JR東日本 マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門 部門長 小崎博子氏に聞く

  • 2022年8月4日

JR東日本 マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門 部門長 小崎博子氏

「JR旅ホ連」を解散し、「JR東日本地域ネットワーク」を設置

未来に向け時代に合う形に 地域に新たなつながり生む

 JR東日本は、JRグループ協定旅館ホテル連盟・同東日本地域本部の解散に伴い、これまでにない同社主導の地域組織(コミュニケーションプラットフォーム)として、新たに「JR東日本地域ネットワーク」を設置する。同組織は、県単位を基本とする単独組織として、東京を除く全国15カ所に設けられ、22年度中に順次発足、活動を開始する。今回は、JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門の小崎博子部門長に新組織の設立経緯や取り組み、在り方などを聞いた。(聞き手=本社・長木利通)

 ――今年5月、JRグループ協定旅館ホテル連盟(旅ホ連)、JRグループ協定旅館ホテル連盟東日本地域本部の2023年3月末での解散を発表した。解散の理由について伺いたい。

 「旅ホ連は、JR6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)が旅行業への進出に伴い発足した組織だ。1987年に国鉄からJRに民営化後に皆さんの協力のもと、共に作ってきた組織であり、当初は旅館・ホテルの予約は電話で受け付けるものだったが、時代が流れ、予約の方法も変わる中、われわれと地域の関係も送客だけでない新たな形が作られてきた。JR各社が実施してきた旅行業は、グループ会社などに移管されており、具体的にはJR東海はJR東海ツアーズ、JR西日本は日本旅行、JR九州はJTB、われわれJR東日本とJR北海道はJR東日本びゅうツーリズム&セールス(22年4月にびゅうトラベルサービスから名称変更)が役割を担っている。旅ホ連としての契約に基づき送客をしていない会社が多くなったこと、また未来に向かい違う形で進めるということを6社、そして地域と相談して解散を決定した」

 ――解散決定に当たり、懸念点はなかったのか。

 「JR6社が一番心配したことは、解散により会員の皆さまからJRとの関係性が途切れてしまうと思われることだった。旅ホ連解散後の関係性については、JR各社が各地域でそれぞれの今後の在り方を説明する中で理解いただいた」

 ――JR東日本では今後、新たな組織として「JR東日本地域ネットワーク」を立ち上げる。

 「旅ホ連の解散の前には、JR指定休憩店連盟、JR協定写真連盟が解散している。地域と共に歩み、つながりを重視する中、どのような形であれば、皆さまに理解いただき、良い関係性が築けるかはかなり議論した。コロナ禍の中でも、われわれの一番のパートナーは誰だとなった際、一番のパートナーは地域にいる皆さまだということを改めて感じた。われわれが今後の地域との在り方を議論する中、地域からも旅ホ連解散後に何かしらの形を残してほしいという相談もあった。これまでの旅ホ連とは違う時代に合ったものを作るために議論を重ねた結果、地域に新たなつながりを持つ新組織として『JR東日本地域ネットワーク』を立ち上げることとなった」

 ――異業種横断型ネットワーク組織として運営されるとのことだが。

 「旅ホ連は契約に基づいた旅館・ホテル、休憩店は土産屋を中心とした組織だったが、今後は地域を共に盛り上げることを主眼として考えると、固定された業種だけに限らないことが重要。地域には熱い思いを持つ人がたくさんおり、より多くの仲間と共に歩みたいことから、異業種横断型とした。JR東日本地域ネットワークでは、会費をなくし、役員も置かない。地域で活躍する誰もが参加できるフラットな組織となる。運営は、地域ごとに実情が違うことから、エリア全体で型にはめることはせず、地域ごと、県ごとの単位で地域に合った形で運営していく。また、予算を持って始めると、本来の趣旨から異なる恐れがある。出だしはあくまでも間口は広く置き、盛り上がった取り組みがある場合は、違う形へと置き換えても良いと考えている。JRはノックするにも敷居が高いという言葉を聞くこともあるが、そのイメージをできるだけ払拭(ふっしょく)しながら、まずはゆるやかな形から始めていく。ぜひ、地域で頑張り、次の時代を担うような熱い思いを持つ人に入ってもらいたい」

