JTB代表取締役専務執行役員 ツーリズム事業本部長 花坂隆之氏に聞く

  • 2022年6月6日

JTB代表取締役専務執行役員 ツーリズム事業本部長 花坂隆之氏

成長サイクル取り戻す1年に

ダイナミック化で宿泊増売

 旅行を取り巻く環境や人々の旅行スタイルが大きく変化している中、JTBは昨年4月から事業部門を「ツーリズム」「ビジネスソリューション」「エリアソリューション」の三つに改編し、販売の拡大に挑んでいる。2年目となる2022年度、ツーリズム事業ではどういった取り組みを進めるのか。代表取締役専務執行役員ツーリズム事業本部長の花坂隆之氏に聞いた。

 ――21年度を振り返ると。

 「一昨年に続きコロナウイルスの感染拡大に伴い移動が制限される中、旅行領域は非常に厳しい1年だった。そのような中でも、人々の移動を再開させるためのインフラ整備、各自治体のワクチン関連事業や観光関連の経済対策など、行政の受託事業を全国的に受注し、一定程度の実績を上げることができた。教育旅行事業では、変更や延期、取り消しが相次ぐ中でも、修学旅行を実施したいという学校の思いを受け止めて、修学旅行に代わる校外学習などの提案も行い、前年度以上に実施の支援ができた。実績では各種受託事業と教育旅行が大きくけん引した1年だった」

 「団体旅行、個人旅行は行動制限がある中で十分な回復が難しかった一方で、将来の回復や成長を見据えて『お客さまの実感価値の向上』を目指し、店舗ネットワークの見直しや、JTBリモートコンシェルジュに代表されるお客さまとの新たなつながりの創出に取り組んだ」

 ――宿泊販売の状況は。

 「販売額は一昨年度比40%程度で着地する見込みだ。上期はGo Toトラベル事業の再開で大幅な回復を期待していた中で、ゴールデンウイークに回復の動きが見られたものの、最繁忙期の夏場に東京2020オリンピック・パラリンピックが無観客開催になったことや緊急事態宣言の発出により需要の低迷が続いた。下期も10月の緊急事態宣言の解除により一時期は19年度に迫る勢いまで回復したものの、オミクロン株の拡大による第6波で再び低迷した。年間を通してみると、Go Toトラベルの再開にめどが立たない中で、県民割などの限定的な政策もあったが、十分な回復には至らなかったという認識だ。インバウンドについては渡航制限の中で、水際対策などもありほぼ皆無という状況だった」

 「その厳しい中でも旅ホ連の皆さまには協業施策などを通じさまざまなご支援をいただいたことに感謝申し上げたい。例えば、小グループに対して追加1部屋を手配いただくための密回避の施策や、団体旅行が動かない中での法人系顧客の個人旅行の接点拡大を目的にクーポン施策を実施した。この施策で新たなお客さまとのつながりができたのは大きな成果だ」

 ――22年度について、まず市場環境の見通しから。

 「ワクチン接種の浸透により感染者数が減少するにつれ、国内旅行は徐々に回復に向かうと想定している。ただ今後の感染拡大が不透明な中で状況においてはリスクが一定程度存在する。旅行需要の回復度合は、感染拡大の状況に加え、Go Toトラベル事業を含めた観光支援策の実施や、海外での感染の収束、水際対策の緩和などに伴うインバウンド需要の状況、企業業績、経済状況などによって大きく左右される。少人数、エリアツーリズムの傾向が続くと想定されるが、一方でお客さまの意識やライフスタイルが変化する中でお客さまニーズがより一層多様化する。働き方改革、DXの加速、行動制限の反動によるリベンジ消費などさまざまな環境の変化を的確に捉えて対応していく必要がある」

 ――そうした環境下、ツーリズム事業にどう取り組む。

 「コロナ禍の収束が不透明であること、ウクライナ情勢を含む世界情勢の不安定化により難しい事業環境が続くが、コロナ禍から本格的に回復し、成長サイクルを取り戻す1年にしたい。JTBでは全ての基点を『お客さまの実感価値の向上』に置いている。特にツーリズム事業では、メインとする『旅行の領域』と『地域交流の領域』の融合によりツーリズムを成長させることを大きな方針としている。地域の観光振興への貢献と、Webサイトを基点としたOMOの推進の2軸で進めていく。一つ目の地域の観光振興への貢献については、真のDMC(デスティネーションマネジメントカンパニー)に進化するための組織改編を進めている。JTBグループに期待されている宿泊増売、地域への送客は、これからもしっかりと行う。その一方で、『送客』を『創客』へと変え、その創客と誘客をハイブリッドで推進し、それによって地域の皆さまと一緒にその地域を訪れるお客さまを増やすことを共創していきたい。そのために先行して昨年、8支店に宿泊仕入と地域コンテンツ開発の機能を持たせた。今年度は4月から全国32支店へと大幅に拡大をした。法人・個人・仕入一体化型の体制へとシフトしている」

