国土交通省は9日、国土交通白書を発表した。2部構成のうち特定のテーマについて課題や施策を報告する第1部では、7月の北海道洞爺湖サミットを踏まえ、地球温暖化問題を取り上げた。温室効果ガス排出量の削減に向け、旅客輸送をはじめ分野別に対策などを掲げた。また、国土交通行政全般の動向を解説する第2部では、07年度に実施した事業の成果、今後の施策の展開などを紹介している。
第1部は、「進行する地球温暖化とわたしたちのくらし」がタイトル。地球温暖化の現状と予測、生活への影響を踏まえ、運輸、住宅・建築、都市・地域づくりの各分野で課題や取り組みを報告している。
旅客輸送では、1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量の増加を問題視した。04年度の排出量は、都道府県別の試算によると00年度に比べて全国平均で約38%増加。都市圏より地方圏の増加が大きい傾向にある。
地方圏の排出量増加は、自家用乗用車の保有台数が増え、公共交通機関の利用が減少していることが主な要因。生活圏の郊外化、人口減少に伴う運輸事業者の不採算路線の廃止なども影響している。
こうした現状に対して白書は、「環境負荷の小さい交通体系を構築するためには、自家用乗用車から公共交通機関へのシフトを促す必要がある」と指摘した。地域経済の活性化の観点からも公共交通機関の利便性向上を重視。富山市が導入した次世代型路面電車システム(LRT)などを先進事例に挙げ、地域の実状に即した交通体系の整備の必要性を訴えた。
温暖化に対する国土交通行政の中長期的な対策は、昨年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」に沿って取り組む。大幅な省エネやCO2排出削減につながる革新的技術の開発、地域づくりと交通システム構築を通じた低炭素社会づくりを進める方針を示した。
一方、第2部では、国土交通行政の各分野の状況や政策を説明。観光に関しては、「観光立国の実現と美しい国づくり」と題した章で触れた。VJCでは、中国、韓国の訪日旅行者数の伸びなどを踏まえ、今後は、満足度の向上を通じたリピーター化を促進する施策を展開していく。