 ――業種などで制限はあるのか。

 「社会的に最低限の基準は設けるが、その他は全くない。他の鉄道会社など輸送機関も歓迎だ」

 ――設置数は。

 「東京を除く全エリアに設置する。東京は完成された地域であることから、今回は除くこととした。組織は、JR東日本主導の県単位を基本とする組織となる」

 ――正式なスタート時期について。

 「立ち上げについては、22年度中に順次発足し、活動を開始する。地域により事情が異なることもあり、本社からは今年度中での立ち上げを各支社に伝えている。早い地域では、すでに立ち上がっている。旅ホ連の会員に向けては、契約が23年3月末まであり、解散までに立ち上がることで会員が安心して移れる。旅ホ連会員への案内は、旅ホ連各支部総会において各支社からJR東日本地域ネットワークの概要を説明させていただいている。より詳細なことについては、今後の窓口となる支社から説明を行っている」

 ――窓口となる部署は。

 「今年10月以降に順次組織再編を行う予定であり、既存で言えば営業部、新しいところで言うと東京支社を除く各支社にできる地域共創部が窓口を担う。なお、箇所によるが、現場も組織再編を行っており、新規に設置された(営業)統括センターや駅を窓口として、気軽に訪れることができる体制を考えている支社もある。地域での困り事や、JR東日本地域ネットワークのメンバーとして共に取り組みたいことなど、地域の方々が話しやすい環境を作ってほしいと、支社にはお願いしている」

 ――JR東日本地域ネットワークの設立に当たり、取り組みとして考えていることはあるのか。

 「出だしはゆるやかで良い。あえて高い目標を掲げて挑戦してほしいとは考えていない。まずはベースとして、われわれが取り組んでいることを知ってもらいたい。今年3月には現場で、6月には本社で組織改編を行ったが、まだ伝わりきっていない。コロナ禍で鉄道以外の事業におけるさまざまな取り組みへのチャレンジも加速した。人が生まれてからの人生の中、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)をJR東日本グループで向上させ、お客さまの暮らしを豊かにしていきたい。SuicaやJRE POINTのほか、STATION WORKやJRE MALL、最近では列車による荷物輸送サービス『はこビュン』もある。今後の情報の発信、共有は、メールでの配信を考えている。われわれは、鉄道だけでなくいろんなことを可能にできるリソースを保有しており、まずは会員の皆さまにさまざまな取り組みについて知ってもらうことを目指す」

 ――JR東日本にはさまざまなグループ会社もある。

 「地域にわれわれの取り組みを理解していただいた後は、一緒に盛り上げるフェーズに入る。グループ会社の特徴や取り組みを知っていただくことは、情報の共有だけでなくビジネス創造のネタになる。コロナ禍の約2年半で失われたものは多い。以前は地域に密着した取り組みも多くあったが、コロナ禍で会合がなくなるなど、各支社においても話す機会が失われた。JR東日本地域ネットワークを地域の人たちと交流、共創する大きなきっかけとしたい」

 ――地域間交流についてはどう考えるか。

 「まずは県単位でスタートするが、必要があればエリア単位で集まればいい」

 ――多くの人にうまく使ってもらいたいということか。

 「JR東日本グループは、人、物の流動を担っているだけではない。今ではデータビジネスに取り組むほか、多様な会員組織の会員との取り組みもある。何かを始めるには、互いがウィンウィン、三方よしが鉄則であり、マネタイズも必要となる。決してボランティアを求めている訳ではなく、協働での取り組みが進めばビジネスが生まれ、われわれも地域も元気になる。まずは、その基礎となる部分をJR東日本地域ネットワークという場を最大限に生かし、コミュニケーションを取りながら進めていく。旅ホ連と異なるのはJR東日本が運営するということ。旅ホ連は会員とわれわれの組織だったが、今後はわれわれが責任を持つこととなる。活動はゆるやかだと言いながらも大きな緊張感を持っている。情報を提供するだけのものではなく、新組織の設立は、地域とつながる、つながっていることを宣言することでもある」

