Bookingは、非常に難しい状況にあります。70%の市場シェアを持つ市場支配的な企業であるため、彼らが何をするにしても、規制当局によって非常に綿密に精査されます。」
Soyezは、この行動がExpediaなどの市場の他のOTAにまで及ぶことを期待していません。「状況は違う」と彼は言った。「Expediaの市場シェアは10〜15%であり、競争法の観点から決定的な違いを生むため、このケースを他のポータルに拡大することを検討していません。」
ホスピタリティ技術者でデジタルストラテジストのMax Strakovは、ヨーロッパにおけるBooking.comの優位性がこれほどまでに支配的になったのは、ホテル経営者自身の責任だと述べた。
「これらの訴訟は、あなたがおいしい食事をしたレストランに『高すぎる』と文句を言って訴えるようなものです」と彼は言いました。
「独自の直接流通チャネルを固定し、テクノロジー、マーケティング、人材に投資する代わりに、ホテル経営者はOTAという怠け者の販売手法に頼ってきた。そして今になって」、彼らはOTA流通が高すぎると文句を言うのか？
ホテル経営者は、OTAと契約した時点で、OTA流通のコストを知っていたはずだ。」
Strakovは、ヨーロッパのホテル経営者（そのうち60%が独立している）はテクノロジー投資に消極的だと考えている。「彼らは、テクノロジー、マーケティング、人材に十分な投資をしていません。CRM（顧客関係管理システム]とある種のゲスト報酬プログラムを持っているのは10%未満で、収益管理システムを持っているのは15%未満です。ウェブサイトは、パンデミック前のから更新されておらず、SEOという言葉すら知らない。AIO [人工知能最適化]—冗談でしょう？」
「Booking.comがヨーロッパでこのような優位性を獲得したのも不思議ではありません」と彼は付け加えました。
【記事提供：業界研究 世界の旅行産業】
