JTB執行役員 グローバル統括本部長 訪日インバウンドビジネス担当 城戸吾郎氏に聞く


JTB執行役員 グローバル統括本部長 訪日インバウンドビジネス担当 城戸吾郎氏

水際対策緩和を見越し準備

海外エージェントに情報提供

 旅行需要の完全回復には欠かせない訪日インバウンド。執行役員グローバル統括本部長、訪日インバウンドビジネス戦略担当の城戸吾郎氏にその取り組みについて語ってもらった。

 ――21年度の訪日インバウンドの取り扱い状況は。

 「コロナの影響で政府の水際対策が続く中、昨年11月ごろは年度内の3月までには少し復活するのではという期待もあった。しかし最終的にはオミクロン株の猛威により入国規制とまん延防止等重点措置が続き、訪日インバウンドの取り扱いはほとんど消失した。日本をPRできる自国開催のオリンピック・パラリンピックが無観客になったことも非常に残念であった一方で、ONE JTBとして自治体での事前キャンプや輸送オペレーションにおいて、多くの外国からのお客さまをお迎えすることができ、コロナ禍特有の知見も蓄積できた」

 「訪日インバウンドのお客さまが少ない中でも取り組んできたのは、海外のお客さまに共感いただけるコンテンツの開発と、日本に来てもらうためのプロモーション。コンテンツ開発については、サステナビリティやアドベンチャーをテーマとした、お客さまから共感を得られるコンテンツづくりだ。サステナビリティに関心が高く、そういった要素を求める欧米を中心とした富裕層が早期に回復すると見込まれるので、今後も特に力を入れていきたい」

 「オリンピック・パラリンピックが開催されたこともあって、『次に海外旅行に行くのならどこに行きたいか』というアンケートでは、欧米だけでなくアジア諸国においても日本が第1位となっているケースが多い。海外のお客さまが訪日したくてもできないという状況であったため、WebサイトやインスタグラムなどのSNSで、海外のお客さまに対して数多くのプロモーションを実施した。JTBが手掛けたプロモーションだけでなく、自治体、旅館・ホテルが展開するプロモーションやMICE誘致のお手伝いにも参画し、さまざまなプロモーションを行ってきた」

 ――22年度の需要動向をどう予測している。

 「3月のオミクロン株の流行やウクライナ進攻もあって、訪日インバウンドに関してはネガティブな状況が続いている。今後の訪日再開においては、安全、安心というのが最も重要なファクターだ。一進一退はあるものの感染状況は徐々に落ち着いてきている。岸田総理が6月から水際対策を緩和し、海外からの観光目的のお客さまの受け入れを段階的に増やしていくといった報道がなされた。1~3月の厳しい局面から、ようやく光が見えてきたというのが今の状況だ」

 ――22年度の需要動向をどう予測している。

 「今のところ、6月に予定されている水際対策の緩和の実施後、『管理された状態』での小規模なツアーから徐々に再開するという情報を把握している。コロナの沈静化が続いていることが大前提だが、その後、空港の入国者数の上限緩和であったり、ビザの緩和であったり、いろいろな条件が整っていき、鎖国と言われた状況が改善されていくだろう。本格的な再開はいつと断言はできないが、われわれとしては秋頃からの本格的な再開を期待している」

 ――JTBとしての訪日インバウンドの取り組みは。

 「水際対策の緩和を見越して準備を進めておかなくてはならない。お客さまである海外エージェントからの見積もりや予約に関する問い合わせが徐々に増えてきているので、これに的確に応えていくことが大切だ。特に、最も重要なのは、海外エージェントに対し情報提供をいかに行っていくか。いざ来られるとなったとき、実際に安全、安心に過ごせるのか、万が一感染したときには、どのような対策を取るのか、病院の態勢や保険の適用はどうなのか、などクリアしなければいけない課題がさまざまある。こうした情報の共有を旅館・ホテルに対して速やかに行い、お客さまが安全、安心に旅行できる受け入れ態勢を整える必要がある。同時に、地域のツアーコンテンツの磨き上げも、並行して進めていく」

 ――政府は30年に6千万人の旗を降ろしていない。

 「社としてもそこを目指すことは変わっていない。この国策は人数だけを追うのではなく、地域の旅行消費額を増やす目的もある。旅行者を都市部へ集中させるのではなく、全国各地を訪れていただければ、オーバーツーリズムの対策にもつながる。6千万人時代に向けてやるべき課題はまだたくさん残っている」

 ――旅ホ連とどう連携していく。

 「繰り返しになるが、今までは、来てほしい、水際対策を緩和してほしいといった話だったが、いざ訪日できる状況になってくると、安心、安全の確保やリスクへの備えなど受け入れ態勢の整備が課題になってくる。実際、そういうフェーズに入ってきている。併せて、持続可能な観光地経営、サステイナブルツーリズムという観点で、お客さまの受け入れ態勢を整備することが必要だ」

 「安心・安全対策に対する取り組みは、一つの旅館・ホテルだけでは限界がある。例えば、旅行者の中でコロナ感染者が出てしまった場合には一つの施設にとどまらない影響がある。地域一体となって、病院や保健所などと連携し、対策を図る必要がある。サステナビリティについても同様で、地域一体となっての取り組みが必要であるし、そうすることで訪れるお客さまと地域の共感が得られ、安心感やご満足につながる。旅ホ連会員の皆さんが訪日インバウンドの受け入れに関して、こういう場合にどうしたらいいか、こういった取り組みがしたいという疑問や課題があればぜひ相談していただき、一緒に取り組んでいきたい」

 

JTB執行役員 グローバル統括本部長 訪日インバウンドビジネス担当 城戸吾郎氏

 
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