 「これまで長く実施してきた『日本の旬キャンペーン』については、一過性の方面施策にとどめることなく地域の皆さまと一緒に地域の観光資源や旅行体験を磨き上げ、それを活用してJTBグループ全体での販売力、送客力をもって地域へ貢献していく。継続的な誘客につなげていくよう、全社を挙げて取り組んでいく」

 ――Web販売での取り組みのポイントは。

 「これまでの販売は店舗が中心で、お客さまにパンフレットを渡し、旅行の相談、予約、決済を行うという関わり方が主だった。一方で、お客さまは日常生活の中でも『旅に出かけたい』という思いがあるので、お客さまに日常からWebを通じて、旅行の動機付けになるさまざまな情報を提供する。また、旅先でもさまざまなソリューションを提供する。今までは、WebはWeb、コールセンターはコールセンター、店舗は店舗と分かれてお客さまに向き合っていたが、一連のカスタマージャーニーの中でWebを使いながら、Webを閲覧したお客さまに目的や用途に合わせて店舗、コールセンター、Webなどをうまく使い分けてもらい、その時その時のお客さまにとって最適な接点を持つ、いわゆる「マルチチャネル戦略」をこれまで以上に進めていく。キーワードとしては『人によるサービス提供』。人でなければ提案、提供できない体験価値を感じてもらえるようなビジネスモデルへの転換を図っていきたい」

 ――宿泊増売に向けた施策について。

 「宿泊販売戦略として、引き続きダイナミック化を基本とした商品体系へと整備していきたい。従来の旅行契約形態を中心とした商品体系から、素材を基本とした商品体系への転換を図る。最適な流通先と調達戦略とのマッチングを図り、宿泊販売の最大化を目指す。『るるぶトラベル』素材の店舗販売などでの周知や、諸課題の解決を図った上でプラン数の拡大に取り組む。テーマパークなど優位性の高い商品や着地型でのセット型商品などを拡充し、ダイナミック型の『MySTYLE』商品に魅力的な着地素材を組み合わせて販売する。るるぶトラベル商材というと安い商品と思われるかもしれないが、決してそうではない。お客さまにとってさまざまな選択肢を広げることが多様化するニーズに応えるという点では極めて重要だ。店舗では対話によってお客さまにふさわしい商品を提供していく。その中で多様なプランの中からお客さまのニーズに合致したものをコンサルティングしながら販売する。そのことによって宿泊単価を引き上げる。お預かりしている在庫をベースとしたクオリティの高い商品を中心に販売することはこれまでと変わらない」

 ――宿泊販売の目標は19年度の98%。非常に高い目標だ。

 「マーケットの回復状況や観光支援策、需要喚起策などが前提になるが、国内旅行に関してはほぼ19年度水準に戻る可能性がある。それをベースに考えた。今の環境下ではハードルの高いチャレンジングな数値目標だが、マルチチャネルや法個仕連携などグループを挙げて取り組む中で目標を必達する」

 ――旅ホ連と連携した取り組みは。

 「旅ホ連の皆さまとは、お客さまに質の高い旅行を提供していく中で宿泊増売、地域・観光振興、組織強化、人財育成の4本柱を中心に一緒に活動を展開してきた。そのことはこれからも続けていく。特に地域の観光振興と誘客では今まで以上に連携を強化し、一緒になって地域を訪れるお客さまを増やしていきたい。その地域の行政や地域経済圏に働き掛けて、地域全体での誘客の仕組みや地域おこしを一緒に進めていくパートナーという関係性をより強化したい。宿泊増売に加え、今後の新たな価値観としてSDGsへの取り組み、観光型MaaS、チケットレス、キャッシュレスなどのデジタル化に対応できるプラットフォーム事業を進めていくうえでも、旅ホ連会員の皆さまとの連携は欠かせない。『新しい4つのお願い』をお伝えしているが、各地域での人脈や関係づくりでの力添えをいただきたい」

 

JTB代表取締役専務執行役員 ツーリズム事業本部長 花坂隆之氏

 

 
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