官民で生産性向上へ、観光庁が全国でセミナー


観光庁主催の生産性向上セミナー(5日、東京都内で)

 宿泊業の生産性向上が、国の経済政策において重要課題の一つに挙がっている。政府は先月、「生産性向上国民運動推進協議会」を首相官邸で開き、宿泊業を含む10分野の業界団体に対策の強化を要請。観光庁や日本旅館協会も近年、宿泊業向けの生産性向上に関するセミナーなどを相次いで開催し、取り組み手法や成功事例の普及に努めている。人手不足への対応、宿泊業の競争力強化に向けて、官民を挙げた施策の展開が急務となっている。

 5日、観光庁主催の「宿泊業の生産性向上に関するセミナー」が東京都内で開かれ、中小規模の旅館・ホテルの経営者や幹部約50人が参加した。講師を務めた一の湯本館(神奈川・塔ノ沢温泉)社長の小川晴也氏が、人時生産性(従業員1人1時間当たりの粗利益)に着目した取り組みを紹介。天城荘(静岡・大滝温泉)女将の田中智与氏は、人材をフル活用した経営再建の体験を語った。

 セミナーの冒頭、観光庁観光産業課観光人材政策室の川村康二室長は「日本のサービス業の生産性は、国際的に比較すると低い水準にある。機械化、IT化、AI化などの合理化も進まず、労働時間も長い。成功事例などの情報共有、水平展開により、みんなで生産性を向上させていきたい」と語った。同様のセミナーは、今月20日までに福岡、大阪、名古屋、札幌でも開かれる。

 セミナーに先立つ2月15日、政府は、生産性向上国民運動推進協議会を開催。安倍晋三首相が「現在の日本経済にとって、人手不足を解消し、生産性を高め、潜在成長率を引き上げていくことが最大の課題。人手不足の解決にはさまざまな対策を多面的に進めていくが、基本は生産性の向上だ」と述べ、官民を挙げた取り組みに意欲を示した。

 宿泊業では、日本旅館協会が官邸での協議会に継続的に参加し、生産性向上に取り組んでいる。同協会の針谷了会長は、2月21日に都内で開かれた展示会のセミナーで、「生産性を高めれば、労働時間を短縮でき、顧客ニーズに応えたサービスの向上が可能になる。給与などの待遇改善が進み、優秀な人材を確保できる。こうした好循環が重要。旅館経営を科学し、カイゼン活動を積み重ねるしかない」と訴えた。翌日には同協会主催でカイゼン活動に関するセミナーを開催した。

 宿泊業の生産性の底上げには、取り組み手法の普及、成功事例の共有が課題。観光庁ではこれまでにセミナーやインターネットを活用したeラーニング講座の開催、カイゼン事例をまとめた冊子や映像の作成などの施策を実施。観光庁は、2018年度予算案にも宿泊施設の生産性向上事業を盛り込んでいる。

 関係省庁も、宿泊業を含む中小サービス業の生産性向上の支援、官民連携に関して態勢を構築。経済産業省を事務局に「中小サービス等生産性戦略プラットフォーム」が2月16日に発足した。日本旅館協会をはじめ業界団体、経済団体などが参加。IT化の補助金など国による直接支援に加え、生産性向上に関する情報・成果共有に官民を挙げて全国規模で取り組む。

 
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