【KNT-CTパートナーズ会総会特集 特別鼎談】KNT-CTホールディングス 瓜生修一社長 × KNT-CTパートナーズ会 堀 泰則会長 × クラブツーリズム 酒井 博社長


「共生と共創」の精神でともに発展を

 KNT-CTパートナーズ会(KCP会、約4千会員)の通常総会が5月29日、東京・白金台のシェラトン都ホテル東京で開催される。KCP会の堀泰則会長(ひだホテルプラザ)と近畿日本ツーリストの瓜生修一社長、クラブツーリズムの酒井博社長の鼎談(ていだん)を通して、アフターコロナ時代のグループの在り方を語っていただいた。(4月中旬、東京・西新宿のKNT-CTホールディングス本社で。司会は観光経済新聞 論説委員の内井高弘)

コロナ禍が収束 「共生と共創」の精神でともに発展を

 ――コロナ禍も収束し、国内の旅行市場も活発になっている。

瓜生 まず、グループ全体で、元日に起こった能登半島地震で被災された方々、宿泊施設をはじめとする関係機関の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。早期復興できるよう、KCP会と力を合わせて施策を展開し、全力で支援していきます。

昨年5月の「5類」移行後、人の動きが目に見えて良くなってきた。株高と賃上げなどによる個人消費の後押しにより、国内旅行者の心理が旅行に向かい、国内旅行事業全般への追い風を感じている。当社は教育旅行が主たるビジネスの一つだが、コロナ禍前の状態に戻ってきている。インバウンドも円安もあって、非常に好調だ。

近畿日本ツーリスト社長 瓜生修一氏

 

 ――懸念材料は。

瓜生 人手不足、オーバーツーリズムによるエリア満足度の低下、交通機関・宿泊施設の予約困難に加え、旅行・宿泊単価の高騰などが挙げられる。特に人手不足は深刻。「2024問題」もあり、観光バス業界は綱渡りの状態で、秋以降の修学旅行シーズンに向けて仕入れのお願いをさせていただいているが、このままではツアーが成り立たないのではという危機感をもっている。ホールディングス全体で取り組んでいく課題だ。

酒井 2024年度の受注に関しては、国内旅行はコロナ前と同水準、海外は昨年の2倍以上で推移している。旅行購買マインドは回復基調にある。顕著なのはひとり旅の増加で、男女に限らない。また、テーマ型旅行も好調で、目的意識を持った旅行の強さを改めて感じている。当社にとってこの傾向は追い風となる。

クラブツーリズム社長 酒井 博氏

 

 ――シニア層を主要ターゲットに展開しているが、変化といえば。

酒井 団塊世代のお客さまが75歳以上の後期高齢者になる。75歳を過ぎると体力も落ち、ツアーに参加する回数が減る傾向にあるため、新たな層をどう開拓するかという局面を迎えている。一方で「ゆったり旅」など、後期高齢者向けの新たな旅行形態も並行して展開している。

 瓜生社長もお話しされましたが、能登半島地震で被災されました会員施設に対してお見舞い申し上げ、一日も早く復興していただくことを心から祈念いたします。

旅行スタイルは趣味や自己実現を体現するものへと変化し、団体から個人へのシフトはますます強まっている。KNTの国内団体の主力である教育旅行は、少子化の中でボリュームは若干減っていくだろうが、基盤として強いものがあると認識している。インバウンドは完全に戻ってきた。これからはいかに地方に足を延ばしていただくかだ。春の高山祭では18万8千人ぐらいのお客さまに来ていただいたが、その半分ほどが外国人で、特に欧米人が目立った。

KNT-CTパートナーズ会 会長 堀泰則氏

 

 ――旅行者の意識変化を感じているか。

瓜生 一番大きいのは予約の仕方で、飛び込みのお客さまが少なくなっている。旅行に出ることを前提に予約をされるので成約率も上がっている。店頭側もじっくりと応対でき、お客さまに満足していただいている。

