内閣府はこのほど、地域経済に関する年1回の報告書「地域の経済」をまとめた。地域経済に大きな変化をもたらしつつある「インバウンド需要の拡大」と「人手不足問題」の二つに焦点を当てて分析。インバウンドは、一部の地域に需要が偏る現状を指摘した上で、全国に分散させるために、地域固有の魅力を積極的に発信するとともに、それらを生かした宿泊施設の整備や特産品の開発を行うことが重要とした。
報告書では、訪日外国人旅行者数や旅行消費額、延べ宿泊者数が南関東、近畿に圧倒的に偏っている現状を改めて示した。
2017年の都道府県別外国人旅行者の延べ宿泊者数上位(5位まで)は東京都、大阪府、北海道、京都府、沖縄県。この5都道府県を「成熟圏」、それ以外の42県を「潜在成長圏」とし、観光庁のデータをもとに現状を分析した。結果、旅行者の5割、宿泊者数の6割、消費額の7割以上を成熟圏で占めていることが明らかになった。
報告書では、「地域の活性化にインバウンド需要が資するためには、より多くの地域にその需要を呼び込んでいくことが不可欠」と指摘。インバウンド需要のすそ野を拡大させるための施策を提言した。
訪日外国人客を、潜在成長圏を旅行した「潜在成長圏旅行者」と、成熟圏のみを旅行した「成熟圏旅行者」に分け、その行動パターンを分析。行動で潜在成長圏旅行者の実施率が成熟圏旅行者の実施率を上回ったのは「旅館に宿泊」(潜在成長圏27.5%、成熟圏18.5%)、「温泉入浴」(36.9%、19.0%)、「自然・景勝地観光」(62.1%、53.7%)などだった。
これらの結果から、「潜在成長圏旅行者においては、自然や温泉といったその旅行先でしか体験できないようなコト消費を目当てに訪問しているということができる」と指摘。
「インバウンド需要のすそ野を拡大するには、それぞれの地域がその土地固有の自然環境や景勝、温泉資源等の魅力を積極的に発信するとともに、それを生かした宿泊施設の整備や特産品の開発を行っていくことが重要」とした。
もう一つのテーマ、地域の「人手不足問題」については、「特にサービス業を中心とした非製造業における人手不足感はより深刻」と改めて指摘。
克服する方策として、女性や高齢者などの「潜在的な労働力」、さらには外国人の労働参加を促すことや、生産性の向上が不可欠とした。