株式会社エイチ・アイ・エスは12日、2025年10月期において特別損失45億円を計上したと発表した。トルコ事業の縮小や欧州などでの収益性低下が主な要因。一方、再発防止策としてコンプライアンス強化も完了したと報告した。
特別損失の内訳と業績への影響
エイチ・アイ・エス(HIS)は12月12日、2025年10月期(2024年11月1日〜2025年10月31日)の決算において、連結で減損損失27億7200万円、事業整理損17億5200万円の特別損失を計上したと発表した。
減損損失は、当社グループが保有する事業用資産およびのれんにおいて「当初予定していた収益が見込めなくなったため、帳簿価額を回収可能価額まで減額することとした」ことによるもの。また事業整理損は、連結子会社であるHIS ULUSLARARASI TURIZM SEYAHAT ACENTASI LIMITED SIRKETIの事業縮小に伴う特別退職金や、非連結子会社であるFLY HUB TRAVEL PTE. LTD.の事業縮小に関連した債権放棄費用によるものだ。
個別決算では「関係会社株式評価損」21億7100万円を計上。これはトルコ法人の事業縮小等に伴うものと説明している。
減損対象は国内外の複数施設
今回、減損損失を計上した主な資産は、国内外に広がるホテル事業や旅行事業の資産だ。H.I.S.ホテルホールディングス株式会社の事業用資産(建物他)に12億9700万円、グアムのGUAM REEF HOTEL, INC.の事業用資産(無形固定資産他)に7億9700万円など、合計6件で27億7200万円の減損を実施した。
収益回復への期待
HISの連結業績は売上高3731億6百万円(前期比8.7%増)、営業利益116億27百万円(同7.1%増)、経常利益113億81百万円(同8.9%増)と増収増益となった一方、親会社株主に帰属する当期純利益は47億19百万円(同45.9%減)となり、特別損失の影響で大幅減益となった。
2026年10月期の連結業績予想については、「雇用・所得環境の改善や各種政策の効果等もあり、個人消費の持ち直しが見られ、業績は回復基調で推移する見込み」とし、売上高4200億円(前期比12.6%増)、営業利益140億円(同20.4%増)、経常利益140億円(同23.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益90億円(同90.7%増)を見込んでいる。
コンプライアンス強化に向けた取り組み完了
同社は同日、雇用調整助成金等の不正・不適正受給問題を受けた再発防止策の実施についても報告。「コンプライアンス意識の醸成」「グループガバナンスの強化」「公的助成金の申請における内部統制の見直し」「労務管理の徹底」「内部通報制度の周知及び活用の促進」「内部監査体制の見直し」の6項目の取り組みを完了したことを明らかにした。
特に内部通報制度については、「9月に実施したコンプライアンス意識調査では、信頼度の向上が確認できております」と効果を強調。「今後も内部通報制度の活用促進により、問題の未然防止、早期発見、対応に繋げてまいります」としている。
今回の対応について同社は「当社グループは今回の事案発生を深く反省し、再発防止策を実行することで、グループガバナンスの高度化と内部統制の再構築を図ってまいりました」と総括。「引き続きステークホルダーの皆様からの信頼回復に努めてまいります」と結んだ。
配当については、今期の年間配当金を1株当たり20円(中間配当10円、期末配当10円)とする予定。次期は1株当たり25円の年間配当を計画している。