酒井 コロナ前まではあまり売れなかった商品が売れるようになった。1カ所、もしくは2カ所に3連泊以上して、終日自由行動もある長期滞在型の「暮らすような旅」という商品があるが、コロナ禍になって花が咲いた。

 

23年度の業績と今後の事業展開

 ――23年度の業績は。

瓜生 年間の目標は予定通りクリアできた。過大請求問題もあり、皆さまの信頼を損なってしまったが、受託案件の継続、新規受注もあり、業績をけん引した。引き続き信頼回復に努めたい。

 

 ――印象に残っている出来事は。

瓜生 昨年5月のG7広島サミット、福岡での世界水泳、そして東京マラソン。特に東京マラソンは過去最大の取り扱いとなり、数値を積み上げる原動力となった。インバウンドは宿泊商品を海外に販売するシステムからの売り上げが増大し、飛ぶように売れた。

酒井 営業利益ベースでほぼ計画値に近い状況だった。下期は能登半島地震の影響も受けたが、海外旅行でカバーした。

国内旅行では22年度から取り組んでいる「旅.smart」の成長が大きな収穫。行程に自由時間や選択肢を多く持たせた45~65歳のミドルエイジをターゲットにした商品だが、利便性と自由度のほどよい組み合わせが受け入れられた。

 

 ――KCP会は23年度、どんな活動を。

 過大請求問題を受け、本部総会・連合会総会を書面総会に変更。全国交流事業も中止したが、24年度は北陸エリアの応援を兼ね、10月に芦原温泉(福井県あわら市)で開催する予定だ。

女性文化講座を東京で開き、24会員に参加いただいた。50回の歴史ある活動だが、今回を持っていったん休止し、新たな活動を模索していく。

5委員会(未来創造、インバウンド、ウェブ、教育旅行、プロジェクト)は会社と連携を取りながら課題解決の提案を行った。そのほか、新しく「全国教育旅行担当者商談会」を2月に開催し、352人が出席した。宿泊・運輸・観光施設の会員と教育旅行担当者とのマッチングにより、活発な商談会となった。今年度も滋賀県大津市で開催を予定している。

 

 ――24年度の事業展開をうかがいたい。

瓜生 信頼回復を第一に事業活動を進めていく。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に関してはコロナ禍の収束もあり、事業そのものがなくなる。今後は本業を中心に数字を作っていかねばならない。

一つは好調なインバウンド。観光振興に関わる地域共創事業も含めクラブツーリズムとも連携して、同社の企画力と発信力、そしてKNTの営業力それぞれの強みを掛け合わせてシナジーを最大化していく。

また、今年はオリンピックイヤー(パリ五輪、7月26日~8月11日)でもあるので、五輪・パラリンピックへの取り組みを強化する。5月17~25日に神戸で開催される世界パラ陸上競技選手権大会も取り扱っており、必ず成功させる。このほか、地方開催を含めたマラソンなどのスポーツ事業も引き続き強化する。

教育旅行事業では探究学習をテーマに創造的な教育プログラムコンテンツを随時発信していくとともに、PTAや部活動の受託事業など先駆的な教育周辺事業の取り組みを強化することで新たな需要を掘り起こす。

酒井 一つは目的型の旅行商品のラインアップをさらに充実、強化する。「どこに行くか」ではなく、「何をするか」が重要。歴史や登山などのいわゆるテーマ型旅行の拡大は当然のこと。それ以外の商品においても秘湯巡りや美術館巡りといった明確な目的を持った商品が増えてきており、講師やナビゲーター付きのツアーを強化していく。

二つ目は着地型商品の強化。実際、着地型になっている商品も多数あって、例えば登山や写真撮影のツアーなどはすでに3割ぐらいは発地のお客さまではない。

行き先ではなく目的から入ると自ずと着地型となるため、目的型旅行商品の強化とも連動してくる。

三つ目は先ほどいった旅スマートの強化。反応も良く、さらに伸ばしたい。四つ目はインバウンド対応。いま取り組んでいるのは当社のホームページを、AI(人工知能)を使い多言語化すること。夏ごろをめどにまず英語、繁体語でスタートする。

