米国ワシントンDCに本拠を置く全米商工会議所の一部である米日経済協議会(USJBC=US―Japan Business Council)は13日、カジノ・IRに関するセミナー「日本型IR~観光振興と経済成長のために~」を東京都港区のザ・リッツ・カールトン東京で開いた。IR候補地の自治体や観光、建設、ゲーミング機器業界などから約350人が参加した。
同協議会のジェイ・サプスフォード事務局長は主催者あいさつで「IRの導入にあたっては、プラス点を増やし、マイナス点を極力減らすことが重要になる。本日登壇する7人の博士による正確な情報の提供で、日本型IRの議論に貢献できればと思う」と述べ、セミナー開催の意義を強調した。
セッションではネバダ州立大学の教授らが登壇。「IRの経済波及効果に関する最新研究発表」「反政府勢力の排除について」「依存症について」の三つのセッションで、主に学術的見地からの発表が行われた。
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内閣官房副長官としてIR推進の法案づくりに尽力した自民党幹事長代行の萩生田光一衆院議員は、来賓あいさつの中で、IRが日本の観光と経済に与える影響について次のように述べた。
IR推進法では第1に観光の振興、第2に地域経済の振興、第3に財政の改善の三つの目的を掲げている。
観光振興については、4月に開いた第1回IR推進本部で安倍総理から発言があった通り、日本型IRは、家族連れで楽しめるエンターテイメント施設や国際会議場、展示場などを一体的に運営し、また日本の伝統文化・コンテンツを導入することで、国際競争力の高い滞在型観光を実現すること、シンガポールのような大規模な民間投資が行われ、大きな経済効果、雇用創出効果をもたらすことが期待されるとされている。
また政府の有識者会議では、日本型IRの中核施設として、わが国の伝統文化、先端技術等の魅力をショーケースとして強力に発信する機能を有する施設と共に、ショーケースで触れた日本の魅力を実際に体験するため、全国へ観光客を送り出す機能を有する送客施設としての必要性を指摘しており、これにより全国津々浦々の地域経済に寄与することを期待している。
これらを通じて、日本型IRが、日本を観光先進国に引き上げるための原動力になることを、われわれは期待、確信している。
波及効果の大きさ強調~ネバダ大ラスベガス校教授
セミナーに先立つ12日、米日経済協議会はマスコミを対象に事前説明会を開催、ネバダ大ラスベガス校の2教授がIR(カジノを含む統合型リゾート)の経済波及効果と反社会勢力の排除について研究成果を披露した。
ボー・バーンハード氏は大東京圏、大阪のIRによる直接・間接効果、および2次波及効果について、生産(GDP)に対する効果は総額でそれぞれ1兆3510億円、9450億円、継続的雇用は年間10万2800件、7万7600件創出されるとの見方を示した。
また、IRを訪れる外国人観光客は、最も可能性が高いとされる中シナリオで410万人に達すると試算。この410万人のうち、230万人は訪日を目的とした来日増加分で、純支出増加額は1兆6千億円に上るとした。
ネバダでゲーミング関連法の実務に携わったことのあるジェニファー・ロバーツ氏は、カジノ賭博合法化の動きなどを紹介。その上で、IR関連法規制に違反したオペレーターの行政処分、犯罪組織に関与すると思われる人物のカジノ施設入場禁止措置などを行うため、「ゲーミング規制当局に適正な権威と裁量を供与すべきだ」などと提言した。
博報堂のIR・MICE推進室担当部長の栗田朗氏は、日本のIRの最新情報を解説。
カジノが開業できる区域数は当面は2~3カ所、最終的には10カ所程度になるとの見通しを示し、現在、北海道の釧路市(阿寒湖)、苫小牧市、富良野市、神奈川県横浜市、大阪府・市、大阪府泉佐野市、和歌山県・市、長崎県佐世保市、愛知県などがIR候補地として手を挙げているという。