英国サセックス侯爵・ヘンリー王子
持続可能な旅行と観光へのコミットメント
トリップドットコム（Trip.com）グル―プは5月26日、グローバルカンファレンス「ENVISION.2025」を上海国際コンベンションセンターで開いた。世界74ヵ国から宿泊施設を中心としたサプライヤー（取引先）3,100人が出席。その12％は日本からの参加者だった。スペシャルゲストとして英国サセックス侯爵・ヘンリー王子も出席し、基調講演を行った。
ヘンリー王子は2019年に持続可能な観光を推進する団体「トラバリスト（Travalyst）」を設立。旅行による環境負荷の低減、地域社会への貢献、観光の持続可能性を追求することを目的にトリップドットコムやスカイスキャナーなどのグローバルOTAらと連携して活動を行っている。
ヘンリー王子は「トリップドットコム・グループのミッションステートメントである『より良い世界のために完璧な旅行を追求すること』は、トラバリストが掲げる『持続可能な旅行と観光へのコミットメント』と合致しています。昨年世界の国際観光客数は23年比11％増の14億人を記録しました。この上昇傾向は25年も続くと予測されています。APAC（アジア太平洋地域）全体では、観光客の80％が25年は24年よりも旅行を増やしたいと回答しています。この地域からの旅行は今年34％の増加が見込まれており、APACは世界をリードする旅行市場という地位を固めつつあります。ここ中国では観光は1.3兆米ドルの規模を持つ産業です」と指摘。世界の旅行市場におけるAPACの重要性を強調した。
その上で「旅行業界には地域社会を保護するという共通の責任があります。なぜなら地域社会がなければ観光は存在しないからです。観光業界の80％は自然と密接に関連しています。全員が依存している自然の富へのコミュニティを保護し、維持し、よりサスティナブルな業界を構築しなければなりません」と語り、トラバリストの取り組みへの参加を呼びかけた。
英国サセックス侯爵・ヘンリー王子
トラベルとイノベーション
トリップドットコム・グループのジェームズ・リャン会長は、「トラベル（旅行）とイノベーション（革新）」と題して講演し、次のように述べた。
「私たち人類が前進するために最も重要な活動は、トラベル、イノベーション、そしてクリエイション（創造）です。イノベーションには効率のためのイノベーション、サスティナビリティのためのイノベーション、ユニークな体験のためのイノベーションがあります。過去2年間でAIは大きく進化しました。トリップドットコムグループもAIエンジンを活用してユーザーの利便性、顧客サービス、マーケティングを進展させています。また、トリップドットコム・グループは、観光分野におけるイノベーションを加速化するため、年間100万米ドルの賞金を用意して『観光イノベーションアワード』を立ち上げました」
ジェームズ・リャン会長
パートナーと共に回復、成長
ジェーン・スンCEOは「Powering Growth with Shared Resilience（共有された回復力による成長スピードの促進)」と題して次のように講演した。
「国連統計によると国際旅行はコロナ禍前と比較して100％回復しています。観光・旅行は世界で3億５千万人以上の雇用を創出しています。私たちトリップドットコム・グループもここにご来場のパートナーの皆さまと共に懸命に努力し、GMV（流通取引総額）1700億米ドルを達成することができました。当社の主なOTA事業はパンデミック時の水準を30％以上上回っています。査証政策は緩和されています。今後もより多くのパートナーさまとの強固な連携により、グローバルに顧客をご紹介できるように、そしてより多くの観光客が中国を訪れていただけるように努力していきます」
「観光産業はAIを活用することで、GDPよりも高い成長率を実現できると思います。観光業界は継続的に成長することができます。中国には『1万冊の本を読むよりも、1万の道を歩き、1万の景色を見る方がよい』ということわざがあります。観光を欲することは人間の本能なのです。ビジネスの成功にはチームの皆さまの力が不可欠です。私たちは、チーム、パートナーの皆さまと苦しい時期を一緒に乗り越えることができました。これからも共に成長していきましょう」
ジェーン・スンCEO
【上海＝kankokeizai.com 編集長 江口英一】
