【ちょっと よろしいですか 130】土着の宿をつくりたい 山崎まゆみ


 「この『夜のとばり』(静寂が保たれた部屋)で玉露を飲んでいただき、甘さから入って、シャンパンでのど越しを良くして、それから食事、という流れがいいんです」。夕食前にお目にかかると、趣味人らしいことをおっしゃる栃木県那須温泉「山水閣」「別邸回」の片岡孝夫社長。スタイリッシュな方です。

 旅館経営者のカリスマとして知られる有馬温泉「御所坊」金井啓修社長から「注目の経営者」として片岡社長の名前を聞いて以来、お話を聞いてみたいと思っていました。「栃木、那須を表現したい。歴史、文化、風土を踏襲し樹木のようにこの地から生えてきたような土着の宿にしたい」「宿は地域のショールームですから」と、ご自身が思索した言葉の数々で語られます。また「宿は五つの要素が必要。ロケーション、ハード、ソフト、フード、スパ。これらでストーリーを紡ぐ」という提唱を、自身が経営する宿で見事に具現化しています。宿の土壁は土地の粘土を用い、石壁は土地の石を砕いたもの。客室の石組みの壁面は、片岡社長とスタッフで石を組み上げました。宿を作るにあたり、切った樹木は設えで生かしています。

 私が宿泊した「別邸回」の客室で言えば、明かりは全て手作りで、那須のクラフトワークの職人さんと共に制作。石造りの洗面台の心地いい肌触りは、那須町の石材屋さんの技。室内にある3本脚の椅子の座面部分に貼ってあるのは、硬さと丈夫さが特徴の栃木が誇る「栃木レザー」ブランド。なお、温泉は引湯しているという点で個性が出しにくいので、浴場に地元の建材を使う。湯船は那須町で採掘される芦野石でした。少しグレーがかった石は、各地で湯船に用いられますね。片岡社長は「表現する」という言葉を度々口にされますが、まさに栃木県を那須を凝縮させたショールームです。

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