 まず事業活動の根幹は連合会、支部活動が中心であることを強調しておきたい。

会社の事業構造改革に沿って、会社と「共生・共創」しながら団体旅行、個人旅行を問わず、域内交流はもとより、インバウンドも含めた全国各地への誘客、送客を展開していく。今まで以上にお客さまに安心・安全なサービス、おもてなしを提供しながら、持続可能な新しい旅行スタイルを会社とともに創っていく。

特に地域共創事業については、会員の皆さんは地域のオピニオンリーダーであるので、観光協会や自治体ともしっかりとタッグを組み、その成果、情報をKNT、クラブツーリズムにつなぎ、一緒に作り上げていく。
また、会社主催の新たな全国キャンペーン「とびだせ いざ!にっぽん旅キャンペーン」を成功させること。

このほか、(1)社員現地研修、商談会、情報連絡員会議などは宿泊、運輸、観光の3部会の会員で協力、連携して実施(2)現地最新情報の発信と共有(3)旅丸会との連携―に取り組む。

 

全国キャンペーン 成功必須

――全国キャンペーンへの意気込みは。

瓜生 九州・沖縄キャンペーンは4月からスタートしているが、数字はまだ思ったところまで来ていない。全社会議で全ての箇所長にげきを飛ばす(笑い)。KCP会の皆さまの期待に添えるよう結果を出していく。
酒井 目標達成はもちろんだが、期間中にどういう新しいコンテンツを生み出すかも大事だ。

瓜生 キャンペーン後を見据えた対応も重要。次につながる商品を造成していく。

 九州・沖縄、北海道の後は、復興を支援する北陸キャンペーンも実施していく予定。復興の協力は惜しまない。

 

 ――KCP会が発足して5年がたつ。

 そのうちの3年間はコロナの影響で全く活動できなかった。まさしく「空白の3年間」だ。新しいKCP会を立ち上げるという意識で今後に臨みたい。ただ、この5年間で連帯意識はより強まったと思う。「共生・共創」の精神でやっていくことに変わりはない。

 

――連合会の再編も新たな一歩となるのだろうか。

 25年度から現在の12連合会から8連合会に再編する。KNTの組織に沿っているので、支社との連携は十分取れると判断している。エリアごとのテーマをしっかり決めて対応していく。

 

――両社にとってKCP会はどんな存在なのか。関係強化に向け、何が必要だろう。

瓜生 堀会長が常にお話しされている通り、KNT―CTホールディングスとKCP会は「共生・共創」の関係を深掘りし、ウィン・ウィンの関係を築くこと。その前提として、われわれがきちんとお客さまを送る。口だけでなく行動で示すことが肝要だ。そのためには、地元のいろいろな情報を会員の皆さんからご提供いただき、それを仕込んで送客に結びつける。

当社の強みを生かした教育旅行、一般団体、MICE案件などの団体販売、さらに団体営業をフックにしたクーポンコードの導入などを活用し、皆さんとの送客強化を図っていくとともに、近畿日本ツーリストブループラネットのダイナミックパッケージ商品、中核都市以上の拠点に残したリアル店舗による顧客密着型の店頭販売の再強化を引き続き行っていく。

酒井 KCP会はともに価値を生み出す重要な仲間と捉えている。先ほど述べた目的型旅行(テーマ型旅行)、着地型旅行を推進するには現地の知見や情報が欠かせない。各地域ならではの「旅に訪れる目的づくり」をこれからもともに進めていきたい。

コロナ禍の3年間、一番つらかったのは会員の皆さんとのリレーションが取れなくなり、疎遠になってしまったこと。これは大きなマイナス。まずはその距離、物理的・精神的なものを含めて縮める。その中でコンテンツの磨き上げというのが出てくるのではないか。そこに期待をしている。

