【VOICE】旅行者の真のニーズ読み解く JTB総合研究所 主席研究員 濱中 茂氏


JTB総合研究所 主席研究員 濱中 茂氏

観光関連産業としての情報提供のあり方

 インターネットの進化によって、人々は簡単に多くの情報を手に入れられるようになりました。ここのところ話題のChat GPTなどのAIを使えば、単に情報を得るだけでなく、自分の疑問に答えてもらったり、分からないことのサポートをしてもらったりすることすら可能です。

 そのような時代にあって、私たち観光関連産業は旅行者へどんな情報提供をしたらよいのでしょうか。旅行を通じ、より豊かな時間や体験を提供するために、何が必要でしょうか。

 旅行の際に人々が得ようとする情報として、訪問先への行き方や営業時間、料金、宿泊施設の設備、天気予報などがあります。これらは、いわゆる事実そのものです。単に事実を伝えるだけなら、ホームページや紙面等に掲載すれば事足ります。しかし、観光関連産業としてより価値の高い情報を提供するには、旅行者が自分で調べれば出てくるような「情報」に加え、接客するスタッフが持つ知恵や経験などを加味してアウトプットする「知識」が強く求められます。言い換えれば、旅行者自身が理解しきれていない真のニーズを読み解き、よりパーソナライズ化された情報を提供することが付加価値の創出につながるということです。

 これは、ソムリエの役割に似ています。優秀なソムリエは、ただお客さまの要望をお伺いしてワインを提供するのではなく、会話の中でお客さまの体調を把握し、ワインの背後にある物語や製造プロセスを語ったり、天候を加味したりしながら、その瞬間に最適なワインを提案します。同様に、観光関連産業でも旅行者との対話の中から潜在的なニーズを引き出し、適切な情報提供を行うことで、より高い満足度につなげられるのです。

 弊社が行った調査では、熟年層よりも若い世代の方が、旅行会社などの店舗の利用意向が高いことが分かっています。旅行経験の乏しさもあり、旅行へ行くための背中を押してほしいというニーズが読み解けます。行動制限を求められたコロナ禍により、学生時代の旅行機会が減少したことで、まさにこのニーズが高まっている可能性もあります。

 お客さま自身も気づいていない潜在的なニーズに対応し、より付加価値の高い情報を提供するためには、スタッフが常に新しい情報をインプットし、提供する情報の質の向上やアップデートができる環境づくりも重要です。私たち観光関連産業は、旅行者により高いレベルの満足感を提供できる、奥深く幅広い事業に携わっているのだ、という意識を醸成することが、その第一歩と言えるでしょう。

 
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