【VOICE】「共同創造型観光」の実現を目指して 一般社団法人志賀町観光協会 事務局長 岡本明希氏


岡本氏

スマホで示す「復興物語」

 石川県志賀町は、奥能登の玄関口。能登半島の真ん中に位置し、2005年に旧志賀・旧富来町が合併し誕生した町です。今年、合併20年を迎えることができました。

 人口約1万8千人の「里山里海」に囲まれ自然・食・人が豊かな町で、能登を代表する景勝地「巌門」をはじめ、夫婦岩である機具岩(はたごいわ)、北前船の寄港地で、日本遺産に登録されている「福浦港」、日本最古の「福浦灯台」、世界一長いベンチなど観光資源が豊富な町でもあります。

 そんな町を一瞬に変えてしまったのが2024年元日に発生した能登半島地震。最大震度7という未曽有の経験をしました。

 私も自宅が全壊となり、当時は何も考えることができず、1日を何とか過ごしてきたことを忘れることができません。そんな私たちを前向きな気持ちに変えてくれたのは全国からのご支援と励まし、ボランティア活動を通じてつながる縁でした。私は、それを機に観光協会の一員として地域に寄り添い、暮らしと観光がともに持続する未来を描きながら日々取り組みを進めています。

 いま志賀町では観光の灯りが少しずつ戻りつつあります。しかし被災地に必要なのは、単に元に戻す復旧ではなく、震災を経験した地域だからこそ生まれる新しい価値をどう育てていくかという視点です。

 宿泊業や観光事業者は大きな被害を受けましたが、復興の過程で観光客の意識は変化し、「この町を応援したい」という思いを持って訪れる人が増えています。観光が地域課題の解決に寄り添う時代へ移行したことを強く感じます。私たちが取り組みを進める”共同創造型の観光”は、地域資源を再発見し、地元住民自らが地域の未来を形づくる取り組みです。

 その一つが「『復興物語』~スマホの記録~」です。スマートフォンに残る発災直後の写真をもとに一人一人を取材、コラムにしました。それらは復興の軌跡であり、観光が再び動き出すまでの地域の歩みそのものです。スマホに残る一枚一枚は、地域が前へ進む確かな証です。観光は単なる経済活動ではなく、人と文化と記憶が未来へつなぐ力をもっています。

 これからも私は観光の現場に寄り添い、志賀町の復興と再生に全力で取り組んでいきたいと考えています。さらに今後は、地域住民の声をより丁寧に拾い上げ、体験プログラムや観光導線の改善に反映させることで、来訪者と地域が互いに学び合い、支え合う仕組みをつくっていく。震災の経験を糧に、志賀町は人が復興する町「選ばれる地域」へと成長していく未来を、地域の皆さんとともに必ず実現したいと思います。


岡本氏

 
 
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