地震後の受入準備は万端 台湾観光庁 長官 周永暉氏に聞く


台湾観光庁 長官 周永暉氏

日本からの激励に感謝 “応援割”で風評被害払拭へ

 4月11日に東京都内で旅行業界向けに開いた「台湾観光アップデートセミナー」で約50人の代表団を率いて来日した台湾観光庁の周永暉長官に地震の影響などを聞いた。

 ――4月3日に台湾東部・花蓮沖で地震が発生しました。

 「地震発生後間もなく、日本の皆さまから連日、言葉ではお伝えできないほど、多くのお見舞いと温かい激励のメッセージをいただき、感謝と感動で日々熱い思いでいっぱいになっている」

 ――現在の復旧状況、観光への影響は。

 「台湾政府では、被災者への救済支援や、被災地の復旧作業を国家の最優先事項として進め、地震被害を最小限に抑えるべく活動を続けている。台湾東部・花蓮の被災地域では復旧作業が急ピッチで行われており、地震発生からわずか1日で鉄道を復旧させた。花蓮と宜蘭を結ぶ道路の蘇花公路にある下清水橋の修復も3日間で完了している。中横公路に関しては7日間で代替路を整備した。国内の各主要空港、港湾、鉄道、高速鉄道(新幹線)、市街のMRT(都市鉄道)などは現在平常通りに運行し、人々は震災前と変わらない日常を過ごしている」

 ――風評被害はありますか。

 「日本の報道を通じて、あたかも台湾全土が広く被災したのではないかと誤解する人も少なくないと聞いている。台北をはじめ、各地の観光や観光施設においては被害も少なく、安全であることが報告として届いており、日本の皆さまに安心してご滞在いただける環境だ。今回、台湾各地からこのように観光代表団が来日できていることが、それを証明している」

 「日本の皆さまにお伝えしたいのは、迅速な対応と強靭(きょうじん)な回復力を世界に示した台湾は、既に準備万端であるということ。安心して旅行を楽しんでいただける台湾に、日本の旅行者が訪れていただけることを心から歓迎いたします」

 ――地震で被災して現在閉鎖中の太魯閣(タロコ)国家公園の復旧の見通しはどうですか。

 「国家公園として再び観光客を受け入れられる状況になるかは、救援活動が一段落し、崩落等の状況を綿密に調査し、安全確認が完了してからとなる。景観地区である国家公園には最優先で安全性が求められるからだ。再開が決定したら、まずは台湾国内客に向けて“応援割”を設けて誘客を図る計画だ。6~7月ごろに設定できればと考えている。国内客が訪れる様子を、メディア等を通じて海外の方々にも見ていただき、復活と安全性をPRしていきたい」

 ――昨年9月15日に台湾政府の組織改編により、台湾観光局(交通部観光局)は台湾観光庁(交通部観光署)に昇格しました。具体的には何が変わりましたか。

 「局から庁への昇格によって観光予算が増えた。今はAIの時代だが、観光DXの推進に多額の予算を振り分けることも可能になった。また台湾の22の県と市の政府の傘下にある観光部門を統合した。それぞれの観光圏として一元化することで横の連携も含めて持続可能な施策がとりやすくなった。また最重要市場の一つである日本についても、東京と大阪の事務所の人員を拡充している」

 ――コロナ禍前と比較して、日本人観光客の受け入れ状況はどうですか。

 「2023年の外国人訪台旅行者数は延べ648万6951人を数え、台湾観光庁が23年の年初に掲げた600万人の目標を達成した。日本からの台湾渡航者数も22年の約10.6倍となる92万8235人となり、右肩上がりで回復傾向にある。ただ、訪台日本旅客はコロナ禍前の19年は216万7952人だったので、23年の19年比での回復率は42.8%にとどまっている。一方、訪日台湾旅客は19年が491万1681人、23年が422万5804人で、回復率は86%となっている。台湾人は日本が大好きで、他のどの国よりも日本を訪れたがる。訪問客数の相互バランスが取れるようになると良いと思っている」

 ――観光業界においてもSDGsやサスティナビリティはポピュラーなテーマです。周長官は台湾鉄路管理局局長を経て2016年に台湾観光局局長に就任されたわけですが、鉄道旅行はサステナブルツーリズムの分野で人気がありますね。

 「SDGsへの取り組みとして、台湾でのロハスな滞在や自然を体験しながら、鉄道や自転車を組み合わせた環境に優しい低炭素なデュアルレールツアー(両鉄旅行)を国際観光地としての受け入れ環境が整っている景勝区をベースに推奨している。台日同名32駅プロモーションも展開する」

【聞き手・江口英一】

台湾観光局 長官 周 永暉氏

 

 
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