【口福のおすそわけ 502】天空のレストラン~後編~ 竹内美樹


 前回に続き、東京湾を一望できる天空のレストランでいただいた、宮城県産食材を使った特別コースについて。冷温それぞれの前菜の後に登場したのは、「仙台曲がりネギと伊豆沼ベーコンのポタージュ」。

 「仙台曲がりネギ」とは、宮城県仙台市の伝統野菜。ある程度育ったら、一度掘り起こし、寝かせるように植え直す「やとい」という栽培法で育てた長ネギだ。ネギは上に向かって伸びようとするので、必然的に曲がる。その際のストレスと、時間をかけて育てることで、甘みが増すという。

 そのネギと、東北最大の低地湖沼「伊豆沼」のほとりで飼育された豚のベーコンを掛け合わせた、見事な逸品。スープ皿のリム部分に載せた揚げネギとカリカリベーコンを、スープに混ぜて完成する。コレは酒飲みにもうれしい味わいだ。

 続く魚料理は、「三陸産平目の酒かす漬けグリル デリシャストマトのコンフィ 海藻バターソース」。国内屈指の漁獲高を誇る、三陸産の平目。ほんのり香る酒かすが、そのうまみを増幅させる。同じく三陸名産のワカメが香るバターソースとのハーモニーは、最高♪ 栽培が難しいことから幻のトマトと呼ばれる、宮城県大崎市産「デリシャストマト」のコンフィが、彩りと味わいに華を添える。

 お次はメインの肉料理、「仙台牛フィレ肉と牛タンのグリル味噌(みそ)南蛮ソース」。良質な稲わらをぜいたくに食べることで、奇麗な霜降り肉になるという仙台牛。それを名乗れるのは、黒毛和種のA5またはB5ランクに限られる。ブランド牛の中でも、肉質等級が5しか認められていないのは、日本で唯一仙台牛のみ。この格付け最高ランクの牛を生み出せるのは、丁寧に育てているから。農家1戸あたりの飼養頭数の全国平均は61・9頭だが、宮城県は28・4頭と少ない。1頭ずつ、手間暇かけて肥育されているのが分かる。

 フィレ肉なのにたくさんサシが入り、とろける味わい。牛タンのグリルもムチャうま♪ 仙台名物牛タン焼きの付け合わせとして定番の、青唐辛子を味噌に漬け込んだ「味噌南蛮」のソースが、うまみを際立たせる。アクセントに添えられた黒ニンニクの風味と甘みも、良い仕事をしていた。

 デザートは「ずんだのパルフェ 赤シソのジュレ」。同県郷土菓子ずんだ餅の、枝豆をすり潰したずんだ餡(あん)のパルフェだ。枝豆の緑と赤シソの赤のコントラストが、絵画のよう。スッと口の中で溶け、甘すぎず絶妙な味わいであった。

 コースには、2合分の「ひとめぼれ」がお土産に付く。農薬や化学肥料をできるだけ減らした「環境保全米」発祥の登米市産。宮城県は「ササニシキ」誕生の地として有名だが、実は「ひとめぼれ」も同県で生まれた品種。翌日炊いてみたが、粒立ちが良くうまみもあり、香り高く、超美味♪

 宮城県の食材って、こんなにバラエティ豊かだったんだ! それを教えてくれた「グランドニッコー東京 台場」の天空のレストラン。口福なひと時に感謝。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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