【観光経済新聞創刊75周年特集】観光経済新聞100年への提言 日本秘湯を守る会名誉会長・佐藤好億氏


佐藤好億氏

佐藤好億氏

 創刊100年に向け、本紙の進むべき道とは何か。長年本紙と深く関わられてきた識者や経営者、これからを担う経営者に、本紙に期待する、果たすべき役割について、提言を頂いた。

宿の心に耳を傾けた心ある記事を

 日本秘湯を守る会は今年4月、創立50周年を迎えました。昭和50年4月、朝日旅行の前身である朝日旅行会の創業者、故・岩木一二三氏の提唱により、深山にかろうじて湯の明かりを灯す小さな温泉宿33軒が集まって創立されました。

 昭和40年代、高度成長期の真っただ中、大阪万博をきっかけに旅行ブームが起きました。旅行者は観光バスに乗って温泉地、観光地に押し寄せ、多くの宿が鉄筋コンクリートの大型施設へと姿を変えました。観光・旅行業界が大きく”発展”した時代でした。 

 このような時代に岩木氏は「今の状況は本来の旅の姿ではない。人間性を置き忘れている。旅の本質を見失っている。何時の日か人間性の回復を求め、郷愁の念に駆られ山の小さな温泉宿に心の故郷を求め、本当の旅人が戻ってくる。旅らしい旅が求められる時代が来る」と訴え、会の創設を提唱しました。

 岩木氏は会員の宿を訪れると、周囲の木々や草花の名を宿の主人に問い、それに答えられないと、「山の宿の主が、自分の宿の周りのことを知らないというのは何事か」と指摘するなど、秘湯の宿のあるべき姿を説いてまわりました。会の基本理念は「旅人の心に添う 秘湯は人なり」です。旅人に感動と心のやすらぎをもたらし、また訪れたいと思っていただくことです。

 岩木氏の遺した言葉を次世代に受け継ごうと、創立50周年を機に、『岩木一二三語録』を発刊しました。巻頭には「発刊に寄せて」として、観光経済新聞社の積田朋子社長に文章をご寄稿いただきました。岩木氏が観光経済新聞社の前社長、故・江口恒明氏と交流があり、旅や宿についてたびたび語り合っていたご縁からお願いしました。

 その寄稿で観光経済新聞社の積田社長は「次世代につなぐということは何事においても難しい」「宿の皆さまと共に、これからの時代を歩んでいきたい」と記しております。時代が大きく移り変わる中、宿の在り方も、新聞社の在り方も変わっていくと思います。しかし、変えてはいけないものがあるはずです。

 宿も、新聞社も、情勢や流行に惑わされ、時代に合わせて経済効率だけを求めれば、心は薄っぺらなものになっていきます。これからの時代をどう生きるのか。己だけが良ければよいという社会は駄目です。岩木氏が語り続けたのは、「人はなぜ旅に出るのか、宿はどうあるべきか、考え続けろ」ということだったと思います。観光経済新聞社にはこれからも、宿と地域の声に耳を傾け、旅と観光の在り方を問い続ける、心のある記事を期待します。

佐藤好億氏
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