ただ、お客さまの目的は多様化、深化している。お客さまの嗜好を細かく共有し、それにお応えできるコンテンツを日々磨き上げていきましょう。

 

――会員からも要望が出ていると思うが。

 関係強化のための、生の声と受け止めていただきたい。

事業構造改革により、支部内に店舗がなくなり、活動が制限されるようになった。自治体案件についても県内に店舗がないため、エントリーできない案件が発生している(2)仕入部門の人員減で、仕入活動・情報収集に支障を来す懸念がある(3)コロナ禍で現地出張が制限されていた中、大きく現地環境が変化しているので、現地研修などを早急に進めてほしい―などだ。

 

――OTAが台頭し、旅行環境も大きく変化している。総合旅行業として生き残るには何が必要だと。

瓜生 クラブツーリズムやブループラネットを合わせれば総合旅行業といえるかもしれないが、近畿日本ツーリストとしては総合旅行業という意識はない。団体旅行であっても、個人旅行であっても「ホスピタリティ&ソリューションカンパニー」として、お客さまにご満足いただけるサービスを提供できる企業でありたいと考えている。

旅行形態の変化は認識しているが、お客さまと真摯(しんし)に対峙(たいじ)し、ご要望にしっかりと応えていくことで満足のいく旅行を作り上げていくことがOTAとの差別化になると思う。個人旅行でいえば、店舗での接客もそうだし、コールセンター、さらにはその道のプロと接するアバター(オンライン画面接客)なども差別化の一つとなる。

さらには、当社の強みである、社会や企業の要請に応えるソリューション営業を基本に、国内外のスポーツ大会やMICE事業などを手掛けられることは、OTAでは決してできないビジネスだ。

酒井 余暇産業という観点からすると、競合はOTAのみならず多岐にわたる。その中でクラブツーリズムとしては単に旅行商品を売って利益を上げるのではなく、お客さまの人生に寄り添い、LTV(顧客生涯価値)を上げていく考え方に転換していかなければならない。

当社のお客さまは周遊型旅行でパックツアーの利便性を知り、健康不安からハイキングツアーに移るといった、多様なカスタマージャーニーをたどられる。

当社としては、そうしたカスタマージャーニーにお応えできる商品の品ぞろえ整備と、お客さまの余暇時間が豊かなものとなるようお手伝いすべく、旅行業・旅行外事業の垣根のないマーケティング活動に注力していく。

 

――会員に向けメッセージをお願いしたい。

瓜生 長い歴史の中で、KNTとともに歩んできていただいた、まさにパートナー。コロナ禍という非常に厳しい環境の中で、ともに苦労してきた。ようやく長いトンネルを抜け、今後さらなる関係強化を図り、共存共栄を図っていきましょう。

酒井 あまり難しく考えず、小さなことからでもいいので、一緒になって何かを生み出していきましょう。クラブツーリズムにはKCP会のお力添えで大きくなった地域イベントが多数存在する。その地域イベント一つ一つは当初はとても小さいものだったが、KCP会とともに改良を重ねて大きく育ったイベントもある。

そういう意味では小さな情報でもともに意見を交換し合い、まずやってみるの繰り返しで地域のコンテンツ開発能力は高まっていく。今後もKCP会の皆さんと一緒に地域を盛り上げていきましょう。

 先ほども触れたが、活動の根幹は連合会・支部活動であり、自治体が今後持続可能な観光地域づくりを進める中、地域の価値を高める観光コンテンツづくりが必要になってくる。会社とKCP会がこのミッションに強力なタッグを組んで、地域の活性化を進めたい。

24年度がKCP会とKNT―CTホールディングスグループにとって新しい一歩となることを祈念する。会社とともに「共生・共創」しながら、新しい旅行スタイルを創っていきたい。

瓜生 最後に一言。近畿日本ツーリストは来年で創業70周年を迎える。当社がここまで来られたのはKCP会のご支援のたまものだと厚く御礼申し上げ、この関係を末永く続けていきたい。

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