【口福のおすそわけ 550】お台場で味わう、土佐のごちそう~その2~ 竹内美樹


 「グランドニッコー 東京台場」の「鉄板焼 銀杏」でいただいた、「高知コース」の続き。高知県が漁獲量西日本一のキンメダイを、川上健朗シェフが目の前で焼いて下さる。ジューッという音もごちそうだ。仕上がりは皮目パリパリ♪ 添えられたのは、高知県特産ゆず入りみそ、同じく特産品四方竹の蒸し焼き、そして緑鮮やかな甘長唐辛子と真っ赤な「徳谷(とくたに)トマト」。

 四方竹(しほうちく)は切り口が四角形だからこの名が付いたという。秋に生える珍しいタケノコで、採れる時期が1カ月ほどと短い上傷みやすく、全国には流通していなかった。だが、地元農家が開発した加工法で、今は通年全国で食べられるようになった。

 フルーツトマトの元祖徳谷トマトは、1970年同県に上陸した土佐湾台風がキッカケで誕生。土佐湾沿岸ではちょうど満潮と重なり高潮が発生。その支湾の一つ、浦戸湾北部の徳谷地区でも堤防が決壊し、畑に海水が流れ込み、土壌に塩分が残ってしまったらしい。

 農作物は塩分に弱いが、諦めずにトマトを育てたところ、奇跡的に驚くほど糖度が高いトマトができた。さらに研究を重ね、うま味と甘味を凝縮させた結果、一般的なトマトの糖度が平均4~6なのに対し、13を超えることもあるとか。

 同地区には十数軒のトマト農家があるが、それぞれ栽培法も品種も味も違うため、生産者番号が割り当てられている。いただいたのは一番人気の52番。通常は90日ほどで収穫されるが、150日もかけて収穫するそうだ。火を通すことで甘味が増し、超ベリウマ♪

 お次は「土佐あかうしと四万十麦酒牛(しまんとびーるぎゅう)のサーロイン食べ比べ」。幻の和牛と称される「土佐あかうし」。実は筆者、嶺北地域本山町で、土佐あかうしの繁殖から肥育、出荷まで手掛ける細川茂幸氏の牧場を訪ねたことが。牛舎で肥育されていたのは、高知県でしか生産されていない褐毛和種(あかげわしゅ)高知系。

 全国に産地が点在する熊本系あか牛は全身褐色の「一毛(ひとけ)」だが、高知系は目の周りや鼻、蹄(ひづめ)や角、尻尾(しっぽ)の先などが黒い「毛分(けわ)け」だ。足腰が丈夫で放牧に適しているので、近年問題となっている中山間地の耕作放棄地対策にも役立つ。残念ながら、飼養頭数約2500頭、年間出荷量は5~600頭で、全国の和牛のわずか0.1%と少ない。

 うま味の素アミノ酸の含有量が豊富で。赤身の味が濃い。黒毛和種より脂の融点が低く、オレイン酸も多いため、大変口どけが良い。

 麦酒牛は、ビール粕に糖蜜やビール酵母などを配合し、乳酸発酵させた飼料を食べさせ、30カ月長期飼育した黒毛和種。奇麗に入ったサシの甘ウマさが特徴。こちらも希少で、四万十町の鈴木牧場が出荷する年間150~180頭のみ。

 肉質を際立たせる調味料は、同県室戸岬沖の海洋深層水から作った天日塩「龍宮のしほ」。その粒から甘味さえ感じる塩をつければ、どちらもうま味爆弾が押し寄せ、甲乙つけ難い。食べ比べられて口福♪

 続く驚きの締めのご飯は、次号をお楽しみに!

※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。


(観光経済新聞2025年4月28日号掲載コラム)

 
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