【ちょっと よろしいですか 125】地域の方に自信と誇りを 山崎まゆみ


 明けましておめでとうございます。旧年は本連載をご愛読いただきまして誠にありがとうございました。地方出張に出かけるたびに「コラムを読んでます」と声をかけていただくことがとても多く、それがどれほど私の活力になっていることでしょう。同時に観光業界のオピニオン紙としての観光経済新聞の力も思い知ります。本年も、現場で懸命に汗を流す皆さんのお役に立てるように、言葉を尽くして連載を書いてまいりますので、ご高覧いただけましたら幸いです。

 2023年を振り返ると、あの煩わしかったコロナがどこへ行ったのかと思うほど、首都圏をはじめとする大都市では以前の日常が戻ってきました。ただ、地方はまだ宴会が開催されないなど、コロナがもたらす産業界への後遺症のような事象をよく耳にし、胸が痛むことがまだ続いています。

 外国人観光客が2019年ごろの人数まで回復してきた中で、大きな課題は働く人、労働力の確保でしょうか。

 さる12月9日に九州運輸局主催で学生さんに向けて「女性のための宿泊業セミナー」が開催されました。現場で生き生きと働く3人の女性が登壇し、私はファシリテーターを務めました。学生さんからは「キャリアバランス」などの質問があり、登壇者から、子育てしながら旅館で働く時間の使い方の工夫などが語られました。また、仕事の全てが接客ではないので、人が好きというタイプだけが求められているわけでは決してないという回答も。

 セミナー終了後、参加した学生さんから「ホテルはキツいと聞いていたけれど、宿泊産業の明るい未来を聞けて、安心した」という声をいただけたので安堵(あんど)しました。

 宿泊業における人材不足は深刻です。もちろん速やかな待遇改善も求められますが、即応は難しいでしょう。それならば、宿泊産業に興味を持ってくれる人たちに、現場で働くリアルな姿を示すことも、一つの策だと感じました。

 さて話題は変わりますが、内閣府が新しく立ち上げた会議体「クールジャパン・アカデミアフォーラム」に参画することになりました。各省庁で有識者として仕事をする先生方が一堂に会し、地域活性化のためにアカデミックな視点からコンテンツを発掘し、発信していくという会議です。

 各省庁から推薦された10名前後の先生たちは、食、建築・デザイン、地域文化、日本酒といった多岐にわたる分野のエキスパートで、私は「観光学と温泉」を専門とする立場です。

 先日、初回会議が開催され、それぞれの先生方の取り組みと課題の発表がありました。私は、「シビックプライドを育てることが最も肝要」という話をしました。

 地域の方が自信と誇りをもってもらうために、アカデミックな活動で地域に付加価値を示し、それを地域の皆さんに共有していきたい。観光事業者だけではなく、地域に暮らす方々も含めての共有です。地域の皆さんに「うちは何もないから」とは、決して口にしてほしくない。

 そうしたネガティブな意識は、訪れてくれる人に伝わるものです。逆に地域の誇りと自信は働く姿に反映され、それが人材確保にもつながるようにも感じます。

 今後参考にしていただきたい事例をさまざまにつづりましたが、結局、行き着くところは観光庁が掲げる「住んでよし、訪れてよし」なのです。

(温泉エッセイスト)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