 ――地域の人たちから、JR東日本地域ネットワークはどういう存在に。

 「常に注目され、振り返られる存在でありたい。われわれは地域に会いに行くが、地域の人たちも応援してほしい。JR東日本地域ネットワークは交流の場であり、場に集う人たちが信頼、応援、そして共に頑張らなければ前に進まない。われわれも頑張るので、皆さんにもぜひ頑張ってもらいたい」

 ――地域の人たちに求めたいことは。

 「いろんな話をどんどんぶつけてほしい。コロナ禍で地域の人が地域を楽しむマイクロツーリズムも大事だが、人と物の流動が生まれないと経済の活性化は起こらない。今後は、各地域で人口減少、高齢化という問題がさらに加速するが、一緒に危機感を持ちながら取り組みを進めていきたい。東日本エリアには良いものがたくさんあるとわれわれも自負しており、皆さんも自信を持ってPRし、向かってきてほしい。われわれも必ず皆さんのところに行く」

 ――本社の関わり方は。

 「JR東日本地域ネットワークは、各地域、支社が大事になる組織であり、本社組織は持たない。本社は、設立時のまとめ役としての役割や、以後は支社からの相談、調整などでサポートしていく」

 ――マーケティング本部・くらしづくり・地方創生部門とは。

 「マーケティング本部は、今年6月22日に輸送サービス部門を担う輸送、生活、IT・Suica部門を融合し、3事業によるシナジーを発揮するために設けられた。くらしづくり・地方創生部門は、お客さまの暮らしが豊かになるための暮らしづくりと地方が豊かになる地方創生の二つを推進する部署。暮らしは、観光流動や旅も含めた暮らしであり、お客さまの価値、生活の価値、地域の価値を上げていくことがミッションとなる。このほか、マーケティング本部の中には、データやシステムを運用する戦略プラットフォーム部門、駅周辺での大規模開発などを行うまちづくり部門もある」

 ――最後に、地域の人たちに向けて一言いただきたい。

 「JR東日本地域ネットワークは、地域の皆さまとの信頼基盤を構築し、相互理解を深める組織として立ち上がる。JR東日本の活動情報の配信や対面での意見交換など、幅広くゆるやかなコミュニケーションプラットフォームとして、地域のプレイヤーの皆さまとの関係構築を実現するもの。われわれとしては、次の時代の地域を担う後継者、若い人たちにもぜひ仲間として入ってもらいたい。われわれが有する駅や鉄道だけでなく、その他さまざまな施設、サービス、ソリューションが、新たな地域活性化、ビジネスの可能性につながる。会員には、JR東日本グループや、旅ホ連の会員であった宿泊施設の皆さまを中心とする地域の観光事業者の皆さまにもお声掛けしている。旅ホ連の会員には、地元の観光協会で会長や役員を務める人たちも多く、次世代を担う人たちとのシナジーを考えると今から想像をかき立てられる。また、われわれの支社にいる担当者も、今ではベテランとなる社員が抜け、20代、30代と若い人材、面白い人材が多く活躍している。それぞれのフィールドは異なるが、地域で活躍する地元の熱い人が共に取り組むことで、新しい形の地域づくりに昇華することは間違いないと確信している。コロナ禍が始まり約3年がたとうとする中、ウィズコロナ、アフターコロナへの動きが加速している。われわれも、いろいろな制限の中で苦しむこともあったが、社員全員がV字回復への強い気持ちを持ち、機運は高まっている。JR東日本地域ネットワークに対して面白そうだと興味を持った人は、ぜひ仲間に加わってほしい」

 

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